ドレイナー 1
初投稿。
拙いですが。
23時27分のエリアD中心街の裏路地に3発の銃声が響く。
しかしいずれもそれには命中しない。
灯りが少ないこともあるが、予測不能な動きに翻弄されていた。
「化け物め。」
ハンドガンを持つ癖毛のロングヘアの女性が吐き捨てた。
上下漆黒のスーツ、胸部にはプロテクターを装着した姿。他の男性2人も同じ格好をしている。
女性は全弾打ち終えた銃に素早く次の8発を装填する。銃口をそれが身を隠しているであろう場所に向けるが、次の瞬間背後から地面を蹴る音がした。
回り込まれていたのだ。
「うっ。」
「マーク!」
マークと呼ばれた細身で黒髪の男性の右肩の服が破れ、血が数滴地に落ちた。
背後からのタックルをかわしきれず、わずかに接触しただけでこうなることが、驚異的な身体能力を物語っている。
「大丈夫ですフィーゼさん。それよりー」
フィーゼと呼ばれた女性はマークが言い終わるよりも早く銃口を向け、銃弾を放つ。
もう1人の男性もそれに応戦する。
銃弾のスピードを避けられるはずはないのだ。普通の人間ならば。
外見は普通の人間。しかし充血した両目は瞬きを決してすることなく、涎を垂らし閉じることのない口からは唸り声が漏れる。狂気の表情であった。
当たらない。
異質者とはこれ程のものなのか。
フィーゼがそう思いながら次の弾を入れるその時だった。
「ぐっっっ。」
奇声と唸り声しか上げていなかった異質者の口から何か痛みを堪えるような声が発せられた。
何が起きた。いや、これは——
異質者の顔から脂汗が垂れる。そう見えた途端、ドロドロと皮膚が剥がれ落ち、同時に凄まじい量のガスのようなものが体内から飛び出す。叫び声を上げ苦しみ悶えながら、どんどん人の形ではなくなっていく。
急激に溶かされ気化した氷のように一気に煙となった異質者は、いつの間にか背後に立っていた男性の左手にみるみる吸い込まれていった。
細身で長身、黒服を身に纏った男性の顔は、暗闇で見えない。
フィーゼが口を開こうとするのを待つことはなく、男性は闇に消えた。
静寂となった。異質者の断末魔だけが耳に残り、リピートされているような感覚だった。
「異質者が消えた、というべきなのか。何が起きたんですかね。」
止血をしながらマークが質問のような、独り言のような言葉を放った。
「知っているだろう、異質者を捕食する吸血鬼を。」
「それじゃあいつが。」
マークは驚きを隠せなかった。
確かに存在は知っている。どんな存在なのかも理解している。ただどこか伝説というか、架空の人物のように思い込んでいたもの。
異質なモノを喰らう、更に異質なモノ。
「ドレイナーだ。くそっ、捕獲失敗だ。」
フィーゼは舌打ちをすると、すぐ側にあった電柱を蹴り付けてやりたい衝動を抑えるように深呼吸をして天を仰いだ。
雲間からこちらを伺うように姿を見せた半月が綺麗な夜空だった。
読んでいただきありがとうございます。