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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
四章 学園編

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偽物と本物②

 町を出た『晴天の剣』一行は、村人に渡された地図を頼りに目的の村へ向かっていた。

『晴天の剣』のパーテイー編成は、前衛がリーダーである剣士ライアンと、頑丈な黒い鎧に身を包んだ重騎士ダイナ、そして後衛に魔術師のミルと弓使いのリナの男二人、女二人の四人パーティーである。


 四人はいつどこで賊に出くわしても良い様に常に隊列を崩さず、警戒しながら村へ向かっていた。

 だが途中何度かモンスターに遭遇することはあっても、それ以外に特に問題はなく、四人は順調に道のりを進んでいた。

 しかし、町を出てから二日目の道中、ライアン達は賊らしき者達に襲われている馬車に遭遇する。


「……あれは、例の賊か?」


 ライアンが遠目から馬車を囲んでいる賊らしき男達を見る。

 数は五人、特に目立った武装はしておらず見る限り普通の賊にしか見えない。


「村人の地図によれば根城にしている村はこの辺りらしいし、その可能性は十分あり得る話わ。」

「よし、なら例の賊のつもりで行くぞ!」


 ライアンが号令をかけると、四人はすぐさま戦闘態勢に入る。

 まず前衛のライアンとダイナが馬車に気を取られてる賊達に突っ込み奇襲をかける。鎧に身を包んだダイナが背後から賊を体当たりで吹き飛ばすと、続いてライアンが斬りつける。

 そしてすかさず後衛の女性魔法使いのミルが風の刃を放つと、更にリナがその風に乗せて弓矢を放つ。

 その過剰とも言える四人の容赦ない連携攻撃に、賊達はなすすべもなく全滅した。


「……なんか、思ったよりあっさりと終わったわね。もしかして、例の賊とは無関係?」

「うーん、これなら一人は生かして情報を吐かせるべきだったかしら?」

「いや、相手の実力がわからない以上、そんな余裕は見せられなかったので仕方がない。それより大丈夫ですか?」


 ライアンは襲われていた二人の男性に話しかける。


「え?はい、ありがとうございます。お陰で助かりました。」


 襲われていたのはフード被った若い青年と、頬に大きな傷を作っていた不愛想な男二人で、話によれば二人はどうやら商人で、仕入れた物を売るために王都へ向かう途中賊に襲われたらしい。

 ライアン達は、少しでも情報を得ようと二人に経緯を説明して賊の話を聞く。


「……成程、そんなに危険な賊だったんですか」

「その割にはあいつらすげえ雑魚だったじゃねえか。」

「おいアニキ、助けてもらったんだから余計なこと言うな。」


 フードを被った青年が兄と呼んだ男を窘めるとライアンは苦笑する。

 実際すんなり倒せてしまったのでそう思われてもおかしくでもない。


「それでなんですが、この賊に関して何か知っていませんか?」

「そうですね……いきなり襲われたので会話も碌にしていなかったので分かりませんが……」


 青年はそう話ながらしゃがんで賊の死体をジッと見る。


「……この男達が身に付けている武具はかなり傷んでいるしあまり良い代物ではありません。傭兵や脱走兵とも思えないですし、とてもBランクが勝てないような恐ろしい賊には思えないですね。」

「ふむ、商人らしき考え方だな。」

「でもそうなれば、どうして皆やられたのでしょう?」

「罠か、それともスキルや魔法か……」

「やはりこの賊は例の賊とは無関係なのでは?」

「それとも実は足止めを受けているだけで皆生きてるとかじゃない?」


 希望を見出したミルが少し声を弾ませる。


「……もしくは、一人だけとんでもねえくらい強い奴がいるとかかな。」


 すると、四人の見解に頬に傷がついた男が割り込む。


「……確かに、その可能性もなくはないな。」

「だろ?へへへ、面白そうじゃねえか!」

「面白くねえよ!て言うか、口を挟むな!俺達はただの()()だ、争いごとは無縁なんだよ!」

「はは……ただその可能性も十分あり得るから、このまま油断せず進んでいこう。」


 四人はそう結論付けると、商人達と別れて再び歩き出した。


 ライアン達が目的の村に着いたのは、陽が落ちきった頃だった。

 その村は本当に小さな村で、村の前には村人の情報通り賊らしき男が二人、見張りをしている。


「どう?リナ、いけそう?」

「……ええ、問題ないわね、特に防具も身に付けていないし隙だらけだしこれなら十分いけるわ。」


 遠くから賊を観察していたリナがそう言うと、彼女の眼が黄緑色に光る。

 リナの持つスキル『夜鷹の眼』はマナを消費することで、夜でも昼間のような明るさで見ることができる能力である。


 リナはこの能力を使いながら暗闇に姿を紛らわせて距離を詰める。

 そして射程圏内に入ったところで矢を二本取り出し弓を構えた。

 マナを消費しながら狙いを定めるのはかなりの集中力を要するが、リナはその能力を使いながら周りが見えなくなるほど集中して賊に狙いを定める。

 そして、一つ矢を放つと、その矢の行方を見る前にすかさず二本目の矢でもう片方にも矢を射る。

 矢は見事二人の賊達の胸元に命中し、賊達は声をあげる暇もなくその場でパタリと倒れた。


「……ふう。」


 集中が切れたリナが大きく息を吐く。


「流石だ、リナ。」


 ライアンが倒れている賊達に近づき絶命していることを確認すると、合図を出して残りの三人も村の入り口に集まる。


「ここまでは順調ね。」

「ああ、だが油断はするな。」

「そうだな、この程度の奴らに冒険者がやられるわけがない、きっと何かあるはずだ。」

「村人の話では賊は確か宿屋に立てこもっているらしいな。」


 ダイナの言葉に、四人は入口から見える宿屋の看板が付いた建物に目を向ける。


「あそこね。」

「よし、ならばこのまま隠れてあそこに向かおう。」


 四人は頷くと、そのまま息をひそめて宿屋へと向かった。


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