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きみを荒唐無稽にしてあげよう
「やあ、君を魔法少女にしてあげよう!」
中学生くらいの少女が言った。真っ黒なパーカー。
「君は邪悪なマスコットか何かかい?」
幸は目線を合わせて微笑んだ。
「正義の味方のスカウトだよ」
真顔で少女は幸の眼を覗き込んだ。
「私は21才だ。魔法少女って歳じゃない」
幸は少女のパーカーのフードをめくった。
「私なんて98のおじいさんだよ」
少女は少し笑った。
「今度は何のパロディ?」
少女は右手を伸ばした。
「さぁてね」
幸は右手をつかんだ。
つかんでしまった。