秘伝奥技伝授前2
『こんばんは、今日も宜しくお願い申し上げます。あれ!蓮兄ちゃん!来てたの?』
『わー。本当に蓮兄ちゃん!』
どうやら、掃除当番の門下生が、来てた様だ。蓮達の意識が瞑想状態から覚醒する。
「はい。こんばんは。じゃ、掃除始めてね」
桜が門下生に声を掛ける。門下生二人に蓮も見覚えが有る。
「涼太、美奈、君達兄妹が一番乗りか!偉いぞ。御飯はしっかり食べたか?」
「うん!お兄ちゃんとわたしが今日の掃除当番の年長だから早く来たの」
「蓮兄ちゃんが蒼天流宗家継ぐの本当だったんだ。でも、兄ちゃんは高校生ダヨネ。お嫁さんどうするの?」
妹は元気に答え、兄は興味津々で訊いてくる。涼太が中3、美奈が中1の中学生兄妹だ。取り敢えず質問に真摯に答える。
「彼女に仮初めの花嫁頼んだらOKしてくれたから、学校休んで一緒に来た」
「えっ!?兄ちゃん彼女いたの?何時から?」
「まだ半年だよ。だから、涼太達が知らなくて当然」
其処へガヤガヤ大勢の小学生が雪崩れ込むと
「彼女連れスゲー。流石東京進んでるー」
「彼女綺麗?ボイン?剣術やってるの?」
「一寸下品。同じ高校ですか?同じ歳?l
「名前で呼んでるの?僕はニックネーム」
「航は由良ちゃんと付き合ってるからな。半年なら、蓮兄ちゃん負けてるー」
「付き合うってそういうんじゃないよの~」
まあ、五月蝿い。
「彼女さんは稽古見学するから、挨拶してくれる。御喋りせずにお掃除。お掃除も稽古、稽古。修行は先ず、道場に礼を尽くす事からじゃぞ」
鉄斎の声掛けに
「はい!先生!」
子供達はしゃきっと反応する。流石は師範。掃除が元気良く進んで行く。その内、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、高弟と続々やってくる。社会人、高弟は幼稚園児の我が子も連れて来ている。全部で、五十人程。中学生以上が半数で残りが桜の受け持ち。中学生、高校生が叔父の鉄矢、大学生、社会人が師範である鉄斎。高弟は自分達で稽古をし、交代で指導の補助に廻る。蓮は、高弟扱いである。あずみは全員が瞑想をして心の準備を終えて、いざ稽古のタイミングで現れた。流石に現代JK、素っぴんでは不味いと軽くメイクしてて遅れたのだ。極薄のナチュラルメイクだが、以外と時間喰うのだ。道場に一礼して入り、
「すいません。遅れました。今回の宗家襲名披露の花嫁役でやって参りました、三島あずみです。蓮君とはクラスメイトで同じバイトしてます。半年前迄、新体操を部活動でしてました。一応蓮君の彼女です」
最後の彼女です以外は元気良く、ハキハキと挨拶した。門下生、高弟、師範代、師範揃って盛大に拍手で歓迎する。好意的に受け容れられた様である。
「あずみさんは今日は完全に見学じゃ。高弟は蓮を揉んでやれ。社会人以下は蓮に成長具合、確かめて貰うと良い始め!
」
蓮は高弟達と高速の型を入れ替わりながら繰り返す。中学生以下は大体素振りからで、高校生以上が、叔父の鉄矢や師範の鉄斎に受太刀して貰って型の稽古と云った感じである。30分繰り返し、打ち込みに移り15分、角度スピード体捌きなどのアドバイスを、高弟、師範代、師範が順繰りに受太刀で掛けられながら休む事無く続ける。5分間交代で高弟以上の鋭い打ち込みの受太刀を努めて、上級者の太刀筋とスピードを体感して休憩だ。叔母さんの菊乃さんと社会人、高弟の配偶者さん達がフルーツとスポーツドリンクとお茶(麦茶、緑茶、烏龍茶)、etc(飴とかカロリーバー諸々)をホットタオルと共に運んで来る。飲み食いして汗を拭いて、20分間休む。
いよいよ、乱取りだ。初めの区分の者同士で相手する。蓮は高弟である。初めの相手は、今日の中一番最古参の木島一平(68歳)宗家奥技以外全ての技を体得して居る。強いよりも上手い。体力的衰えを技でカバーして若い高弟を圧倒していて円熟の極に居る。