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マーラは与えた

作者: GONJI

「百万本の薔薇」という曲をご存じでしょうか?

加藤登紀子さんが切々と歌い上げる心に染み入る名曲だと思っています


貧しい絵描きが女優に恋をして、自分の街に公演に来た時に女優が滞在している部屋の窓から見える広場を百万本の薔薇の花で満たしてあげたいと願って私財をはたいて行動に出た

女優は窓を開けてそれを見てどこかの金持ちがふざけたのだと思っただけ

でも、その窓から見下ろす女優をこの貧しい画家は広場の隅から見上げていた

物語はそれで終わり、出逢いもそれだけ、それも画家からの一方通行のみで終わり

女優は違う街へ向かって行った


なんとも切なく儚い物語でしょう

雨が降る薄暗い早朝に車に乗ってエンジンかけたらカーラジオからいきなりこの曲が流れてきたのです

その歌詞はマイナーの美しいメロディに載って私の耳に入ってきて心が揺さぶられました

何度も聴いたことはあるし、自分でも演奏したり、ギターアンサンブル用にアレンジもしてきた曲なのです

でも、この日の天気と相まって泣きそうになりました


前々から思っていたのは、この曲の原曲は外国だろう、そしてこの物悲しい雰囲気は東欧やロシアなどのうちスラヴ系の民族の方が作った曲だろう、だったのです。

それでその日は心が揺さぶられたので猛烈に原曲のことを知りたくなりました

今の世の中こういう時にはネットって本当に便利ですよね


解りました!

そして原曲にはさらに悲哀が込められていることも解って、今の世界の紛争情勢からさらに胸が締め付けられる思いがしました


原曲はバルト三国うちの一つラトビアの曲で、タイトルの和訳は「マーラは与えた」とのことです

また、いろいろな和訳もあるようで「マーラが与えた人生」とも呼ばれているようです

歌詞もいろいろ和訳されているようなのですがどれも悲しい運命を歌っています


ラトビアと言えば、過去より隣国から頻繁に占領されたりして激動の運命を辿ってきたと歴史で書かれています

結局、最後は1945年ソ連に再占領されて併合されて、独立したのはソ連崩壊後の1991年だそうです

この「マーラが与えた」と言う曲はそのラトビアという国が背負わされた数奇な運命を歌っているのです


マーラとはラトビア地方で聖母のことらしいのですが、ラトビア語の原曲を聴く限り私にはマリアと聴こえます

聖母マリアのことなのだろうと思っています


繰り返されるサビの部分は「マーラは娘に尊い命を与えた でも幸せを与えるのを忘れた」という隣国に制圧されて悲しい想いに耐えていることを歌った子守歌らしいのです


娘とはラトビア国自身のことなのですね


要旨を書かせていただくと(いろいろな訳詞があります)・・・


娘はいつもいじめられて泣きながら家に帰ってお母さんのエプロンをつかむと、お母さんは優しく抱き寄せて笑顔で囁いてくれる

マーラは娘に尊い命を与えた でも幸せを与えるのを忘れた


時は過ぎ母親もこの世にいなくなった、一人きり一人で生きていく、辛くなると笑顔の母親の囁きを口ずさむ

マーラは娘に尊い命を与えた でも幸せを与えるのを忘れた


もうはるかに時間が過ぎて昔のことなど忘れていたのに、突然よみがえり身がすくんだ

それは私の娘が笑みを浮かべてあの囁きを口ずさむ

マーラは娘に尊い命を与えた でも幸せを与えるのを忘れた


ちょうど2番から3番に移るときに半音上がるのですが、驚愕を表現しているのか?とも思うのです

さらに私の見た有名な動画では3番のサビは何回か繰り返されるのですが、1回目は小学生低学年ぐらいの年齢の女の子が出てきて1人で歌うのです

娘の娘役ですね

そして幸せを与えてもらえなかった娘のさらにその娘までも幸せを与えてもらっていないというなんとも悲哀な現実を表現していることかと胸が苦しくなりました


1991年にやっと独立したけれど現在またこの地域が危険に脅かされています

何故そんな運命と隣り合わせなのかと考え込んでしまうのです

あくまでもラトビアからは遠くにいる私なのです

それでも他人事と言い切れるか?と言われるとね




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