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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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計画と失踪

 マリスが返答をしにティアを元を訪ねていた頃、カルタス伯爵邸の執務室ではマリスの叔父であるガバスは一人の男連絡を取っていた。


『首尾はどうですかな?ガバス殿』

「ああ、上々だよブリッツ殿。貴殿の思惑通り今、カルタス領のあちこちで新しく領主についたマリスに対し不満が上がっている。」


 兄であるコレアが生前仕事に使っていた椅子に我が物顔で座りながら、通信の魔道具から聞こえてくる声にガバスは上機嫌に答える。


『フフフ、それはそうでしょう。現在カルタス領内にあるあちこちの村が賊たちの襲撃を受けているにも拘わらず、新しい領主様は対策を打つどころかそれを無視して税を上げているのですから。そしてその話はリンドンの街の住民にもしっかりと伝わっています、いくら前領主の娘と言っても領民達の不満が爆発するのも時間の問題でしょうな。』


 通信機越しで表情こそ見えないが、その声からブリッツがにやけているのがわかり、釣られるようにガバスも小さく笑う。


「ククク、改めて聞くと酷い領主だな。」

『ええ、私のところとは大違いです。だからこそ貴方が新たな領主に成り代わって治めなければなりません。』

「ハッハッハ、その通りだな!そもそもあんな小娘が叔父であるワシを差し置いて領主になる事すらおかしかったのだ」

『はい、全くその通りでございます。』


 誰もいない執務室に笑い声が響き渡る、もちろんこれは全てこの二人が企てたものだった。

 ブリッツは自分の兵士達を賊に装いカルタス領の村を襲わせ、そしてガバスの方はマリスの名を使って税を上げていた。勿論全てはマリスの領主としての評価を下げるため。

 そしてこのことをマリスは知らないでいる。


『しかし、マリス殿も憐れですな、まさか、屋敷の中にすら味方がいないとは。』

「ああ、厄介だったモンベルはコレアと共に始末したし、コレアやマリスを慕っていた一部の兵士や使用人たちにも()()()()()。今この屋敷にいるのは状況を見計らってこちら側についた利口な者達だけだからな。」


 ただ、全員が初めからそうだったわけではない。

 中にはマリスを慕い、ガバス抵抗みせていた者もいたが、上司であるモンベルが死んだことによる混乱と、カルタス親子に忠義を誓っていた者達の「帰郷」と言う名の失踪により恐怖し屈した使用人たちもいた。

 そして、ガバスはそう言ったその者達も受け入れた。親しかった相手からの裏切りにより、更なる絶望をマリスに与えられるからだ。


『後はタイミングを見計らって叔父であるガバス殿が立ち上がりマリス殿を当主から引きずりおろし、伯爵を襲名すれば万事解決ですな。』

「うむ、勿論、そうなったあかつきには貴殿にも色々お礼はさせてもらおうぞ。」

『いえいえ、お気になさらずにこれも隣接する領主同士。ただ、これからもお互い良い関係でいられることを願うばかりです。』

 

 豪快に笑うガバスと静かにけらけらと笑うブリッツ、お互いが通信越しに対極的な笑い声をあげる。


「ところで、一つ気になった事があるんだが……」

『はて、なんでしょうか?』

「その……グランデンの事なのだが……」


 先程まで豪快に笑っていたガバスが少しトーンを落として言いづらそうに話を切りだす。


『グランデンがどうかしましたか?』

「いや、大したことじゃないのだが、せっかく助けたのに態々殺す必要があるのかと思ってな。」


 グランデンはリンドンに住む町一番の富豪商人でありここ最近世間を賑わせていた、子供誘拐事件の首謀者であった。

 そしてその裏にもこの二人と繋がっており、攫った子供たちはこのブリッツが定期的に開催する違法奴隷のオークションの商品となっていた。


『ああ、そう言う事ですか。勿論ありますよ、あの者は一度仕事を失敗していますからね、あの時は偶々運よく助けられたからよかったものの、もしあのまま尋問されていたらこちらの事を聖騎士団に知られていたかもしれません。なにせコレア殿は聖騎士団の方とつながりを持っていましたから、我らの上にいる方々にそんなことを知られれば私達もただでは済まなかったでしょう、一度ミスしたものを生かすほど甘くはありませんよ。』


