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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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事後報告

 闇オークション襲撃の事件は世間では公にされてはいないものの、貴族達の間では大きな騒ぎとなっていた。

 名前こそ伏せられているが、名だたる貴族が参加していたイベントが襲撃されるなど前代未聞で、死者は出ていないものの多数の怪我人を出していた。

 主犯を含めた奴隷はいくつかの金品を持って逃走し、捕まっていないことから主催者であるブリットに全責任が追及され、更にここぞといわんばかりのタイミングでブリットに、隣町の子供誘拐事件及びコレア・カルタス伯爵殺害の容疑がかけられていた。

 

 前回の時は()()()詳細にされなかった調査もしっかり行われた結果、コレア・カルタスの殺害と子供誘拐事件にもかかわっていることが認められると、国はそれだけを公にしブリットは逮捕されることとなった。


――


「……とまあ、話はこんな感じだ。」


 レーグニックが事の顛末を報告しにやってきたのは、あの一件から一週間たった後のことだった。


「自首してきた奴隷商人のグランデルと、賊に攫われた村娘の証言をもとにマリスが国に報告、調査されると公にできない闇オークションの罪も含め余罪が多数出ることとなった、そしてこのことにより、コレア・カルタスの生前の容疑は晴れ、ブリットが治めていたラスタはマリスの管理下に置かれることになった。」

「ブリットはどうなってる?」

「現在王都の牢獄で裁判待ちだ。裏オークションはともかく、まあ自分より上の貴族を殺害したってのが大きくてな、極刑は免れないだろう。」

「そうか。」


 まあ、仮に死刑でなくとも死は免れないだろうがな。

 そこまで深くはないがブリットはノイマンと繋がっている、些細なことでも口を割られる前にノイマンとしては塞ぎたいだろうしな。

 

「これでブリットは恐らく処刑、だが例の事件は公表されないのでお前が罪に問われることはない。そしてマリスの望み通りコレアの容疑も無事晴らした。お前からしたら完璧なシナリオなんじゃないか?」


 そう言うと、レーグニックはいつものように独特の笑い声をあげる。


「完璧じゃねえよ、本来ならもっと簡単なはずだったんだからな。」


 元々の予定では、罪をでっちあげて捕まえるだけでの予定だったのがノイマンなんて大物がバックについていたことでこんな大掛かりになったんだ。

 でなきゃ体張ってまで動かねえよ。


「だがまあ、それが悪いほうだけではなかったがな。」


 脱出後、遠くから連れてこられたエルフたちは故郷に帰るすべを持たないため、現在この場所に俺たちと一緒に隠れている。

 これからどうするかは決めてないようだが、故郷に帰るのは難しいだろう。

 上手くいけば、全員取り込めるかもしれない。


「そうか……で、これからどうするつもりだ?」

「とりあえずここは出る、もうこの町に用はないからな。」

「場所は決まっているのか?」

「ああ、拠点はヴェルグに移す。」

「へえ、ヴェルグか。」


 その名前を聞いてレーグニックが関心を見せる。


「あそこはノイマンが魔石島を持つためだけに手に入れた場所なだけあって、街自体に本人はあまり関心を持っていないからな。管理を任されているノイマンの血縁者が好き放題にやっていると聞く。なかなか面白いところに目を付けたな。」

「あそこには商人として旅をしていた時に何度か訪れたことがあるから状態は把握している。

 それに伝もあるからな。そこで資金集め及び勢力拡大を図っていく。」

「ケハハ、そうか。ならまた落ち着いたら連絡をくれ、お前にはもっと色々な仕事を任せたいからな」


 そう言い残したレーグニックは、テーブルに金の入った袋を置いて立ち上がると、そのまま地下から出て行った。

 俺は袋の中を確認すると、金庫代わりに使っているブリットが持っていた宝箱を開け、袋を逆さにして金を中に落とす。

 箱には今まで貯めこんでいた金貨と、オークションで盗んだ金品、ざっと二百万分が蓄えられている。


 定期的に使っているため大して貯まっていないが、それはこれからだな。


 ……さて、じゃああっちも待たせているだろうし、そろそろ準備を進めるか。


――


 教会の地下から出るとレーグニックは一つ息を吐いた。

 そして青が広がる空を見上げながら、レーグニックはあの事件での光景を思い出す。


 それは目を疑うような出来事であった。

 カルタスとブリットが雇った盗賊『黒き狼』との戦いは自分の召喚したスケルトンの活躍により拮抗していたが、その中でもひと際目立っていたのが黒き狼のリーダーであるデグロとカルタス側についている剣士との戦いだった。

 デグロはやはり名のある賊のリーダーなだけあって強かったが剣士の方も無名だが負けていなかった。

 マリスの兵士として戦っているが、恐らくだがこの剣士はティアマット部下なのだろう。


 荒々しくまるで獣のような男だが、実力はデグロと互角。

 いい剣士を見つけてきたものだと感心した。


 ……だが驚くのはここからだった。

 エルフたちが固まる場所に見覚えのある明るい髪色の男が手を上げたのが見えた。

 いったい何の合図かはわからなかったが、しかしそれを見た剣士は大きくため息を吐いた。


「残念、楽しかったが時間切れだ。」

 「あ?――」


 剣士は残念そうにそう言うと、その言葉の意味を尋ねようとしたデグロの首をあっさりと切り落としていた。

 デグロと剣士は互角ではなかった。

 恐らく、この剣士はただ戦っていただけだ。

 殺そうと思えば簡単に殺せたのだろうが、時間稼ぎも含めて遊び感覚で戦っていたのであろう。

 

 その後、デグロが死んだことにより賊たちはすぐに剣を置き戦いは収拾した。


 ――あれほどの剣士、いったいどこで見付けたのやら


 恐らくSランク冒険者と渡り合える実力はあるだろう。

 だが問題はそれだけではない、あれほどの男が素直に従っているのも驚きだ。


 そして今現在あの男のもとにはエルフやモンスターまでもが集まりつつある。

 レーグニックはそれを偶然とは考えていない、あれはティアマットという男が持つカリスマによって集められたものだろう。

 そしてこれからも奴の周りにはそういう奴らが集まってくるはずだ。

 それは魔法やスキルではないが、一つの能力ともいえよう。


――あいつは思っていた以上にやべえかもしれないなあ。


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