「どうやったら解決できるんだ?」
目を覚ます。
一瞬、此処が何処だか分からなかった。
ぼんやりとした視界の中で、そういえば祈りの石に祈りを捧げようとして倒れたことを思い出した。
神聖な石を前に倒れてしまうなんて……とそんなことを思ってしまう。
「ニア!!」
心配だったからついていてくれたのか、マヌは私の傍に居た。
私が目を覚ましたのを見ると本当にうれしそうに名前を呼んでくる。
「マヌ、私……」
「倒れたんだぞ! ちょっと待ってろ」
「ええ。……というか、この、ブツブツ色変わってる?」
私は混乱する頭の中で、私の肌に浮かぶブツブツが……黒色から変化している。なんだか白っぽくなっていて、それはそれで不気味に思える。
今まで生きてきて、色が変わったことなどなかったから今度は自分の身に何が起きたのだろうかと不安になる。
マヌは誰かを呼びに行ったみたいで、一旦、この場から去って行った。
……色が変わるなんてなんなのだろうか。そもそもどうして祈りの石に近づいたら私は倒れてしまったのだろうか。
つらつらとそんなことを考えていれば、マヌが神官を連れてきてくれた。
先ほどの女性神官だけではなく、他に複数名の神官がいる。
そしてマヌがいる前で、彼らは私のことを診てくれた。
「やっぱり……」
そのうちの一人――、若い男性神官が何かを確信したようにつぶやく。
もしかして私のこの呪い、ブツブツについて何かわかったというそういうことなのだろうか?
「奥様の体質について分かりました」
「体質……?」
「はい。おそらく奥様は周りの魔力を吸収してしまう体質なのだと思います」
「魔力を吸収……?」
私にとって魔力というものは無縁なものだった。魔法使いと呼ばれる人たちが魔法を使うために使用するものだっていうのは分かっているけれど……。
私が魔力を吸収してしまう体質というのは、どういうことなのだろうか?
「はい。奥様は周りの魔力を人一倍吸収しやすいのだと思います。そしてその魔力が身体に影響を与えているのだと思います。しかし魔力を吸収した結果、こういう風に影響が出る方はあまり見たことがないです。大抵は魔力を吸収し続けてしまって、暴発してしまうことが多いのですが……。奥様は魔力を幾ら吸収しても暴発することなく、こういう風に魔力の結晶として身体に出ているのですね」
「……暴発というのは?」
「そのままの意味です。身体が魔力に耐えられずに爆発します」
「ば、爆発?」
私はその言葉を聞いてぞっとしてしまった。
だって私は……身体にブツブツが出る形だったけれど、私の体質が違えば……、私の身体が爆発してしまった可能性があったということ?
そう思うと怖くなった。
思わずぶるりっと身体が震える。
「はい。奥様はそういう体質で幸いだったと思います。そうでなければとっくに命を失っていたはずですから」
「……こういう呪いみたいな形で身体に影響が出なければ死んでいたかもしれないということね」
私は女性神官の言葉に驚いてしまう。
私はこのブツブツのことをずっと呪いと言われ続けていた。私はそのせいでずっと疎まれてきた。
でも……私がこういう体質ではなければ私は命を失っていたのだ。
「あの……私が魔力を吸収してしまって、黒いブツブツが身体に出てしまっていたのは分かりました。でもどうしてこのブツブツの色は変わってしまったのでしょうか?」
「吸収した魔力の影響ですね。黒いブツブツだったのは、おそらく奥様が悪い魔力を吸い続けていたのだと思います。今回は祈りの石の周辺に充満している良い魔力を一気に吸収した結果、色が変わったのだと思います」
「……悪い魔力?」
「はい。何か心当たりはありませんか? あれだけの魔力の結晶が固まっているのですから、よっぽどそういう魔力を吸収し続けていたのだと思います」
「……心当たりは、ないです。ただ結婚してから少しだけこのブツブツが薄くなっていたように思えるので、もしかしたら実家にそれがあるのかもしれないです」
どうして薄くなったのだろうと、ずっと思っていた。
マヌに少し薄くなっていないかと聞かれてから。
……結婚してこうしてマヌと過ごして、薄くなっているのならば。
もしかしたら私は実家で女性神官に言われた悪い魔力の原因があるのかもしれない。
今まで解明できなかった情報を次々と言われて、あまり頭は働かない。
神官には「ご実家でその魔力の原因を探して対応した方がいいかもしれません」とは言われた。……でもきっと、実家の家族は私の話なんて聞かない気がする。だけど一応連絡はしておいた方がいいだろう。
「なぁ、ニアの原因が分かったのは良いことだと思う。だけど、どうやったら解決できるんだ?」
マヌが神官たちにそう問いかける。
「そうですね。道具を使って制御することも出来ますよ。ただ自分で魔力を吸収しないように制御したり、吸収した魔力を放出するのを覚えた方が何かあった時のためになると思います。よろしければ、この神殿で教えますよ」
そう言ってもらえたので、私はその言葉に頷いた。
それにしても……こんな形でブツブツの原因が判明するなんて、びっくりだわ。
道具を使ったり、自分でどうにか出来るようになったらこのブツブツもなくなるのかしら。