 その言葉は先ほどの飄々とした声とは違って酷く冷たく感じ、ガバスは小さく息を飲んだ。


『本来なら伯爵共々殺せればよかったのですが、それでは伯爵に罪をなすりつけることはできませんでしたから。グランデルにはコレア・カルタスに嵌められた哀れな商人で、商業の旅の道中モンスターに襲われて死んだことになってもらわないと。ああ、ご安心ください、金のある平民など五万といますので代わりなど簡単に用意できますので……それともほかに何か問題でも?』

「い、いや、特に問題はない。」


 ガバスは姿が見えていないにもかかわらず、その問いかけに思わず首を横に振って否定する。


「わかりました、では今後もよろしくお願いしますよ、ガバス・()()()()()()。」


 その言葉を最後に、通信が切れるとガバスは大きく息を吐いた後頭を抱えた。


――そう、グランデンを殺すことに関しては特に問題はない。ただ……


 ここ最近、そのグランデンが見つからないでいた。


――


「どういうことですか⁉︎これは!」


 マリスから手を組むことに対する承諾の返事をもらい、俺はその特典がてらここ一ヶ月間で調べ上げた周囲の村の情報を渡すと、マリスは激怒する。


「こんな話、私は知りません、賊の襲撃?村への増税?そんな情報は知らされてないし、増税も命令した覚えもありません。」


 俺の調べた情報はあまりにも身に覚えのない事ばかりの様でかなり動揺している様だ。

 まあ、普通に考えれば向こうの仕業だろうな。

 どうやら向こうは、コレア・カルタスの死を期にこのまま一気にマリスまでも貶めようとしているのだろう。

 

「どこに行くつもりだ?」


 気が付けばマリスは渡した資料を手に部屋の出口に向かっていた。


「勿論、すぐに屋敷に戻って兵を動かし賊の討伐と増税を取り下げさせます、そしてその件について家の者達に問いただします」

「……やめておけ、これだけのことがあってお前に何一つ伝わらなかったと言うことはもう屋敷に味方はいないと考えた方がいい。」

「そ、そんな⁉では、せめて冒険者に賊の討伐依頼を――」

「それも駄目だ、ギルドの依頼は誰でも見られるようになっている、街中にも恐らく向こうの息のかかった人間はいるだろうし、依頼したところで勝手に取り消されるか虚偽の報告をされるだけだ。」

「しかし、このままでは――」

「兵隊についてはこちらに任せておけ。少し時間はかかるが集めるつもりだ。ただ、少し質は落ちるがな」

「……わかりました、では私はどうすればよろしいのでしょうか?」

「あんたに必要なのはどんなことも受け入れる覚悟をしてもらうことだな、これからあんたには悪役になってもらうからな。」

「それはどういう……いえ、わかりました、私もあなたと組むことを決めた時に覚悟は決めてきましたから。」


 マリスは少し不安を見せながらもこの件をこちらに託し部屋を後にする。

 先程まで響いていた女性の声が聞こえなくなるとこの部屋は酷く静かになり、男の過呼吸のような息遣いが際立って聞こえてくる。

 

 俺はその音の元である壁に立てかけていた袋を開ける。

 そして中に入っている手足を縛り、体中痣だらけの男の顔に付けた袋を外す。


「……と言うわけだ、これから兵隊を数を集めるのに金が要る、資金提供、勿論してくれるよな?」

「ひ、ひいぃ、わ、わかった、なんでも言う事を聞くから、もうやめてくれ!」


 俺が特に脅すことなく普通に尋ねるとこの男、グランデンは快く承諾してくれた。


 

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