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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
二章 逃亡編

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依頼

「よぉ、帰ってきたか。」


 ロスタルの町から戻って来てから数日後、他の四人が仕事に出かけたのを見計らいレーグニックが拠点を訪ねて来た。


「なかなか帰ってこないから死んだかと思ったぜ、一体どこほっつき歩いてたんだ?」

「ちょいと闇市まで」


 俺は途中の道具袋の中身を整理しながら答える。


「闇市……ああ、ロスタルか。で?欲しいものは見つかったか?」

「あるにはあった、ないのは金だ。」

「ケハハ、金か。」


 そう言うと、レーグニックは相変わらず聖騎士団とは似合わない不気味な笑みを浮かべる。


「で、何の用だ?」

「喜べ、金のないお前に仕事を持ってきた。」


 そう言うと、レーグニックは俺に何かの資料らしき数枚の束になった用紙を渡してくる。


「……これは?」

「ここの隣町のリンドンで今、周囲の村で現在子供が行方不明になるという事件が多発している。お前にはこの件について調べて欲しい。」


 俺は渡された資料に目を通す。内容を見る限り貴族がらみとかではなく、ただの事件に見える。


「……こう言うのはお前らの仕事だろ。」

「ああ、勿論そこの町の領主も行方を追っていて兵士やギルドに調査依頼を出しているが、いまいち掴みきれなくてな、そこで聖騎士団の方でも俺ともう一人が派遣としてきてるんだが、立場上思うように動けなくて中々事が進んでいない、そこでお前の力も借りたい。」


 成程、王都が拠点の聖騎士団(こいつ)がここに来ていたのはそれが理由か。


「俺に『国の犬』(いぬ)の手伝いをしろと?」

「勿論、断ってくれても構わないが金が必要なんだろ?報酬は出すし、なんなら犯人達からなら奪う事だって目を瞑ってやる。」


 ほう、それはなかなか魅力的な提案だ。

 この資料によれば恐らくこの件に関わっているのはグランデンという商人との事だ。

 貴族ではないが、金を持っているのでそれなりに顔の利く男のようで、無闇に詮索できる相手じゃないようだ。


 捕まえれば、貴族じゃないので罰することはできる、ただ問題となっているのは証拠がないというところだろう。

 この商人がリンドンの人気のない場所で怪しい男や、ギルドのブラックリストに載っているような奴らと接触していることはわかっているらしいが、それだけじゃ立証できず、そして肝心の行方不明になっている子供達を見つけることが出来ずにいるらしい。

 

 一度レーグニックが強引な手口でこの商人の家宅捜索も実行したらしいが何も出てこず。

 その事に対し向こうからも激しい抗議を受け、おかげで領主も強くは出られないでいるらしい。


「……なるほどな」

「今回の件でお前に求めるのは二つ、行方不明の子供達の居場所を突き止めることと、グランデンとの関連性を見つけ出すことだ、それさえしてくれればそれ以上は望まない、あとはこっちで片付ける。」

「ちなみにこちらで片付けるのは?」


相手次第ではそう言うこともあるかもしれない。


「まあ、別に構わねえが、ただ殺るならこの男と事件の関連性のわかる物を見つけといてくれ。結局こいつが白と判断されれば、お前はただの犯罪者だからな。」

「……いいだろう。」


 元々犯罪者の俺としてはどっちでもいい事だが……


 俺は道具袋の整理を終えると、取り出した薬師ギルドへの売却用の薬草類を別の袋に入れなおす。


「とりあえず、準備もあるし動くのは明日以降になるがいいか?」

「ああ、それで構わねえ。」


 レーグニックは用が済んだのか話を終えると外へと歩き出す。

 だが、ドアノブに手を掛けようとした所で立ち止まりふとこちらを振り返る。


「ああ、それと一つ。これは俺からの忠告だが、お前……随分強気でいるみたいだが少しは自重と言うものも覚えた方がいい。こう言う輩には用心棒としてそれなりの実力者をそばに置いてることが多い。貴族の私兵を皆殺しにしたほどの男だ、お前が弱いとは思っちゃいねえが。世の中にはヤバい奴らは腐るほどいるせいぜい気をつけるといい。」


 そう言い残すとレーグニックは家から出て行った。


 ……なかなか耳が痛い話だな、実際今まで上手く行き過ぎていたというの自覚はある。

 島の脱走の時も、ブーゼルの兵士を殺った時も相手の油断とその場の環境に助けられたことも事実だからな。

向こうが油断してなかったら、広い場所で戦っていたら、(たま)取られてたのはは俺の方かもしれない。


 だがそれも踏まえて戦ってきたというのもある。

 特に無能という肩書きだけで相手は油断してくれる節があるからな、だが、それもいつまで続くかわからない。

 相手が油断もしない格上の時、一人で捌き切らないほどの大人数の時、周りの環境が一切利用できないの時、一人じゃどうしようもない状況なんて幾らでもある


「そろそろあの事も考えないと行けねぇな……。」


――


 そして翌日、準備を終えた俺は早速隣町、リンドンへと向かった。

 距離は歩いて三日ほどだったが進む道は山道ではなく整った街道で場所もあらかじめ把握していたこともあり、体感としてはそこまで遠くは感じなかった。


 町に着くと俺は早速情報収集を始める。

と言ってもこの街は既にレーグニックたちが隅々まで調べているのでほとんど新しい情報はなく、あくまで自分で調べた情報とレーグニックの情報に違いがないか比較する形になっていた。

そして大した違いはなく、他に怪しい場所も見当たらなかった。


となると……


俺は次に町の外に目を向ける。

リンドンの周囲にはいくつかの村や森があり、そこいら一帯で隠れやすい場所がないか確認する

まあ、そこらも殆ど調べられている、が、少し気になる場所を発見した。


「ここは、教会か……」


リンデンと近くの村の間には小さな教会があるようだ。

まあ、別にそれ自体は珍しいことでもない。

旅する者の多いこの世界では旅人の休憩所として、よく町外れに宿や教会が建っている。


そして勿論そこも聖騎士団達も調査済みで特に怪しい所も見当たらないと言う事らしいが、どうも少し気になる。


 何せ神聖なる教会の中を善良な町の領主や聖騎士団と言った人間が隈なく調べられたかと言われたら怪しい所だ。


もしかしたら、調査できていない場所がある可能性もある。


「ふむ……」


とりあえず、行ってみるか

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