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卒園式の隠し事⑤




 「卒園性が入場します。拍手でお迎え下さい。」

練習の時には訊こえなかった盛り上がりに迎えられて主役達が講堂へ入ってくる。普段よりも凛々しい歩き方に、緊張を伴ったいい面構え。講堂の広さの都合もあって、迎えるのは先生と保護者と来賓。年中組は入れない。じっとしていられない子もいるだろうしね。講堂に足を踏み入れた途端、人の多さと拍手の大きさに園児達の心拍数は最高潮に達する。運動会の時もそうだったが、練習とはまるで雰囲気が異なる。練習の成果を発揮する為には、本番での違和感を調整できなくてはならない。この先も同様の行事を経験することになるが、本日その初っ端。これまで繰り返した練習で本番当日、今日この日のこの感じをイメージできていたのは先生達だけ。経験のない園児達にはどんな具合に進行して、時間はどれくらいかかって、って言うか目の前で喋っているのは誰なのか、未知だらけ。空気の重さに膝がカクカクしている子もいるかもしれない。でもさ、堂々としていればいいのだ。だって今日は君達が主役、物語の主人公で、いわばヒーロー&ヒロイン。世界の中心とまでは言わないが、正徳幼稚園の時間は君達を中心に流れている。君達の為に時が費やされる。皆が君達を支えてくれる。


 「それではここで、皆勤賞の表彰に移ります。2年間、1日も欠席のなかった卒園生が3人います。名前を呼ばれた人は起立して下さい。」

ここからの数分間は、しばしの休憩タイム。該当する園児もその場で立ち上がるだけだし、他の子も視線が自分から外れる気がして一息つくことができよう、例年ならば。3人目に要の名前が挙がる。この事を知っているのは先生達と、本人以外のすみれ組の面々。自分達で仕掛けたビックリ箱に気が気でない。先程までとは一味違う嬉しいドキドキ(これをワクワクという)が止まらない。にんまりと顔に出てしまっている子もいる。ずっと秘密にしてきたんだもんな、ありがとう。

「荒木 佳代さん、倉田 由美子さん、鈴本 かなめ君。ご起立下さい。」

パチパチパチと拍手が起こり、仕掛けた罠を確かめるようにすみれ組は要の方を向いて手を叩く。この日一番の笑顔で拍手した。いい友達で、いいクラスで、いい先生で、いい幼稚園だった。

 対照的な表情を見せる要と、要以外のすみれ組の子供達。行動の端、職員席に座る岡部先生に戸惑いながら目を遣る要。岡部先生も要の様子を気にしていたからすぐに目が合った。頷く先生に背中を押されるように要も立ち上がり、胸を張って拍手と皆勤賞を受け取った。それと、驚かされたのは要だけではなくて・・・・・・

「おいおい要の奴、皆勤賞を貰っているじゃないか。」

「先生からも要からも、何も訊いていませんよ。」

「こりゃ、1本取られたらしい。有難く頂こう。」

なんて会話を目だけで済ませた鈴本夫妻。この辺りはさすが。真ん中に座る進はまだまだ入ってこられない。

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