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「俺の自慢の奥さんだ」



「奥様、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。少しだけ緊張しているだけだもの」


 私はドキドキしている。

 ……だって、これからマヌの同僚の方たちを迎え入れるのよ。

 誰かをおもてなしをするのも緊張するし、他でもないマヌの同僚の方たちに嫌な思いをさせてしまったらとか、そんなことを考えてしまったりもする。


 マヌは何も気にしなくていいと笑ってくれる。例えば私がマヌの同僚の方たちと仲良くしなくたってマヌは気にしないだろう。

 でも出来れば仲良く出来た方が嬉しいと思う。




 これからマヌが騎士の方たちを連れてきてくれる予定だ。

 ちゃんと準備をしているつもりだけど、何か漏れがないか、ちゃんと出来ているかと私は少しだけ不安になる。





 誰かを迎え入れるのも、おもてなしするのも私にとっては初めての経験で、マヌと結婚してから初めての経験を沢山させてもらっているなと思う。

 ――上手く出来なくても一生懸命やろう。



 そうやって気合を入れていると、マヌが同僚の騎士の方たちを連れて帰ってきた。





「おかえりなさい。マヌ」



 私はまずマヌをそうやって迎え入れて、その後にマヌが連れてきた騎士の方たちに向き合う。

 緊張しながら迎え入れる。


 ……やっぱり私のことを嫌そうな目で見ている方もいるわ。

 でもそういう目を向けられたとしても、笑みは張り付ける。ひるみそうにはなるけれど、マヌを見ていると笑顔の力って凄いなと思うから。

 どれだけ私に嫌な目を向けている人も、マヌの言動からすぐにその視線をあらためる人も多いから。


 だからマヌのようには出来ないかもしれないけれど、マヌの真似をしている。

 マヌは私が笑うと可愛いと言ってくれる。私は笑うことを結婚するまであまりしていなかったと思う。だから、笑うことはあまり慣れていない。でも歪でも、慣れていなくても笑ってみる。

 




 マヌが連れてきた騎士たちは、十人ほどだった。その中で三人は女性である。

 その騎士たちはマヌの後輩にあたる騎士たちみたい。マヌは先輩をしているんだなと思うと、なんだか楽しくなってくる。



 マヌが騎士たちに、



「俺の自慢の奥さんだ」


 と、そんな風に笑う。



 ……後輩の騎士たちを前にしてもそんな風に紹介するマヌに恥ずかしくなる。

 後輩の騎士たちの中で、マヌがあまりにもあっけからんと嬉しそうに笑うから――私への視線をあらためてくれる人もいてほっとした。



 マヌは後輩たちに慕われているみたいだった。

 マヌがそれだけ強くて、明るい人だからなんだと思う。


 周りを惹きつけるような強烈な光を纏っていて、だからこそマヌの周りには沢山の人がいる。




 ――私の知らないマヌのことを教えてもらえることが私は嬉しかった。

 マヌの騎士としての働きを全て知っているわけではない。だからこうしてマヌのことを知れると嬉しくなる。





「ニアミレッラさんは、マヌエトロさんのことが好きなんですね」

「な……何を言っているのかしら」

「だってマヌエトロさんの話をしたら嬉しそうな顔をしていますから」



 ……マヌの話を聞いていると、嬉しい気持ちになったのは本当だ。

 でもそういうのでは、ないと思う。というか、私はそういう誰かを好きになる気持ちがよく分からない。

 そもそも私が本当に、そんな風に恋心を抱いて、好きになったら……気持ちが悪いと思われるんじゃないかしら。なんてそんな後ろ向きな気持ちになるのは、やっぱり散々私を見ていたくないとか、私に触れられたくないとかそんな風に言われ続けていたからだと思う。






 マヌは食事を取るのも、お酒を飲むのも好きみたいで沢山食事を取っている。

 それでいて楽しそうに騎士たちと会話を交わしているマヌを見ると、不安だったれど騎士たちを招くのを承諾して良かったとそんな気持ちになる。



 どうせ私は『呪われた令嬢』だから……と、私はこんな風に行動することをしてこなかった。でも自分の世界を広げると、嫌な思いもするけれど楽しいこともあるんだなとそう思った。





 女性騎士たちは私のことを複雑そうな目で見ている。私のことをそこまでよく思っていないだろう。

 だけど新しい世界が開ければ、勇気を出せば楽しいことだってあるのだとマヌが教えてくれたから。

 マヌと一緒に過ごしているとそういう勇気が出てくる。





「あの……ちょっとお話をしましょう」



 躊躇もしたし、怖かった。

 でも私は女性騎士たちに話しかけてみた。



 こうやって自分から誰かに話しかける勇気が出たのも、マヌのおかげだなと思う。

 例え上手くいかなくてもマヌがいるから大丈夫だとそう思えるから。



 その三人の女性騎士は、年齢は私と同じ年か少し下ぐらいだろうか。

 私が声をかけてくると思わなかったのか、三人は驚いた顔をした。



「なんですか?」

「マヌの話を聞きたいなと思って。いいかしら?」


 この三人の女性騎士たちと、どれだけ仲良くなるか分からない。

 でもこの硬い表情が柔らかくなってくれたら、仲良くお喋りを出来るぐらいになれたらいいなとそう思っている。




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