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卒園式の隠し事①

【卒業式の隠し事】


 「かくれんぼ」とは、この上なく孤独な遊びである。鬼は言わずもがな、隠れる側になっても、である。皆で集まらないとできない遊びなのに、いざかくれんぼが始まった途端みんなバラバラになる。

 鬼になったら顔を伏せて10数える。数えている内に賑やかだった話し声が消え、足音も気配も途絶える。自分の声だけが不気味に反響し、じっとりと耳に残る。夕方の薄暗い時間、烏なんかが鳴き始めたら本当に帰りたくなる。追い詰める側なのに『もういいかい?』の問い掛けが助けを求めているようだ。そして『もういいよ』と許されれば、その探索する仕種は人間を喰ってしまうのではなく、危害を加えないから仲間に入れてと懇願しているようだった。

 一方の隠れる側も基本は単独行動。常に独りでお喋りもできない。息を殺して身を潜めて物音立てずに10の宣告を待つのは、自身をその場に縛り付ける為か。鬼が動き始めたら覚悟を決めてじっとしているしかない。こんなの遊びじゃなくて苦行に近い。見つかって解放されたら、内心ほっとしている子もいるだろうて。




 クリスマスが終わり、正月が過ぎると改めて、残された日にちが僅かであることを痛感させられる。3学期はあっという間。あとは節分の豆まきと3月3日の雛祭り。子供達はその都度その行事に集中するが、先生達の頭の片隅には絶えず必ずその日まで、卒園という言葉がこびりつく。雪が積もって、その日の予定を白紙に戻して雪遊びに興じる際も、脳裏を離れることはない。何時においても卒園式の準備と並行して進めていかなければならないし、何事においても最後の1日が優先される。子供達の顔をその目に焼き付けたいと―無理だと分かっていても―どうしても手が止まって、足が停まって、目が留まってしまう。部屋の模様替えで見つけてしまったアルバムをめくるみたいに思い出が蘇って一旦横に置いておきたくなるけれども、そこはぐっと堪えなくてはならない。仕事だからという義務感よりも、子供達の為にという本心。物より思い出というコピーが重く響く。これが我々の仕事のかけがえのない報酬。

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