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時間割りと時間泥棒④


 何の成果もなくすみれ組に戻ってきた岡部先生が、膝から崩れ落ちそうになる。お行儀よく自分の机で粘土に没頭する進。その手先に迷いはなく、指先は動きを止めず、真剣な眼差しから集中力が伺い知れる。粘土に命が吹き込まれるは大袈裟だが、みるみる輪郭ができあがっていく。それは、いざお説教をと進に近付いた岡部先生の視線をも釘付けにしてしまった。先生だけではない。もう何度目かの粘土遊びということで、回りのお友達も心の造形のうまさは知っていて、自分の粘土そっちのけで進の作業に見惚れる子もいた。

 進が作るはティラノサウルス。頭身を考えると本物からはやや遠い。頭部の大きさに比べて、胴体や手足の小さくて短い。ざっと二頭身、それでいてアンバランスにならない。モデルなり手本があるのだろうか。実に愛嬌のある恐竜だ・・・っと。ここで目的を思い出した岡部先生は自分の席に戻り、こほんと咳払いをひとつ。ほふぅ~と深呼吸も。お説教の心構えに切り替えた(ちなみに進君。先生、動物を作る時に恐竜はなしにしましょうと以前にもお話したはずだけれど・・・・・・)。

 「鈴本君、ちょっと先生の所まで来て下さい。」

入園してもうすぐ1ヶ月。ルールや約束事、決まりは守る為にあるもの。休み時間が終わったらまっすぐ教室に戻ってくる。お手洗いは休憩中に済ませてしまう。時計を見ながら時間厳守。ひとりが時間を守らないと皆に迷惑が掛かるのが集団生活・・・・・・色々細々(いろいろこまごま)、こちらの言い分を並べても混乱を招くだけ。時間を守る、この1点だけを伝えようと決心した岡部先生が進を呼んだ。

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