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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
三章 組織作り編

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仕事①

「こんなこと、認められません!」


 リンドンの町の領主邸、その屋敷の執務室に若い女性の怒鳴り声が響くと、それと同時に資料が積まれた机の上にドンっと勢いよく両手が叩きつけられる。

 机に座る領主コレア・カルタスは自分の目の前に振り下ろされた手と怒りの形相を浮かべる愛娘を宥める。


「落ち着きなさい、マリス。」

「これがどうして落ち着いていられるのでしょうか!」


 宥める父を一蹴しマリスがギリッと睨む。


「こればっかりはマリスお嬢様に同意ですな」

「モンベル、君もか。」


 そしてそれに対し側に控えていた執事のモンベルも冷静な口調ながらマリスの言葉に同意するとコレアは溜息を吐く。


「お父様はこの事件に尽力を尽くし見事に解決なさったのですよ?なのになぜこんな……」


 マリスが悔しさと怒りに唇を噛み締める。

 コレアはリンドンの領主として、この町周辺で問題となっていた子供誘拐事件を派遣されてきた聖騎士団と共に調査し、そして旅の商人の協力もあって解決へと導いていた。


 子供達を攫っていた賊たちが白状した情報から、町の有力者であり大きな商会を持つ商人、グランデンを首謀者として捕らえて無事事件は解決した……かの様に思われた。


 しかし、グランデンを捕らえてこれから尋問を始めようとしていた矢先、隣の街ラスタの領主であるブリッド子爵から自分の町でも似たような事件が多発しているということで関連性を調べるためにグランデンの身柄の引き渡しを要求してきたのだ。


 貴族界隈では余りいい噂を聞かないブリットからの要求にコレアは少し不審に思ったが、町のためにと言われると断る事が出来ず、仕方なく身柄を引き渡したのだったが、引き渡した数日後、ブリッドはグランデンは濡れ衣だと主張し、庇護するとそれどころかなんとこの事件の首謀者にコレアの名を出してきたのだ。


「聞けば以前からブリッド子爵の所にガバス叔父様が、頻繁に訪れていたと言う話を聞きます。もしかしたらこの事件には二人も関与していた可能性も――」

「だから落ち着きなさいと言っているだろう、身内を理由もなく疑うものではない。」

「ですが――」

「向こうはこちらの言い分を聞いていないし我らも向こうの話を聞いていない、なんにせよ先ずは一度折り入って話さねばならない。」


 そう言うとコレアは後日ブリットと話をするため、モンベルと複数の兵士を率いてラスタへと出発した。

 ……だがその後、コレア達が屋敷に戻ってくる事はなかった。



――



「たくっ、なんで俺があいつのお迎えに……」


 およそ一ヶ月ぶりとなるレーベルの町中をグレイス・レーグニックは耳をほじくりながら不機嫌そうに歩く。

 レーグニックは一ヶ月前までこの町に滞在し、二週間かけて拠点のある王都に帰っていたのだったが、わずか数日で再びレーベルへ戻る事となった。


 原因は前回この町に訪れた際、共に調査に来ていた後輩のアリアをほったらかして帰ってのだが、そのアリアが未だに王都についておらず、連絡を取ってみれば王都とは真逆の方向にある村の魔物退治に勤しんでいるとのことだった。

 その事にアリアの兄である聖騎士団団長のアルバートは、レーグニックに監督不届きを理由にアリアを連れて戻ってくるように命じていたのだ。


「子供じゃねえんだから、態々一緒に帰る必要なんてねーだろ。」

「仕方ニャイニャ、団長はアリアに対して少し過保護なんだニャ」


 レーグニックの隣を歩く、今回の同行者である猫の獣人族のスーが答える。

 そのことに関してはレーグニックもわかっている。


 レーグニックは人として、騎士団の団長としてのアルバートの思想と理念、実力に関しては尊敬してはいるが、その温い性格と妹への溺愛っぷりには少し呆れ気味である。


――ちっ……ま、いいか。どちみちこの町にはいずれ戻ってくる予定だったし、少し早いが例の件であいつとも話をしなきゃなんねえ。


「まあ、それはいいとして、なんで俺たちが町の事件の調査をしなきゃならねえんだ?」


 レーグニックは次に現在行っている最近起きた冒険者殺害の事件の調査に矛先を向ける。

 なんでも今から十日ほど前、この町の冒険者パーティー『アイアンヘッド』のリーダーのゲイル・グロッカスが殺されたという話だ。


「冒険者同士による喧嘩で死人が出るのなんて珍しくないし、そもそもこれはギルドか領主案件だろ?」


 目撃者多数、元々評判も悪い男だったので動機も十分推測できる、前回の誘拐事件と違い態々自分達が調べる必要性もない。

 しかし、スーはレーグニックの問いに対し首を横に振る。


「それがそうでもないんだニャあ、聞いた話によれば今回騒ぎを起こした相手の特徴は例の貴族殺しに似ているって話だったニャ。」

「……は?」


 唐突に出て来たその二つ名にレーグニックは顔を顰める。


「ニャンでもその冒険者を殺したのは赤い髪が特徴的な少年だったって話ニャ」


――あいつ、何やってんだ?


 別人という可能性もあるのだが何故かレーグニックの頭の中では犯人が自分の知る人物と同一人物であることを確定していた。


「一体何で?」

「それを今から調べに行くのニャ」


 そう言うと、レーグニックはスーに連れられ事件の知る人物たちへの聞き込み調査へと向かった。


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