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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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潜入

 街を出てから目的地まで馬車は一度も止まることなく進み続けた。

 馬車が止まったのは出発してからおよそ数時間後、暗闇に覆われていた外に日の出が昇りはじめた頃だった。

 前の方から兵士たちの会話が聞こえ、その流れで兵士が荷台(こちら)の方に来て俺たちに降りるよう促してくると、その言葉に従い馬車を降りる。


 外に出て目に映ったのは行く手を阻むように立つ巨大な柵、そしてそこの唯一の入り口ともいえるところには二人の兵士が門兵として立っている。

 俺たちを運んできた兵士が俺とエルフたちの拘束具に縄をつけると、そのまま中へ連行する。


 巨大な柵の内側に入るとそこには小さな村があった。いや、正確に言えば村だった場所だ。

 あちらこちらに家は建っているが、周りにある田畑はもう何年も使われていないのか、ひどく荒れており、人が住んでいる場所とは思えない。

 そして家が並ぶ場所から少し離れたところには何もない平地にステージの様なものを準備する奴隷たちの姿が見られ、その後ろには場違いな巨大なテントが設置されていた。


 この周りには厳重な警備がしかれている。

 まだ明け方ながらせっせと働く奴隷たちを監視するブリットの兵士の他に、この日のために雇われたと思われる用心棒らしき奴らも待機している。

 恐らく雇われた冒険者なんだろうが、中には裏の人間もいるようで俺と同じく国際指名手配者の顔ぶれもあった。

 俺たちはその警備の中を大人しく兵士に連れられるがままに歩き、そして奥のテントの中へと入っていく。

 

 テントの中に入るとそこにはたくさんの檻があり、その中にはオークションの出品するために捕獲されたとみられるモンスターが既に入れられていた。


「さあ、ここがお前たちの場所だ。」


 そう言って俺たちは兵士にまとめて一つの檻の中にぶち込まれる。


「……時間まで精々大人しくしてろ。しかし、相変わらず五月蠅くて獣臭い場所だ。」


 モンスターの鳴き声や咆哮で溢れるこの場所に兵士は不快そうな表情を見せると。檻のカギをしっかり占めたのを確認してその場を後にした。


 ……よし


 それから少し様子見し、兵士が戻ってこないのを確認すると、俺は轡と拘束具を再び外しそして通信機を起動させた。


「俺だ、聞こえるか?」

『……はい、少し周りがうるさい様ですが、大丈夫です。』


 通信機に呼びかけると準備していたのかすぐにマリスの声が返ってくる。


「首尾はどうだ?」

『問題ありません、すべて計画通りです。』

「そうか。」


 とりあえず、俺はここまでの経緯と今いる場所の特徴をマリスに伝える。


『なるほど、村の跡地ですか。そこは恐らくケチスの村ですね。数年前に襲ってきた魔物によって壊滅している村です。ラスタの町を出た方向と馬車でかかった移動時間を考えてもそこで間違いないかと。』

「そうか、さっき見た準備の様子だと恐らくオークションが始まるのは夕刻頃だと思うが、間に合うか?」

『ええ、大丈夫です。指示通りあらかじめラスタの周辺で待機していましたので、今から行けば十分間に合うかと。』

「そうか。なら早速向かってくれ、また何かあれば連絡する。」

『了解しました。』


 その返事を聞くと通信機を切る。

 ……とりあえず、こちらは問題はなさそうだな。


 さて、あとはオークションが始まるのを待つだけだが……それだけだとつまらんな。

 そう考えると俺は一緒につかまっているエルフたちの方を見る、連れてこられたエルフは十二人か、向こうも俺が気になったのかこちらに注目していた。

 

