絡ませないように/春雷/城のあと
絡ませないように/
その一滴を
振り払った風が
拓く
弓なりの空に蒼
見上げる彼女の
掲げるくしは
その手で
虹を鋤くために
春雷/
胸騒ぎより早く
呼び起こせよ
ただ明らかな
目覚めのごとく
城のあと/
昔、お城があったと
伝わる場所には今
がらんとした
寒々しい草地が
広がっていて
まるでそんなこと
気にも留めずに
その前を
通っていたけれど
早朝 世界が
どこまでも淡い紫に
包まれた時間
そこから見下ろす
遥かなる街並みは
朝霧の中から
白くぼやけたまま
微かな光により
浮かび上がり
不意に
この場所に眠る
お城の姿が
ストンと胸に
落ちていったのです