進の入院➅
予定よりも早い退院とはいえ、特に要にとっては長い5日間だったはずだ。金曜日の朝、起きてきた陽に対して、「要ちゃん、おはよう。今日は幼稚園から帰ってきたら、進ちゃんもお家にいるからね」。はしゃいで喜ぶのは気恥ずかしいのか、要は無表情のまま頷いた。そんな要をお母さんだって放っておく。あら、嬉しくないの?なんて野暮なことは訊かない。術後の経過も順調で午前中にお父さんの車で迎えにいくのだが、要はこの日までお見舞いに行くことができなかった。
あさ、要を幼稚園へ送ったお母さんはそのままの足で電車を乗り継ぎ病院へ。進の身の回りの世話をして帰ってきたら、すぐさま要を迎えに幼稚園へ。ゆっくりお昼を食べる時間もない。これでは要を病院へ連れていってあげるだけの体力は残っていなかった。進ちゃんも元気にしてたわよと報告すれば、笑顔で頷いた。日中の母親の忙しさを若干見える疲労の色から察していた要も、自分を連れていってとは言わなかった。あれだけべったり仲が良い兄弟だから、尚のこと心が痛い。病院で進がべそをかいていたなんて、口が裂けても言えなかった。。
許したのは男の目をしていたから、とはお父さんの弁(絶対、適当・・・)―朝食の際、お父さんとお母さんを前に、要は幼稚園を休むと言い出した。一緒に進を迎えに行くと。。素直で手のかからない長男の、水流を塞き止めるような明確な意思表示を一喝で却下することはできない。こういう場面でこそ、決して面倒臭がらずに、邪魔を排除して、子供の為だけに時間を設けることは鈴本家の、2人の共通認識だった。お父さんが呼んでいた新聞を折り畳み、お母さんがテレビの電源を切った。
わざわざ迎えに行かなくても、幼稚園から戻ってきたら進も家にいるんだぞ。一緒に病院へ行ったら、幼稚園の皆勤賞はなくなるぞ。今回だけ、特別だぞ―お父さんが尋ねたのはこれだけ。随分とあっさりしていた。分かっているよと、しっかり目を見て頷いた要。お父さんが許可したならばお母さんは何も言わない。そうと決まればさっさと朝食を済ませて、甘えん坊を迎えに行こう。首を長くして待っていることだろう。お母さんが欠席の旨を幼稚園に電話しようとしたが、まだ少々早すぎた。




