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時間割りと時間泥棒⑩




 「へぇ・・・おもしろそうじゃないか。連休中なら構わないさ。どうせやるなら徹底的にやろう、ちょっと後悔するくらいにさ。」

時刻は23時ちょっと前。2人は寝てしまった。連絡ノートも見せて背景というか、進の幼稚園での様子も補足したお母さんであったがなぜかにんまり嬉しそうだった。要からの提案にノリノリのお父さん。普段の精神年齢は進と同レベル。何をするかって?それはね、家中の時計全てを隠してしまう。進もそれなりに落ち着いてきたから遊園地にでも連れていってやるかなんて計画も立てていたが、外出予定はひとまず御破算。時計のない生活、時間の見えない生活、気分と体内時計に従う生活、できるのは連休中だけ。ま、もって1日さ。すぐに音を上げるというのがお父さんの見立てだった。

 お父さんもお母さんも、進の幼稚園での生活を心配していた。気弱で内気で、お兄ちゃん、お兄ちゃん。友達ができるだろうか。突然寂しくなって泣き出して、先生に迷惑をかけないだろうか、と。蓋を開けてみれば入院の経験が活きたのか、別の形で面倒をかけてしまっている現状。それを申し訳なく思うお母さんと、頼もしく感じるお父さんであった。


 平日、休日に関わらず、6時半には山下公園へ出発する要と進。ラジオ体操と太極拳もそうなのだが、これらは既にオマケと化していた。大雨でも降らない限り毎日毎日、飽きることなく()れることなく寝坊もせず、通園・通学の前にサッカーボールを持って家を出て行く。そして驚くなかれ、要だけではなく進までも器用にボールを足で扱うようになっていた。連休初日も2人でボールを蹴って、公園の時計を気にしながら朝食の時刻に合わせて帰宅する。

 やるからには本気で手抜きなし。という訳で鈴本家から時計が消えた。要と進が出て行ったのを扉の音で確認すると、待ってましたとばかりに布団から飛び起きたお父さん。壁掛け時計を裏返し、目覚まし時計はタンスの中、腕時計は机の引き出しへ。それとテレビ、これも時間が分かってしまうということでコンセントを抜いてしまった。朝っぱらからガサゴソやっているうちに、

「準備万端ね。」

「あれ、ごめん。起こしちゃったかな。」

「ううん。どうせお腹空いたって起こされるし、2人の反応も見てみたいし―」

似た者夫婦なのか、お母さんも案外楽しんでいたりする。

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