 「ふむ」


  俺はアイテムバックから紙とペンを取り出すと、馬車で話しかけた魔力をくれたエルフに近づく。


『文字は読めるか?』


 そう紙に書いて見せるとエルフはこくりと頷く。

 俺はそれを確認すると続けて書く。


『オークションが始まり次第、俺の仲間がここを襲う手はずになっている。邪魔さえしなければじっとしてて構わないが、お前たちも乗るか?』


 エルフは少し考えた後、手の素振りで紙とペンを要求する。

 そして渡した紙に書き込むと同じように見せてくる。


『あなたは、何者ですか?』


 何者……か

 恐らく善悪を見極めようとしているのだろう。


『ここの奴らの敵だ』


 そう返すと判断に迷ったのかエルフは少し表情を曇らせる。

 エルフはさらに紙を要求しそれを使って他のエルフたちと相談し始める、やり取りが見えないように少し距離を取って様子を見守っていると相談が終わったのか、エルフがこちらにやってくる。

 

『わかりました。我々にできることがあるなら協力します、しかし私たちは首輪に縛られていますので、できることは限られていますが』


 奴隷の首輪か。

 反抗すれば、首に巻かれたこの首輪が締まるようになっている奴隷を管理するアイテムだったな。これがあるからこそ、奴らも俺たちは逃げないと考えているのだろう。

 手につけられた拘束具も猿轡も脱走防止というよりは自殺防止のためのものだろう。

 逆にいえばこれさえなければ大した拘束ではないし、あるから絶対に逃げようとしないという油断もある。

 これを外すにはこの首輪とセットになっている奴隷契約書を破棄しなければならない。

 ちなみに俺の首輪と契約書の紙はこちらで用意した偽装の物を渡している。


「なら契約書を取ってきてやる。」


 そう書いて見せると、俺はその場でアイテムバックから以前オーダーメイドで作ったピッキング道具を取り出し檻の隙間から手を出してカギを外す。

 外れた時にカチャリといった音は聞こえたが魔物の鳴き声が響くこの場所では多少の音は外で見張りをしている兵士には聞こえていなかったようだ。


 俺は檻を開け、抜け出すとテント内を探索する。

 恐らくここにオークションに出品するものはすべて集められているはず、奴隷契約書もここにあるだろう。

 檻に入ってるとはいえ、興奮するモンスターの群れの中を進むのはあまりいいものではないのでとっとと終わらせたいところだ。

 テントの中を探りながら進んでいくと奥の方に厳重に鎖を巻かれ鍵をつけられている巨大な宝箱を見つける。


「鍵は……よし、あまり難しい構造じゃないな。」


 鎖自体は頑丈で壊すのは難しそうだが、カギは檻の構造と一緒で難なくあけられた。


 鍵を開けると次に中身を確認する。

 箱の中には、重ねられた紙とその横に装飾の綺麗な小箱が入っており、その箱の中にはアイテムや宝石といった代物が入っていた。


 とりあえずもらえるものはもらっておこうと奴隷契約書の他にも箱の中身を根こそぎバックに詰める。

 そして奴隷契約書は代わりに適当な紙を置いておく。これでちょっとしたカモフラージュにはなるだろう。

 必要なものを取り出し再びカギをかける。

 さて、じゃあバレる前にもう一度檻の中へ……と考えていたが少々遅かったようだ。

 後ろを振り向けば見張りの兵士が様子を見に来ていた。


「誰かそこにいるのか?」


 モンスター達の声で兵士が来ていることに気付くのが遅れたか。

 幸いテントの中は薄暗く兵士はまだ気づいていない、だがこのままでは時間の問題だ。

 どうする?どこか身をひそめる場所か?それとも一人くらい消して……


『こっちだよ。』


 俺が何か手はないかと周囲を見回しているとどこからか声が聞こえる、誰の声はわからないがとりあえず言葉の言う通りに声の方へ行きその場にあった物陰に隠れる。


「……気のせいか」


 兵士は軽く見まわした後、宝箱のカギを確認して俺に気づくことなく戻って行った。


「……ふぅ」


 一度息を吐いたあと、改めて自分の状況を確認する。

 慌てて入ったから気づかなかったが俺が入った場所は人間程度の大きさならすり抜けられるほど大きな 檻の中で、俺が隠れていたのその檻に入っていた巨大な牛の頭をもつモンスターだった。

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