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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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始まり②

オークションは始まってから時間が経つにつれ少しずつ熱を上げていた。


 病気のようにじわじわと人の体を蝕む毒に、とある貴族が家宝としている魔道具など、どれも普通のオークションでは手に入らないものばかりで一つ一つの落札価格も普通では考えられない値段に跳ね上がる。


 そして、問題が起きたのは、出品の品が物から奴隷へと移った時であった。


「では次に本日の一つ目の目玉商品となります」


 司会が意気揚々にそう言うと会場が少しざわつく。

 そんな振りでステージに現れたのは、酷く汚れた服を着た一人の小さな少年だった。

 確かにその綺麗な緋色の髪と吸い込まれそうな紅色の瞳は魅力的ではあったが、このオークションで目玉を張れる物ではない。

 他国の王族か、それとも特別なスキルでも持っているのか……

事前に情報もなかったので客たちが疑問に感じてる中、司会が用意されていた紙を見ながらその奴隷について紹介をする。


「えー、この奴隷は実はいうと奴隷ではありません。奴隷の背中を使って作られた芸術作品なのです。」


 そう言った司会が奴隷から布のような服をはぎ取り、奴隷の背中を客席に見せる。

 するとその瞬間、会場から小さなどよめきが起こる。

 その背中に描かれていたのは独特の作風で描かれた魔物の絵で、絵画を趣味に持つ貴族はあっという間にその絵に心を奪われていた。


「この絵は東方の国の有名絵師が奴隷の体を使って描いたドラゴンの絵画で、人間の背中に描いたことによって、体が動く事によってこの絵がまるで生きているように見える非常に珍しい発想の絵画です。世界に一つとないと言われているこの商品を、一千万ギルから始めさせていただきます。」


 司会の言葉にとともに激しい競りが始まる。


「三千万!」

「三千五百万!」

「四千万!」


 競りの価格は止まることなく上がっていく。


「六千万!」

「クッ、ならば八千万だ!」


 そこまで競りあがると勢いよく上がっていた言葉がピタリと止まる。


「八千万、八千万ギルが出ました、ほかに誰かいませんか?」

「クソ、これ以上は流石に……」


 客から口惜しそうな声も漏れてくるが次の声は上がらない。

 この金額で決まりか、そう思われたところでどこからともなく横やりの声が入る。


「八千万か……ずいぶん安く見られたもんだな。」

「なに?」


 その言葉を発したのは、何を隠そう、その絵を背中に刻んだ奴隷自身だった。


「この入れ墨には俺の魂、誇り、すべてが刻まれている、そしてこれからも考えればその金額はずいぶんと安い。」


 奴隷の言葉に貴族たちが顔をしかめながらざわつきを見せる。

 そして、場を仕切っていた司会はその状況の異変に気付く。


「……待て、なぜ喋れる?奴隷は確か全員口をふさがれていたはずじゃ――」


 その指摘に奴隷はフッと小さく笑うと、更に手首についた拘束具まで外し、どこからともなく小さな木箱を取り出すと、そのまま客達が固まる会場に向かって高く放り投げた。

 全員が自然とその投げ捨てられた木箱に注目する。

 小箱はそのまま誰にも拾われることなく地面に落ちると、大きな爆発音と共に破裂した。


「さあ、ここからが始まりだ、ゲストも多いが構わねえ、派手に盛り上がろうぜ!」


――


「な、何の騒ぎだ。」


 塀の中から大きな爆発音が聞こえると全員が一斉にそちらに目を向ける。

 すると中からすぐに一人の兵士が慌ててブリッツのもとにやってくる。


「ブリット様、大変です!奴隷のエルフたちが突如暴れだし、会場に向かって魔法を放ち始めました。」

「なんだと⁉」


 その一言により平静を装ってきたブリットも驚きを隠せず目を見開く。


「馬鹿な、奴らは手と口を拘束しているはず、それに奴隷契約書あるんだ無闇に暴れられるはずがないだろう!」

「理由はわかりませんが、全員拘束具は外れています。それより今、魔法により会場は混乱に陥っています」

「す、すぐに貴族たち避難させろ!私もすぐに向かう!」


 そう指示を出し自分も急いで移動しようとしたところで、ブリットは我に返る。


「ほう、今奴隷とか聞こえましたが。」


 話を聞いていた聖騎士団の男、レーグニックがニヤニヤと笑いながら尋ねてくる。


「い、いえ、どうやらパーティー会場に賊が入り込んだみたいで。」

「ケハハ、そうですか、それは聖騎士団としてでは見過ごすわけにはいきません。加勢させてもらいますよ」

「そ、それは――」


 ブリットがすぐに断ろうとするが、断る理由が出てこず、言葉を詰まらせる。

 

