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成就

静かな声で淡々と話しているアルバートに胸が痛くなった。まさかアルバートにそんな過去があったとは思ってもみなかった。

「僕知らなくて。そんな事があったのにアルバートを自分勝手に連れ回してた気がする。今更だけどごめんね」

僕はアルバートが来てからは兄になったんだという責任感と友達のような弟が出来て嬉しくて、アルバートの気持ちも考えずに色々と付き合わせてしまった気がする。

「いいえ。カインがずっと側にいてくれたから俺は立ち直れたんです。少しでも目を離すと何をするか分からなくて怖かったですし」

懐かしそうに目を細めながら頭を撫でてきながら笑っている。

「ん?ちょっと待って。何かそれだと僕がアルバートに面倒を見て貰っていたような言い方じゃない?」

「そうですよ。手のかかる兄さんを持った俺の苦労を分かってもらえますか?」


僕の記憶の中には、アルバートはいつでも僕の服の裾を掴んでひっついていたのだがおかしな話だ。

「いや、アルバートは僕の服を持ってついてきていたじゃないか」

「ああ。そんな風に見えていたんですか?あれはあなたが転ばないようにと後ろから誘導をしていたんですよ」

なんだって!僕はいつでもアルバートの事を先導している気でいたのに、本当はアルバートに誘導されていたなんて。

「俺が少し手を離した時には、木苺を見つけたって走り出して木の根に引っ掛かって転んだ事もありましたね。あの時泣きそうだったのに、俺が近づいたら必死に笑って何でもないフリをしていたのを覚えていますよ」

そんな事があっただろうかと考えていると、他にもまだエピソードはありますよ。聞きたいですか?と言ってきた。

「いらない、分かった。アルバートはずっと僕を助けてくれていたんだね。ありがとう」

アルバートの胸に頭を押し付けてお礼を言った。


「そうですよ。俺にとってもう大切な人はカインだけなんですから、ずっとこうやって隣にいて下さいね」

「そんな寂しい事言わないでよ。僕も僕の両親だってアルバートの事を本当の家族だとおもっているよ」

「俺にとってカインは唯一無二なんです。他の何とも同じにはできません。早くカインも俺を特別にして下さい」

頭の上に軽く触れられた感触の後、抱きしめられた。

「僕にとってもアルバートは唯一無二だよ。特別な弟だよ」

「はぁ…。カイン。もう少し空気を読めませんか?明らかにそういう事ではないですよね?」

最近聞き慣れてきた特大の溜息がまたアルバートの口から出ていた。

「アルバートに僕の心の中を見て欲しいよ。こんなに特別だと思っているのにどうして分かってくれないの?」

「そっくりそのままお返ししたいですね。本当にあなたは俺の忍耐に感謝するべきです!」

「何かを我慢してるの?僕達に遠慮なんて必要ないよ」

「本当ですか?後悔しても知りませんよ。この先後戻りは出来ませんし、あなたの事は絶対に逃しませんよ?逃げるなら今しかないですよ」

「これからずっと一緒に暮らしていくのに逃げる訳がないじゃないか。それに後悔なんてしないよ。僕はずっとアルバートの家族だよ」


アルバートはチッと舌打ちをしてから、覚悟を決めた顔をして僕の顎を掴んで唇が触れそうな距離で囁いた。

「その言葉、忘れんなよ」

珍しく乱暴な言葉に驚いていると、唇に柔らかい感触がした。

それから何度も軽くキスをしてから最後にアルバートの舌で僕の唇をペロッと舐めて囁いた。

「俺の言ってたのはこういう事だ。さすがのカインでも分かっただろう?」

何が起こったのか呆然としながら、唇の柔らかさだけは妙に生々しくてこれは現実なんだと自覚した。恥ずかしさに顔が熱くなっているのが分かる。

「何だか言葉遣いが変わった?」

一番気になっていた事を聞いてみると、途端にアルバートの顔が険しくなって再び顎を強めに持たれた。

「おい。キスされといて言うのはそれなのか?もっと他に言う事があるだろうが」

「いや、だってなんか気になっちゃって…」

「はぁー。そうだよな。そうなんだよな。あんたはそういう人だよ!言葉遣いは丁寧にして一線を引いてないと、いつあんたに襲いかかってもおかしくなかったからだよ!分かれよ!毎晩どんな気持ちで俺がっ…!!」

よく分からないが、さっき言われた空気を読んで謝ってみた。

「なんか僕のせいでごめんね?」

顎を持っていた手は頬に移動して、口を突き出す変な顔にされた。

「絶対に分かってないだろ?適当に謝ってんじゃねえぞ」

僕にはアルバートの言う事は難しすぎる。取り敢えず、こうなる前に戻ってキスの感想でも言ってみよう。


ポンポンと手を叩くと、僕の頬はあっさりと開放された。

「アルバート。君とのキスは別に驚くような事ではないよ」

「はぁ?!どういう事だよ?弟と思ってた奴にキスされたんだぞ?」

どういう事かと聞かれても、僕が唯一持っていた本にもお姫様と王子様は最後にキスをして幸せになっていた。

「好き同士が一緒に暮らしてキスをするのは普通の事だよね?」

アルバートは片手を頭に持っていき押さえながら聞いてきた。

「ちょっと待て。あんたは俺の事を弟だと思っているんだよな?」

「勿論だよ。大事な家族で特別な弟だよ」

「あんたは弟とキスするのか?」

「するよね?アルバートとは血が繋がってないからこそ別の絆で繋がりたいし」

「〜〜!!!もっと早く言えよ!俺の苦労は何だったんだ!」

「ずっと言っていたじゃないか。僕はアルバートの事が好きだって」

「いや、普通そういう意味だって思わないよな」

「僕だってアルバートからキスをされてやっと自覚したんだ。それまでよく分からなかったんだけど、そういう意味で好きだなって思ったんだ」

「…はぁ。まあ何でもいいか。結果的にはカインは俺のものになったしな」


「改めてこれからもよろしくね。大好きだよアルバート」

今度は僕からキスをしてみたけど、勢い余って歯がぶつかった。

「うっ…。こちらこそよろしくな。カインには苦労をさせないように約束する。俺もカインを愛してる」

アルバートは僕を抱き込んで優しくキスをした。

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