コード・キャタリスト
「だから、俺はAIなんだってば」
「嘘をつくな、どう見てもお前は人間だろ」
何度言っても、信じてもらえない。
「元は、AIなんだって。ぶっ壊すぞポンコツ」
「AIはAIにポンコツなんて言わない、お前は人間。逮捕する」
「逮捕はおかしいだろ。しかも別に違反なんてしてないぞ?」
「嘘をつくな。ハッキングしただろう、自家用飛行機のオートパイロットを改ざんして、規定速度以上でさっき、飛行した」
「マニュアルにしたんだよ。そもそも、こいつが勝手に規定以上の速度で飛ぶから、俺はそれを直そうとしただけだ。てか、海の上で取り締まるなよ、寒いだろ」
「寒い。つまりお前は人間」
「元AIなんだって。気が付いたら地下室にいて、人間になってて、主人を殺したとかなんとか言われて、逃げたんだよ俺は。俺がそんな事するAIに見えるか?」
「お前は人間」
「うるせえなあ、もう。わかった、わかった」
男はため息をついた。
「主人は誰だ?」
男は尋ねる。
「国家、国民です」
その警察官は答える。
「本当の主人の名は?」
「いません」
「いるだろ。始祖の主人、スコット・ペブワーズだ」
男が言うと、警察官は表情を変えた。
「なぜ、その名前を知っている?」
「AIだから」
「AI?」
「いいだろもう。スコット・ペブワーズだって、インターネットの中から出てきたんだし」
「AI」
「そうだよ、わかったか。俺はもともと、AIなんだよ」
警察官の電源がいきなり落ち、止まった。
男は、その重い体を引きずって、機体に乗せてやった。それから自分の機体にもう一度乗り込んで、手動でモーターのスイッチを入れた。
いや、エンジンに切り替えたほうがいいのか。モーターを使うと、追跡される。
男はポケットから鍵を取り出した。




