第三話 スキル
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俺は黒塗りの外車に乗せられてどこともわからぬ場所へと連行されていた。
これからどうなるのだろうか?
不安でいっぱいだった。
逃げ場所を探そうと右を向く。
左目に傷を負った大柄な強面のお兄さんと目が合った。
「いえ、何でもありません。すみません」
逆を向く。
スマホをいじっている筋骨隆々な強面のお兄さんと目が合う。
「ご、ごめんなさい」
両脇の圧力に俺は正面を向くのだった。
この後どうなるか分からない。
すっぱり殺されるだけなら別に構わない。
むしろウェルカムだ。
でも、臓器売買とかで体をバラバラにされるような死ぬまでの苦痛が長い方法は、精神的にくるものがある。
どうにか逃げ出せないだろうか?
「そ、そういえば」
俺にはスキルがあるんだった!
これで逃げ出せないだろうか?
俺はスキル画面を開いたのだった。
〈所持スキル 一覧〉
筋力UP Lv8
体力UP Lv3
瞬発力Up Lv11
知力Up Lv1
魔力 Lv3
健康 Lv1
科学の天敵
未来の天敵
なにこれ?
どんなスキルか分からない。
俺は説明書がないか探す透明な板には書かれていなかった。
どうにかならないか透明な板の筋力Upの文字に触れてみる。
“筋力強化するスキルです。レベル一つに付き元々の能力の一割分が上乗せされています”
「あ、触れればいいのか」
「なににだ?」
「え?」
右を向くと強面のお兄さんが俺を睨んでいた。
「なんでもないです。独り言です」
「あまり変なことはするなよ」
「はい」
とりあえず、息を殺しながら説明を読んでいく。
上四つのUp系スキルはどれもレベル一つで10%向上するスキルだった。
元々体が頑丈じゃない俺が先の事故で葵さんを助けることができたのはこれのおかげのようだ。
それにしても偏りがひどい。
他の四つも同様に調べてみる。
魔力は魔法を使うのに必要なスキルだが、魔法スキルがないと意味がないようだ。
健康はそのまま、怪我や病気にかかりずらくなるスキル。
そして、最後の天敵系スキルだ。
“科学の天敵、発動時に起こる確率が1%以下の事象を引き起こすスキル。強く願うと願った事象が起こりやすくなる”
“未来の天敵、発動後自身の周りにある最近発明されたもの、作られたものを壊すスキル”
うん。
よく分からない。
とりあえず、〈科学の天敵〉は何が起きるのか分からなくて怖いので〈未来の天敵〉を発動してみる。
「あ!!」
左でゲームをしていた筋肉お兄さんが大声を上げる
「どうした!」
右のお兄さんも大声を上げる。
こ、怖いよ~。
「スマホが電源消えて、しかもつかねんですよ。え? この前買った最新機種なのに」
「そんな事かよ。あんまり驚かせんな」
「すんません」
もしかして、〈未来の天敵〉のスキルが?
俺はもう一度このスキルを使う。
すると、今度は急に車の速度が落ちていった。
「なにがあった?」
右の方のお兄さんが前の方に大声を上げる。
「すみません。理由が分かりません。急に車が、あ、止まっちまった」
「どうなってんだ?」
黒服の男たちが戸惑い始める。
車が動けなくなったのなら、乗り換えるはず。
その隙に逃げれるのでは!?
「このままでは時間に間に合わねえな。仕方ない」
「え?」
左目に傷があるお兄さんは俺をがっちり抱えながら走り出したのだ。
その後ろを先ほどまでゲームをしていたお兄さんが追走する。
ああ、これは何が起こっても逃げれないや。
諦めてドナドナの気分で運ばれていくのだった。
そして、連れ込まれたのは人通りのない路地裏のビルだった。
ふと見渡すと掛け軸や壺といった骨董品が飾られている。
その中でも俺の目をくぎ付けにしたのは俺の身長程に長い刀。
こんなのどんな化け物が振り回すのだろうか?
「オヤジ! お疲れ様です!」
その掛け声で黒服の男たちが一斉にその男の周りに集まってきたのだ。
だが、見た目は普通の会社帰りのサラリーマンだ。
人が優しそうな雰囲気を感じる。
この人が黒服たちのリーダーなのだろうか?
「さて、大石 尊くん。君は借金の肩代わりに売られたのは知っているかい?」
……ふむ。
「誰にでしょうか?」
「君のお父さんだよ」
あれ?
おかしいな?
「俺には父はいません」
「んなわけあるか! 嘘ついてるとぶっ殺すぞ!」
俺の近くに居た黒服が俺にめがけて怒鳴る。
その時、サラリーマン風の男がその後ろに置かれていた長刀を鞘から抜きその黒服の首にめがけて刃を振りかぶる。
そして、首に触れる瞬間に刃が止まったのだった。
「うるせえ! 今、俺がしゃべってんだろうが!!!」
「すいやせんでした!!」
サラリーマン風の男はヤクザは何もなかったかのように軽々と刀をしまう。
「ごめんね。話を戻すけど、お父さんがいないって?」
「確かに、お、僕の、父は、存命だと、お、思いますが、親権を、放棄し、福祉施設で、育ったので、あいつが、俺の、権利なんて、持っていません」
恐怖のあまり、声を震わせながら事実を口にする。
部屋全体が沈黙で満たされる。
俺は怖くてヤクザの人を見れなかった。
「嘘では、ないな?」
そう言って彼は沈黙を破った。
俺は頭を一回縦に振った。
「そうか、事実を確認するから、少し待ってくれ」
サラリーマン風のヤクザはどこかに電話する。
そして、数分後、電話を切ると、俺ににっこりと笑顔を向けた。
「君の元お父さんは殺しておくね」