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暗闇に手をかざす
暗闇に手をかざす。
「暗闇に手をかざすように」と祖父に指導されたこと、今も思い出す。
套路を踏む。
「中二病みたい」と、私が言ったら、
「武術をやろうなんて、ほとんど中二病的だよ」と、言った。
「闘いたいわけじゃない」と言ったら、
「闘うためにやらなくて良い」
「じゃあ何の役にたつの?」と言ったら、
「生きていく力になる」
「どうして」と言ったら、
「悲しいとき、うれしいとき、うわついたとき、何も道がなく思うとき、いつも通りなとき。一日一回は套路を踏む。それで良いんだ」と、言った。
(暗闇に手をかざすように)
私にとって套路はラジオ体操みたいなものだ。
まあ、ラジオ体操だって毎日必ず一回はやれば、それなりに健康になるだろう。