そして入学式へ・・・④
傍から見ると、バスケットボールで遊んでいる風に見えなくもない。ボールを持ち運ぶ際も片手では難しく、進なんかは両手で抱え込む格好である。遊ぶにしても明らかに大きすぎるのだが、その感覚がなければそういうものだと合点する。そういうものかと適合を始める。それならばと努力、奮闘、改善する。思い込みを力に変えられる者は強い。困難を楽しめる者はずるい。
本に書いてあったボールの蹴り方、練習方法を試みる要と、そのお手伝いに勤しむ進。進が両手で下投げする球を要がキックで返したり、もう少し離れてパス練習をしたり、リフティングをしたり。尤もまだまだ形式だけでとてもサッカーの練習と言えるような代物ではなく、ボールを使って戯れているだけ。時期に幼稚園と小学校が始まる―勝手に起きて、パジャマを脱いで、運動靴を履いて、7時前から眠たそうな顔ひとつせずに全力で遊ぶ。没頭する。後先考えず、打算、計算一切なし―さすればこうはいくまいて。
甘い、甘い・・・・・・
「ヨーーーーー。シーーーーー。そろそろ帰ってこ~い。朝ごはんが冷めちゃうぞ~~~。」
おじいちゃんとおばあちゃんは太極拳を終え、2人しかいない静かで落ち着いた公園をお父さんの声が通り抜けた。
「いってらっしゃ~い!」
進が遠くから手を振って送ってくれるが、君達がお家に戻らないと会社に行かれないのだよ。お母さんに怒られてしまうだろう、君達もお父さんも。苦笑いしながら2人の元へ歩を進める。やれやれ全く仕方ないな、と。サッカー経験のないお父さんの目には、小学校に上がる男の子がサッカーの真似事をしている風に失火映らなかったが、この年で容易に20回、30回のリフティングをこなす要は、見る人が見ればダイアモンドの原石だった。
「へぇ、うまいもんだなぁ。さっ、要。一旦、ご飯を食べに帰ろう。お母さんが心配するぞ。」
やや息を弾ませた要が頷いた。要が帰るなら進も帰る、ついてくる。この辺はお父さんが一枚上手。マンションまで3人で戻り、2人は上へ、お父さんは駅へと向かうのだった。




