時間割りと時間泥棒⑬
「お昼にしますよ~。」
大体12時だろう、お母さんが2人に声を掛けた。ソファで転寝をするお父さんを要と進がぺちぺち叩く。何でこう顔を叩いたり引っ張ったりするのかは分からないが、ばっちりしっかり起こされて昼食の席に座るお父さん。そして、ずっと寝ていたお父さんに一言の文句も言わず、むしろ申し訳なさそうにお皿を並べるお母さん。
「簡単に済ませちゃった。サラダとスパゲティね。」
「十分、十分・・・ってか、俺、寝てただけだしさ・・・・・・」
新しくできた寝グセを手グシで直しながら苦笑いするお父さん。張り切って早起きするからですよと微笑むお母さん。そんな雰囲気に割り込む進君である。
「ねぇ、ねぇ、お父さん。」
「どした?進。」
「外も行っちゃダメなの?」
「確か公園にも時計があったよな。だから公園もなし。まぁ、買い物なら一緒に行ってもいいぞ。」
「むぅ~・・・・・・」
進の恨めしそうな視線を心地良く受け止めるお父さん。ひと眠りしている間にかなり堪えたご様子。思ったよりあっさり時計が返ってきそうだ。
それでも進は、も少し粘った。我慢した。ギブアップしなかった。お昼ご飯の後も静かな静かな家の中で要とオセロをしたり、4人でババ抜きをしたり、プリンと紅茶でティータイムを過ごしたり。瞬間的には悟れなくとも、紛れもなく貴重で贅沢な時間だった。たった数時間テレビを消して、時計を無くしただけで世界から自分達だけが切り離されたような、そんな錯覚にも陥った。たまには、暇な1日くらいは、1日の内の1時間程度なら、悪くない時の流れだった。それでも、そんな希少な幸せよりも、その日のアニメが大事だった。
決定打は要の一言。今日はアンパンマンが観られないな。狙って言ったかどうかは不明だが、止めの一撃となった。あっ、と驚いた顔を見せた後、進の目線が下を向いた。不満げな表情を作る余裕も文句を垂れる気力もない。見逃してはならない子供のサインである。手を差し伸べよ。




