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卒園式の隠し事⑦


なかなか外に出られない。耐え切れず抱きつく女の子もいる。時計の針を巻き戻すことはできない。けれども、少しくらい遅らせてもいい時がある。ちょっとだけ自分勝手に時間を使ってもいい時がある。


トンネルは園庭を半周ほど回る。スタートはアスレチック遊具で曲線を描きながら終着駅の園門へ。一緒に教室を出た順也と要は、どちらともなくアスレチックの前で足を止めた。黙って吊り橋を見上げる。果たして何を思うか2人の園児。そんなことは訊かなくていい。

「懐かしいでしょう。もう遊べないんだぞ。」

背後から岡部先生が2人を抱き寄せるように肩を組んだ。顔は観ないし、見せない。3人共ちょっとぐしゃぐしゃで見せられない。

「さぁ、胸を張って。振り返るのはナシ。真っ直ぐ、前だけを向いて歩きなさい。」

許されるなら、ずっと2人を抱きしめていたい・・・・・・右手と左手で2つのお尻をぽんと叩いた。言いつけ通りに振り向くことなく順也と要の姿が小さくなっていき、曲がった所で2人の姿がトンネルに飲み込まれた。この見送った直後だけはやっぱり置いてけぼりを喰った気がして、達成感よりも寂しさが勝ってしまう。吊り橋もキィキィと音を出しながら揺れていた。それはきっと、感謝と応援の嘆き。君達の未来に光あれ。


 トンネルを抜けた先では。

「要君、また会おうね。忘れないでね、絶対だよ。」

わんわん号泣しながら抱き合う順也と要。最後の最後、感情が溢れてしまった。多分もう会えない、遊べない、新しい友達に取って代わられる。人目も気にせず、母親同士が後ろで挨拶していたってお構いなし(進とお父さんは先にお家へ帰ってしまった)。そんな所に清香ちゃんが現れた。

「な~に2人で大泣きしてるの。2人共、赤宮(あかみや)小学校でしょう?4月からまた会えるじゃないの、クラスが同じかは分からないけどね。あと、私も赤宮小だから、ヨロシクね。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

ぽけぇ、と見つめ合う2人。徐々に理解が追い付いてくる。後ろのお母さんからバカね~という囁きが訊こえる。これだけ一緒にいて、これから通う小学校の話にならなかったのだろうか。もしくは自分達の通う小学校の名前を知らなかったのか。やっぱりよっぽどしっかりしているのは女の子。

「また一緒に遊ぼうね~。」

そう言いながらまた抱き合う2人。この2年間で1番成長したのは、清香ちゃんだろうな。


                                    【幼年編・終】


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