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進の入院⑦




 お母さんが受付けを済ませ、一般の待合室で待つこと10分。正面には長~い廊下が。50メートルくらいあるんじゃなかろうか、そこを進が歩いてくるという。両親に挟まれ、回りの迷惑とならないよう静かに座して待つ要。ぼ~と嘘みたいに長い廊下を眺めたり、じ~と自分の靴を見つめたり、む~んと音を鳴らす換気扇を見上げてみる。長いよな、待つだけ待たされた後の残りの数分も。

 遥か向こうの曲がり角から50メートルの直線へ入った真の姿に要はすぐさま反応して席を立ったが、数歩進んで振り返る。行ってもいい?―走っちゃだめだぞ。大きな声を出さないようにね―2人が優しくGOサインを出した。ま、要に気付いた進の方がお構いなしに走り出してしまうのだが。だからこの廊下は一本道の、長い長い設計なのかもしれない。これなら出合い頭にぶつかることも防げるだろう。「要ちゃーん!」なんて大きく手を振りながら大声を上げたって、さして迷惑にならない。付き添いの看護婦さんも止めることなく進を送り出した。お父さんとお母さんも腰を上げ、再び4人の時間が動き出すのだった。

 抱きついて、泣き出してしまうかなとも思われたが、進は満点の笑顔で帰ってきた。別居生活が彼をちょっとだけ大人にしたのかもしれない。要が、頑張ったなと言わんばかりに頭を撫でた。対して5日間、お兄ちゃんとお喋りできなかった弟君の第一声は実に進らしいというか、まだまだ幼い子供の感想というか、両親を跳び上がらせるには十分な破壊力を秘めていた。

「要ちゃん、あのね・・・病院のごはんって、すごくマズいんだよ!味がしないのっ。」

大声で5日間の思いの丈、恨み節、本音を吐き捨てた。どこまで響いたかは不明だが、即刻看護婦さんに平謝りするお母さん。そういうことは外で言うもんだぞと(たしな)めるお父さん―それもちょっと違うだろうて―後からお母さんに叱られるぞ。だから、今晩の夕食はごちそうだ。隅から隅まで進の好物で埋め尽くされる。オムライス(ケチャップごはん)、ハンバーグ(とろけるチーズのせ)、カニかまサラダ(カニかま大量)、かぼちゃのスープ(裏ごし2回)、それとデザートはシュークリーム(コージーコーナー)。味気ない、塩気ない、会話のない病院食は、一晩で笑い話に変わるだろう。

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