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奴隷の帝王~無能な奴隷に転生した最強ヤクザの最底辺からの成り上がり~  作者: 三太華雄
四章 学園編

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偽物と本物①

 Bランク冒険者パーティー『晴天(せいてん)(つるぎ)』は今、掲示板に貼られていた一枚の依頼書をギルドの受付に提出した。

 内容は周辺にある村を占拠している賊の討伐、ランクはDランクで報酬は一万ギルといったものである。

 内容を見るだけなら実績も経験も豊富な『晴天の剣』ならば、なんて事のない依頼だが、受け取った受付嬢は不安げな表情を見せている。


「……本当に引き受けなさるのですか?」

「はい、これ以上、賊を野放しにはできないですから……」


 晴天の剣のリーダーであるライアン神妙な顔で答えると、後ろに控えた三人の仲間も頷き同調する。

 この依頼は表向きはDランクの依頼だが、今まで何人もの冒険者がこの依頼を引き受け、生還していない依頼だった。

 この町から目的の村までは歩いて二日ほどの距離、寄り道しても一週間はかからない。

 しかし、討伐依頼が出されてから一ヶ月は経過したが未だに誰一人帰ってきてはいない。

 となれば賊にやられた考えた方がいいだろう。


 その時点で既にDランクの依頼ではないのだが、依頼主である逃げてきた村人には今以上の報酬を払う事が出来ないので、これ以上依頼ランクを上げることができないのである。


 そして先日、善意から『晴天の剣』と同じBランクパーティー『赤い閃光』が賊の討伐に出向いたのだが、彼らも戻ってくることはなかった。

 逃げてきた村人の話では、賊は二十人程という話だったが、その程度の数の賊ならBランクのパーティーなら十分討伐できるし、例え討伐できなくても撤退するくらいの状況判断はできるはずだ。

 しかし『赤い閃光』は誰一人として帰って来なかった。


 事態を重くみたギルドマスターはすぐさま領主と他の町へのギルドに応援の要請を送ったが、この報酬では有力な冒険者を募っても集まらず、また領主の方は村を見捨てたのか応援要請を拒否していた。

 そんな状況の中、晴天の剣はこの依頼を引き受けることにした。


 理由はただ一つ、生還していないパーティー達の消息を確認するためだ。

 特に先日依頼を受けたB『赤い閃光』は『晴天の剣』のライバルであり友人であった。

 お互い年齢層も近く、この町を拠点に活動していることもあって、いつも競いながら切磋琢磨しあってきた。

 時には言い争い、そして時には皆で朝まで飲み明かす、そんな関係だった。


 そんな『赤い閃光』も討伐に出てから未だに帰っていない。

 冒険者である以上死は覚悟しているが、冒険者たちはまだ帰ってきていないので安否すらわからない。

 ならば、自分たちが出向いて直接彼らの状態を確認しようと考えたライアンは、その事を仲間たちに提案すると、他のメンバーも強く頷き、依頼を受ける事にした。


「ですが、やはり相手の情報が少なすぎるので危険だと思います……」

「それに、その賊というのはもしかしたら竜王会が絡んでいるかもしれない。」


 二人の会話に割って入ってくる声が聞こえると、受付嬢の後ろにある扉からギルドマスターが現れる。


「竜王会って?」

「今裏社会で頭角を現してる組織だ、最近この周辺の地域で活動しているという情報が入ってきている。もし奴らが関わっているとなればAランク、もしくはSランクの戦力が必要になる。」

「AランクかSランク……」


 その二つのランクのパーティーは数いる冒険者の中でも一握りしかいない存在で、一つ下のBランクとはいえ実力には大きな開きがある。

 もし本当にそのような組織が関わっているなら、自分達ではどうにもできないであろう。

 しかし……


「ですが、その頼れる冒険者はここにはいない……ですよね。」


 ギルドマスターは無言で肯定する、残念ながら冒険者は慈善活動ではない。

 そんな一握りしかいないパーティーがこんな安い報酬のみで来てくれるわけがなかった。


「じゃあ、あとは俺達くらいしかいないじゃないですか。」

「とは言ってもな……」


 と続けるが、ギルドマスターには他に選択肢がないのか言葉が出ない。

 最後の望みとして聖騎士団に依頼するという手もあるが、彼らは王都を中心に活動しているので、この王都から遠く離れた町まで来てくれる可能性は限りなく低いだろう。


「それにまだ、その組織が関係していると決まったわけでもないしね。」


 後ろから仲間の魔法使いの少女が口を挟むと。

 ギルドマスターは頭を掻きながら悩んだ末に、最後は諦めたかのように息を吐いた。


「……わかった、だが無理はするなよ?もしヤバいと思ったら、すぐに帰って来い、情報が手に入るだけでも収穫だからな。」

「はい。」

「まあ、もし討伐に成功したら、俺のポケットマネーから報酬を上乗せしてやる。」

「一億くらいかなー?」

「フッ、出せるものなら出してやりたいが残念ながら精々五十万くらいだな。」


 仲間の冗談に、ギルドマスターが乗っかって答えると少しヒリついていた空気が和らぐ。


「絶対に無事に帰ってくださいね。」

「はい!」


 受付嬢の言葉にライアンは元気よく返事をすると、『晴天の剣』は賊が占拠する村へと向かった。

 

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