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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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魔石

 ヴェルグの近くにある小さな港からヴェルグに向かう道のりを一台の馬車がゆっくりと進んでいく。

 荷車には大量の石が乗っており、その馬車を薄い魔力を纏った鎧をフル装備した三人の兵士が三角形の形で囲いながら守っていた。そしてその荷車と兵士の装備にはレオナルド伯爵の紋章が刻まれている。


「たくっ、なんで俺たちが運搬馬車の護衛なんてしなきゃならないのかねえ……」


 後方右側を守っている兵士の一人が馬車に大量に積まれた石を見ながら愚痴をこぼす。


「仕方ないだろ、以前護衛の依頼をしていた『黒き狼』が壊滅してしまったんだから。」


 隣の兵士の愚痴に対し、同じく後方の左側を守っていた兵士がその理由を説明するが、右側の兵士はその理由に納得できず反論する。


「だからって、俺たちみたいな精鋭部隊の兵士がなんでこんな石ころを運ばなきゃならないんだよ。」

「お前も知っているだろう?この石はただの石ではなく魔石であることくらい、そして魔石こそがヴェルグの存在意義と言ってもいい。」

「つってもよ、港まで往復で一日もかからない距離だぜ?」

「俺はむしろ魔石とはいえ、こんな短い距離にあんな大金払ってなんで悪党なんかを雇っていたんだと思っていたけどな。」


 二人の会話を聞いていた前の兵士からもそんな声が聞こえてくると、左側の兵士は諦めたようにため息を吐く。


「ホントそれだよ、ここら一帯に魔石によってくる魔物はいねえし、この辺りにビビアン様の紋章の入った荷車を襲うような馬鹿はいねえぜ、適当な下級兵士に運ばせればいいんだよこんなもん。」

「だがな――」

「……待て。」


 さっきまで一緒に愚痴を言っていた前の兵士が突如、馬車を止め真面目な声色で指示を出すと、異変を察した後方の兵士二人ははすぐ動きを止めて緩い雰囲気から一転して周囲を警戒する。

 前の兵士が何を見つけたのか確認するため後方二人も前進して前を見る、するとそこにはこの馬車を遮るように男が三人立っていた。

 先頭に立っている男は鞘から剥き出しの剣を隠すことなく堂々と肩に乗せ、まるで吟味する様にこちらに視線を向ける。

 そしてその後ろには体型が正反対の男が二人、前に立つ男に何やら言いながらオロオロしている。


「へえ、なかなかいいじゃねえか。」


 男は後ろの二人を無視してこちらに近づいてくる。

 三人の兵士はすぐさま武器を抜き戦闘態勢に入った。


「何者だ貴様は⁉」

「へへ、馬車を襲う馬鹿の登場よ。」


 男はそんなことを呟きうっすら笑みを浮かべたかと思うと、視界から消える。

 そして次の瞬間には目の前に剣が振り下ろされていた。


 ――


「……てことがあったんすよ!」

「んだんだ!」


 アルビンと一緒に襲撃に行ったベニー兄弟がその時の状況を伝えようと必死に語る。

 だが話を聞く限り特に問題は見当たらない。


「そうか。」

「そ、そうか、じゃないですよ!あんなことされたら作戦も奇襲もありゃしませんよ!何のために俺たちが徹夜で時間や襲撃地点やら作戦を考えていたのか――」


 なるほど、そういう事か。

 どうやら二人は襲撃の計画を成功させるため念入りに計画を立てていたようだが、アルビンが真正面から突っ込んだことで台無しになったことが不満だったようだ。

 

 まあはっきり言えばこいつらは魔石の運搬要員で選んだから別に襲撃参戦する必要はなかったんだが。

 だが出世欲のあるやつは嫌いじゃない、功績を立てようと努力した本人たちの頑張りは評価してやるとしよう。


「ったく、うるせえな。作戦通り全員殺したんだから別にいいだろう?」


 そして思い通りに動いたはずのアルビンはアルビンでなにやら不満そうな顔をしている。


「その割にはお前も随分不満そうな顔してるじゃねえか」

「こ、こいつ、護衛の数が少なかったって嘆いてたんすよ。」

「んだんだ!」


 まあ、確かに護衛三人は少なかったかもしれないが、それでも相手は精鋭の兵士だったという話なんだがな。

 目的が兵士を殺るだけならまだしも、あくまで目的は魔石を強奪だ。

 あまり時間をかけて増援を呼ばれるよりはいいと護衛の人数を減らす様に手配しておいたんだがアルビンにはそれは余計なお世話だったようだ。


「……まあいい。それでブツの方は?」


 そう尋ねるとベニー兄弟はあらかじめ貸していたマジックバックを腰から取り出し机の上で逆さにすると袋から握り飯程度の大きさの石ころがいくつか落ちてくる。


「これが魔石か」

「あ、残りは言われた通り森の中に隠してありますよ。」


 俺は置かれた魔石を一つ手を取る、確かに俺が十年間掘っていた鉱石だ、光に照らしてみても反射する気配もない、俺にはただの石ころにしか見えないが他の奴らは魔石を見るや顔が険しくなっている。


「俺には普通の石にしか見えねえが、お前らは違うのか?」

「は、はい。ア、アニキはわからないみたいですが、石が置かれた瞬間になんだか部屋が息苦しく感じるっす。」

「本来は魔石を扱う際はそれ専用の防具が必要なんじゃ、特に屋内ではな。」

「ねえ、確認が終わったのならとっとと戻してくれる?このままじゃ部屋中がマナの密度に満たされて全員毒されてしまうわ。」


 俺にはわからないが魔石はいわばマナの塊のようなもので濃度が高く敏感な奴には毒にもなりえるらしい。

 特にパラマ達エルフは顔色も悪くなってきたから袋に戻すとしよう。

 しかし、これはこれで無能の俺には使い勝手がよさそうだ。


「ウラッグ、この魔石で魔法武器は作れるか?」

「無理じゃ、魔石を加工するにはそれ相応のハンマーとさっきもいった防護服が必要じゃ、防護服は兵士の鎧を使えば何とかなるじゃろうが、ハンマーはどうしようもない。わしの家に行けばあるが取りに行くのはまだ無理じゃろう。」


 ウラッグが連行されてからまだ数週間だからな、恐らく家は兵士が見張っているだろう。もう少し時間を空けたほうがいいな。


「よし、とりあえず作戦は成功だ、三人ともご苦労だったな。二人はもう休んでおけ、そしてアルビンには悪いがまた働いてもらうことになる。」

「へへ、任せとけ。」


 不完全燃焼だったアルビンが意気込むが次は恐らく戦闘にはならないだろう。


「あとマーカス。お前もついてこい。」

「へ?アッシっすか?」


 意表を突かれたマーカスは自分を指さし聞き返すと俺は大きく頷く。


「ああ、ただお前はあくまで表の人間だから顔が知られないよう髪色を変えて仮面を被ってもらう。」

「……あのー、一体どこに行くつもりなんスか?」

「五大盗賊ギルド、『闇越後』のところだ。」



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