「私たちもお手伝いします。」

「ケハハ、それはありがたい、では行こうか。」

「ま、待て!まだ承諾した覚えは――」


 ブリットの言葉を無視してマリス達が塀の中へと入っていくと、ブリットも跡を追う様に中に入った。


――


 塀の中に戻ると、そこは混乱で満ち溢れていた。


「おい、なにをもたもたしている。早く行け!」

「どけ!私を誰だと思っている!将軍オズマの親戚に当たる人間だぞ道を開けろ!」

「それを言ったら私は宰相ドメインの兄――」


 ステージの上では解放されたエルフたちが横一列に並び所かまわず魔法を放ち、それから逃れようと多くの貴族たちが唯一の出入り口であるこの場へ押し寄せてきていた。

 ブリットがステージ付近で狼狽えている兵士たちにの元へ向かう。


「お前たち何をしている⁉︎さっさとあのエルフたちをどうにかしろ!」

「そ、そう言われましてもこの魔法ではなかなか近づくことが――」

「向こうは武装のない非力なエルフだろ?ならば強引に近接に持ち込めばどうってことないはずだ!」

「それが、エルフの前を魔物たちが守るように固まっていて」

「何を馬鹿な⁉︎奴らにテイマーなどいない、ましてやここにいる者たちは無関係なものばかりだぞ。」


 そう言いながらもブリットは状況を確認する、確かに兵士たちのいう通りエルフたちを守るように直ぐ側には商品として捕らえていたウルフ、ゴブリン、オーク、スライムといった魔物たちが控えておりその中心にはミノタウロスがいた。


『みんな、あの人間たちをエルフたちに近づけさせないように』

『本来人ニ手ヲ貸スナドアリエヌハナシダガ……』

『敵ガ同ジダトイウナラバ仕方ガナイ』

『ドウホウヲコロサレタウラミ、カナラズヤハタサン』


 ミノタウロスが統率を取っているようにも見えるが、実際そんなことがあり得るとは思えない。

 このモンスターはあくまで別々の場所から集められたモンスターだ、統率などとれるわけがない。


「……とにかく何でもいいから奴らを止めろ、向こうたかだが十人程度だ、こっちは百人以上いる、どうにか数で圧倒しろ。」

「は、はい。」


――クソ、なぜこんなことに?


 マリスたちが来たタイミングでのこの騒ぎ、完全に仕組まれたものだろう。

 だが、本当にマリスの手によるものだろうか?とてもそうは思えない。


――……逆か


 マリスが仕組んだのではなく、この騒ぎを起こした奴がマリスに入れ知恵をし、利用した、そうすれば今までのマリスの行動にも理由が付く。


「おや、パーティーにしてはずいぶんおかしな状況ですなあ」


 振り返ればレーグニックたちが揃って集まっている。


 ――やはりこうなったか。


「ふん、ここまで来たら隠す必要もあるまい。お前たち、仕事だ!」


 ブリットが叫ぶと、周囲から兵士たちとは別の武装をした集団が集まり、レーグニックたちを囲む。


「ケハハ、賊がいるってのは本当だったか。」

「南部地方を荒らしまわっている盗賊ギルド『黒き狼』だ、聖騎士団なら貴様も名前くらい聞いたことがあるだろ?さあお前たち、こいつらを生きて返すな。」

「ああ、了解だ。もらった分はしっかり働いてやるよ。」


 黒き狼のリーダーである巨漢の男の頼もしい返事を聞くと、ブリットはその場を黒き狼たちに任せ、複数の兵士を率いてその場を離れる。


 ――元凶は恐らく奴隷の中にいる。


 もし目的があるとすれば、それはこのオークションのために用意したアイテムだろう。

 そう考えると、ブリットは出品物が保管されているテントへと向かった。

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― 新着の感想 ―
最初の方でも見られる状況ですが、敵役の名前が「ブリット」と「ブリッツ」の二種類混同して使われていますよ。 最初は「ブリッツ」中心で、中ほどは「ブリット」でほぼ統一されていますね。 どちらなんでしょう?
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