壱話 目覚めて………(上)
…………………………………………暗い。
気がついた頃には足元に石ころ一つない、どこを見渡しても何もない所に私はいた。
どれくらい歩いただろう。………と言っても数日間歩いたわけではない。ほんの数時間歩いただけだ。
いくら歩いても何もない空間。少女は何を目指すもなく歩いている。
「お腹すいたなぁ」
1人でにぽつりと少女の唇が動く。
反響してくることさえなく少女の言葉は消えていく。
別に本当にお腹が空いたから口にしたわけではない。誰かの返事を期待したわけでもない。
自分でもわからないが勝手に動いてしまった。
白いワンピースにはポケットもない、カバンだって持っているはずがない。歩いているのだって特に理由はない。
何となく走ってみる。何となく座ってボーッとしてみる。何となく片道を引き返してみる。
自分のしている事に疑問はなくただ思い浮かんだ事をするだけで時間は過ぎていく。
思いつきも次第に無くなり、後は歩く事しかないとまた少女は歩くを始めた。
再度ただの歩きを始めてから数時間、少し疲れてきた気がしたので座る事にした。
座る所がある訳でもないのでその場でしゃがみ込み時間が経過する事だけ感じていた。
「なんにもない」
また、勝手に唇が動く。
「誰かいないかな」
また、勝手に唇が動く。
何か落ちている事を期待したわけでもない。
誰かいる事を期待したわけでもない。
口が1人でに動き始めている事にただ耳が反応し、そのまま声が消えていった。
耳がさっきの声を忘れかけた時、一軒の家が見えた。
特に意識していた訳ではなかったので見逃していたのか、突然現れたのかわからないが先ほどまで向かっていた方向に家が見えた。
特にする事がない少女は自然と家に足を向けた。
家の前まで着いた少女は見上げてみた。
2階建の立派な風格。西洋風ながらどこか懐かしいような不思議な形をしている。木で出来ているのだろうか。
玄関横には少し錆びれた呼び鈴があった。こんな所にある家で必要な物なのだろうか。
自分の身長には少し高いベルを手を伸ばし押してみる。だが家の中から物音は聞こえない。
誰もいないのだろうかとも考えたが、窓を見てみると薄暗く明かりが見えた。
もう一度背を伸ばし押してみるが周りと同じで家の中は静まりかえっている。
ドアノブに手を伸ばしてみるとどうやら開いているらしい。
少し考えた少女は中へ入る事にした。
10年くらい前、学生時代に小説を書いていましたが久しぶりに書きたくなった(自宅から出れないから)ので少し前から考えていた作品を執筆しました。
仕事もあるので決まったペースでは書けませんが感想をいただけると嬉しいです。