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「ニアは優しいな」




「全然、悪い魔力の源がどこにあるのか分からないわ」


 私は私の『呪い』の原因でもあった悪い魔力の源がどこにあるか探していた。

 使用人たちにも協力してもらって探しているのに……全く、それがなんなのか分からなかった。


 領地内をぶらぶらしたり、悪い魔力の源のことを探ったり――そんなことをしていると思ったよりも時間がなくて、あっという間に妹と元婚約者の結婚式の日がやってくる。このまま帰るまでにその悪い魔力の原因が分からなかったら……そう思うと少しだけ不安になった。


「見つからないなら見つからないでそれでいいだろ」

「そうね。まぁ、結局見つけたところで、私に何が出来るか分からないけれど……」

「見つかったら俺の方でどうにかするから大丈夫だ」

「ふふっ、ありがとう」



 私はマヌの言葉に笑った。




 マヌの言葉を聞くと、どうしようもないほど安心した。




「そろそろ時間ね。結婚式に行きましょう」

「ああ」



 マヌと話していると気づけば、結婚式が始まる時間は迫っていた。

 使用人たちに準備をしてもらって、私もマヌも結婚式に参加するため着替えている。

 いつもとは違って、参列用の服を着ているマヌはなんだかかっこいいなと思った。



 そういえば、久しぶりに再会して以来、家族には会っていない。あと元婚約者もマヌに睨まれたのが恐ろしかったのか、あれ以降近づいては来ない。手紙は来ていたけれど無視している。

 使用人たちがいうには「奥様の『呪い』が解けたことで、奥様の事がおしくなったんじゃないですか?」とのことだった。……『呪い』が解けたからって今まで全く私に興味がなさそうだったのにそういう態度って凄いわよね。




 マヌと一緒に別邸から出て、結婚式の会場である神殿へと馬車で向かう。

 ……その妹と元婚約者の結婚式が行われる神殿は私が一度も足を踏み入れたことのない場所である。

 私の『呪い』のことを神に背く行為をしただとか、悪魔に魅入られているとか好き勝手いっていた神官たちのいる場所である。


 私の『呪い』の原因の分かった神殿の神官たちとは全く違うなと思った。

 というか、私の『呪い』が残ったままだったらあの神殿は私が神殿に足を踏み入れるのを拒否したことだろう。そう考えると……家族からしてみれば『呪われた令嬢』である私に対する最大の嫌がらせだったのかもしれない。




 馬車から降りて神殿に足を踏み入れる時に、私たちと同じく妹の結婚式の参列者であろう人たちの姿が見えた。


 私が『呪われた令嬢』と呼ばれていた存在だと分かっていない人も沢山いそうだった。ただ数少ない参加したことがあるパーティーで見かけたことのある貴族たちは私を見て目を見開いていたりした。その人たちは私のことに気づいたのかもしれない。


 なんだか私を見ながらひそひそとささやかれて、なんだかなという気持ちにはなった。






 あとは親戚の方々も、私にまず近づこうとしなかった親戚たち。両親と妹にしか話しかけなくて、私に友好的ではなかった人たち。

 その人たちも――私のことを驚いてみている。






 私はお母様とお父様の姿を見かけた。それと同時に驚く。




「ねぇ、マヌ。あの……お母様がつけている宝石が、魔力を帯びているわ。なんだか、嫌な感じ」



 お母様は宝石を沢山持っている。妹も同じで、綺麗なものが好きみたいで高価なアクセサリーを沢山保持している。……だけどそのお母様が首から下げている真っ赤な宝石は初めて見るものだった。

 あれだけキラキラしていて、大きさも大きいものなのだからよっぽど高価なものなのだろうと分かる。


 だけれどもそれ以上に、魔力の扱いを覚えた私にはその首から下げられた宝石はなんだか禍々しいオーラを放っているように見えた。




「もしかしたら悪い魔力のやつか?」

「……そうかも。折角の結婚式だからあれを身に着けていない方がいいと思うわ。そしてきちんとした対処をしてもらった方がいいと思うの。そうじゃないと何かあった時に、折角の結婚式が台無しになってしまうわ」

「ニアは優しいな。でも確かにそうだな。助言はしてみるか」

「ええ。……ただ私の助言なんて聞いてくれないかもしれないけれど」




 お母様は自分の意見を持っている人だ。自分のやりたいように生きていて、その宝石だって自分の意思でつけている。妹の結婚式だからとはりきってとっておきのものを身に着けているのかもしれない。


 私の言う事なんて聞いてくれないかもしれないけれど、言うだけ言ってみようと思った。






 だから私はマヌと一緒にお母様とお父様に近づいて挨拶をした。

 近づいた段階でお母様には睨まれたし、お父様には嫌そうな目で見られた。



 けれど、それにはひるまなかった。




「――お母様。その宝石は危険かもしれません。外してしかるべきところで対応をしてもらったほうがいいです」

「なんですって!? この宝石が危険ですって? お父様が私のために準備したものになんてことをいうの!! 流石、呪われた娘だわ。亡き祖父まで愚弄するのね。なんて性格が悪い子かしら!!」



 ……やっぱり想像通り、お母様は私の話なんて聞いてくれなかった。

 それにしてもお母様のお父様って、私のおじい様ということ? もう亡くなったその方が、お母様にアレを渡したってことなのかな。




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