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アリス・レポート 異世界人見聞録  作者: con
風来坊と記者
1/6

導かれし記録者

自分の中で描きたい魔王討伐後の異世界召喚モノです。

【プロローグ】


俺は地獄にいる。


「助けてぇええ!!」


「嫌だ!ママァァァ!!」


「死にたくない、いやだ……!」


断末魔の叫びが、真っ赤に染まった空に吸い込まれていく。

目の前では、ゲームに出てくるようなバケモノ――ミノタウロスが、子供や老人を次々と押し潰し、踏み殺していた。


俺は――林藤 巧。

元は公安の人間で、ヤクザの潜入捜査をしていた。東南アジアの密輸ルートを追っていた矢先、船の上で突如大地が揺れ、大津波が襲い、気づいたらこの訳の分からん地獄にいた。


見上げた空には、魔法陣と巨大なドーム。

――俺は異世界に召喚されたのだ。


だが、この世界は、誰もが夢見るようなファンタジーなんかじゃなかった。

血と絶望の匂いが、骨の髄まで染みついている。



---


現代サジタリウス領 首都ケイローン 新聞社


「却下だ。異世界人なんて、今さらニュースにならん」


ガチャンと、アリスの手元に資料が突き返された。

サジタリウス領首都新聞社のデスクに座る上司、ラビは気だるげに紙タバコをくゆらせながら言った。


「でも、戦争を終わらせたのは彼らです。人々は彼らのことを忘れ始めてます」


「そういうのは歴史学者に任せとけ。うちは売れるネタを扱うんだ」


理想と現実の壁に頭をぶつけながらも、アリス・イライザーは諦めきれなかった。

金髪のセミロングに、蒼い瞳。童話の“アリス”のような見た目に似合わぬ、熱い記者魂が彼女の中に宿っていた。


「……それならさ」


ラビが不意に口元を歪める。


「辺境の村で“登録外”の異世界人が目撃されたらしい。噂の真偽を調べてこい。ついでに、近日の万博にも関係があるかもしれん」


アリスは立ち上がった。「やります!」


「ただし、危険地域だ。護衛はつけろ」


「護衛ってそんなに危険なんですが」


「それも有るがお前一人だと暴走するからな」


ラビは紙タバコを火をつけて、外の景色を眺めていた。 タバコの煙にむせながらも、アリスはラビの前に立ち、睨みつけていた。


「ラビさん、私の事を何だと思ってるんですか?」


「甘ちゃん・世間知らず・自分を大人だと言い張るガキ」


「なぁ! 私、コレでも16ですよ! 結婚出来る年齢ですよ」


「はいはい、そのセリフを堂々と言うなよ。場合によっちゃ、魔女裁判みたいに火あぶりにされるぞ」


「ラビさんこそ、今度可決されるコンプライアンス違反で捕まりますよ!!」


アリスの日常は上司のラビと喧嘩しながらも毎日を過ごしていた。10年前に魔王討伐してから世界各国復興が進み戦火の傷も癒えて、平凡過ぎる毎日が少し退屈に感じていた。 アリスはそう思っていた。



翌日 馬車乗り場に待っていたアリスはラビを待っていた。


「アリス、待たせたな、彼彼がお前の取材の護衛を担当する、“道具屋”の林藤 巧だ。」

護衛として紹介されたのは、風来坊風の中年男。

無精髭に無愛想な目つき、黒髪は手入れされておらず、何とも頼りなさそうな“道具屋”だった。


「林藤 巧、借金返済のために同行する。護衛の間、俺の指示に従って貰うが守れなかったら見捨てるから」


「はぁ〜よろしくお願いします。 私はアリス・イライザー、記者見習いです。 護衛お願いします」


そうラビに説明されたが、アリスは何か引っかかった。

妙に落ち着きすぎている。周囲への警戒心も妙に高い。まるで――軍人か、兵士のようだった。


「んじゃ、道中は彼の指示に従うこと」


「あの、ラビさん、この方名前珍しいですが、もしかして?」


「あぁ、異世界人だ 、まぁ、その辺は馬車に乗ってる間に聞きな」


「何してる? 馬車に乗れよ」


無愛想な態度の林藤に嫌な気分を感じていたが数少ない異世界人に質問できる機会が恵まれ、質問をしようとしたアリス


「目的地行くまで時間があるので良ければ林藤さんのお話聞かせて貰っても良いですか?」


「却下、 その手の話は他のやつもしてるだろ? 俺の話は英雄さまの様な活躍も無いからな」


「そんな事は・・・」


「記者なら知ってるだろ?あの魔王討伐したのは12人の王導騎士と言われる12人の異世界人とそれを支える白金(プラチナ)ランクの戦人( いくさびと)それ以外はそもそも魔王が居る魔大陸にすら行ってないんだから」


林藤が言う、魔大陸はこのサジタリウス領がある大陸 ユグドラ大陸を 遙か東の大陸にある魔大陸と言われている。

魔王討伐後も強力な魔物が多いため、連合でも領地として征服は出来ていない。


「勿論です。でも、あの戦争は他にも色んな異世界人の方が戦っているのも知っています。 ですが彼等と話す機会は」


「まぁ〜異世界人と言えど殆どは戦死、あるいは再起不能で廃人になって病院にいる奴もいる。 有名所は連合のそれぞれの領土で手厚い待遇で民間人がホイホイ聞けないと」


「はい、だから今回、異世界人である林藤さんのお話は貴重なので」


「仕事に熱心なのは結構だが、そんな暇はなさそうだぜ?」



調査地へ向かう道中、馬車が森の中に入った瞬間――


「止まれェ!! この道は通行料が必要だァ!」


盗賊が飛び出し、馬車を囲む。

アリスは息を呑んだ。まさか、本当に出るとは……!


その時だった。


「……鬱陶しいな」


林藤が無造作にポケットから取り出したのは、スリングショット。

小さな鉄球が唸りを上げ、一人の盗賊の額を正確に打ち抜いた。


「ぐえっ――!?」


倒れた瞬間、別の盗賊が怒鳴って突進してくる。

だが林藤は素早く足を払って倒し、転がる体に馬乗りになってナイフの柄で一撃。動かなくなった。


「……は、速い……」


アリスは呆然とした。

その動き、ただの道具屋とは到底思えない


「あなた、何者ですか……?」


林藤は口元だけで笑った。


「借金まみれの道具屋さ。あんたの護衛なんて、割りに合わん仕事だよ」


だが、目は笑っていなかった。

その冷たい視線に、アリスはゾクリとした。


(この人、何かを隠してる……)


謎の道具屋と共に向かう、異世界人の真実の調査。

アリスの記録が、世界の裏側を暴き始める。






仕事しながらのため不定期になります。

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