表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/50

「ニア、頑張っているな」




「難しいわ」



 身体のブツブツの原因が分かって、私は神殿で魔力の制御を習っている。

 身体を流れる魔力がどういうものなのか、その感覚も。

 その感覚を実感すると、確かに自分の身体にいつも魔力が流れ込んでくるのが分かった。



 ……この流れ込んできた魔力が、私の身体で結晶となってブツブツになっていったのね。

 魔力や魔法のことも一緒に習っている。

 それでやっぱり私はこういう体質じゃなければ、本当にいつ死んでいてもおかしくなかったみたい。


 私はどうして自分にこんな呪いみたいなものがあるのだろうとずっと考えていた。

 でもそうではなくて、この呪いのようなものがあったからこそ私は生きてこられたんだと不思議な気持ちでいっぱいなのだ。



 大体が魔力を吸収してしまう体質の場合は暴発して気づくことが多いみたいなので、私のこういう形で結晶化する事象は本当に珍しいみたい。

 



 魔力を放出するために、魔法を習ってもいる。

 自分が魔法を使うなんて想像もしていなかったから、水を出したり出来たことに凄く驚いた。私の身体の中には、魔力が沢山あるみたい。自分自身の魔力だけではなく、今まで吸収し続けていた魔力が溜まっているらしいから。

 だからどんどん教わった魔法を行使していたのだけど、教えてくれた神官が言うには魔法とは普通はこんな風にどんどん使えるものではないと言われた。それと同時に凄いとキラキラした目で見られて、そういう目で私は見られたことがなかったから……なんだかむず痒かった。



 私が魔力の制御をするために神殿に赴いている間、マヌは私に付き合って神殿に来たり、街を見て回って何か買ってきてくれたりしている。

 マヌが傍に居ると私はよくマヌのことをちらちら見てしまって、落ち着かないのよね。それもあって魔力の制御をしている私のもとへあまり来ないようにって言ったら、時々しか来なくなった。



 ……神官には私がマヌがいると気が散るのを、「好きなんですね」なんて言われたけれど、そんなのではないわ。

 嫌いではないけれど、その、好きとかよく分からないもの。


 でもそう言ったら凄くほほえましいものを見る目で見られたのよね。何なのかしら。






「ニア、お疲れ様!!」

「マヌ、今日も迎えに来てくれたの? 使用人たちもいるし、毎回迎えに来なくていいのよ?」

「俺が迎えに来たいから来ているんだ。ニアは嫌か?」

「いえ、嫌ではないわ」

「なら、毎回迎えに来るぞ!」



 マヌは私の魔力制御に付き合ってくれている時以外もいつも送り迎えしてくれる。使用人や護衛たちだっているから毎回のように送り迎えをするのは手間だろうに、全然苦ではないって顔をして嬉しそうに笑っている。





「ニア、今日はどうだった?」

「今日も沢山魔力を放出したわ。なんだか身体から何かが抜けていく感覚は毎回しているから、ちゃんと放出は出来ているのだと思うわ。……まだ、ブツブツはなくならないけれど」

「ニア、頑張っているな」

「でもまだ全然よ。道具も買ってもらったのに、まだすぐには効果が出ないわ」



 私の肌に浮かび上がるブツブツが魔力の結晶だということなどが分かったわけだけど、まだまだそれがなくなることはない。

 よっぽど私の身体には魔力が溜まりに溜まっているみたい。



 魔力を吸収しないようにする道具もマヌが買ってくれた。値段は貴族の私が驚くぐらいに高価なものだった。なのに、マヌっては「ニアのためだからな」なんて言ってすぐ購入していた。

 マヌは私にお金を使うことを本当に全然ためらわないのだ。


 だから私の腕には腕輪がはめられている。こんなに小さな腕輪が魔力を吸収し続けることを抑制するなんて不思議だった。



「ゆっくりでいいんだぞ。あんまり無理をしすぎてニアが倒れたら嫌だからな」

「ええ。倒れないようにするわ」

「そうしてくれ。目の前でニアが倒れて俺は凄くびっくりしたからな」

「ええ」



 私が倒れた時、マヌは本当に焦った顔をしていた。いつもの笑顔が曇り、心配そうに私を見ていた。

 私はマヌは笑っている方がいいと思っている。マヌにああいう表情はなんというか、似合わないもの。マヌにあんな顔をさせたくないなと……少なからず私は思っているから、無理はしないようにしたい。



 自分が誰かに大切にされて、心配されるなんて……。

 信じられないことではあるけれど、それでもマヌは私を大切にして心配してくれているから。




「ニア、魔力の制御の練習もいいけれど、そろそろ領地に戻らなければいけないから出かけないか?」

「ええ。そうね」



 折角普段は来ない街に来たのに、自分の呪いの正体が分かったからとそのことばかりで頭がいっぱいになっていた。もうすぐマヌの休暇も終わり、私も領地に戻る。それまでにもう一度ぐらい街で遊んでもいいだろうと思った。



 だから翌日は神殿側にはいかないことを告げて、マヌと一緒に出掛けた。

 なぜか、神殿から「デートに使ってください」と服をプレゼントされて驚いたけれど、折角の厚意なのでその服を着てマヌと出かけた。




 それから数日後、私とマヌは領地へと戻った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