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卒園式の隠し事②


 節分の豆まきは男の子が元気一杯だ。鬼役の先生(誰かはお察しの通り)が各クラスを回るのだが、『鬼は外、福は内』の掛け声と共に、鬼に向かって節分豆を全力投球。年中組はまだまだ可愛いものの、たった1年でこんなに力強くなるのかという驚きと恐怖。喜びを感じている余裕はなし。年長組の扉が開くと同時に、待ってましたと物凄い勢いで鬼のお面に豆が当たる。豆の圧力でお面がズレるくらいの数と速さ。さすがの鬼とて堪らない。お面で覆い切れない剥き出しの首に当たろうものなら、大人とて涙が出てしまう。悲しいかな、役柄上ガオーとしか鳴けないのだが。

 鬼とは言わず、豆とは言わず、何かに向かって何かを好き放題に全力で投げつける機会なんて、そうはなかなかあるまいて。気分転換やストレス解消にはもってこいなのに、年齢を重ねて大人になればなるほど、気でも触れたかと白い目で見られる。そしてそれは、己の身の安全を守る為には当然のこと。こんな風に豆まきができるのはこの頃だけだ。


 お雛様の飾りつけは女の子が中心。正しい並べ方があるなんて男の子は知る由もない、というのは大袈裟でも何でもなくて、鈴本家みたいな男兄弟だと雛祭りにはなかなか縁がない。歌は途中までしか知らないし、正しい歌詞も覚えていない、歌詞の意味もさっぱりだ。それでもお祭りが嫌いな子はいない。意味や背景を知らなくたって(知っている方が稀だが)、普段と異なる特別な行事は無条件に楽しい。ただ、先頭には立てないけどね。先生や女の子に言われるがままお手伝いをしたり、邪魔しないように少し離れて見学する。

 3月3日の昼食後には『ひなあられ』の小袋が配られた。食後にみんなでカリカリ、ポリポリ・・・・・・初めて食べた子もいるかもしれない。やはりまだまだ花より団子。雛飾りには目もくれず、一粒摘まんで何色か確かめて、蛍光灯に透かして、形に見惚れて、口に運んでその甘さにうっとりする。幼稚園でお昼にお菓子を食べた、これだけでも特別な思い出として残るはずだ。

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