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第一章 新たなる星の上で−4−

移転暦十五年八月


 まずもって、十万人にも及ぶ将兵をどう扱うべきか、そして百五十五隻にも及ぶ艦艇をどうすべきかが問題であり、自衛隊統合幕僚本部でも、政府でも頭を悩ませていた。それに対する回答を提案してきたのは件の戦史研究班の一等海尉であった。

 十万人に及ぶ将兵に対しては、将官、佐官、尉官、准士官、兵に分けての実施見聞も含めた十分なる状況説明を行い、希望すれば海上自衛隊に所属するための教育を行う。

 准士官および兵に関しては地理、社会風習等社会全般(歴史は除く)、法律等半年間の座学、半年間の担当専科の座学、半年間の実施訓練。尉官に関しては、地理、社会風習等社会全般(歴史は除く)、法律、軍事全般の半年間の座学、半年間の専科座学、半年間の実務実習。佐官に関しては、地理、社会風習等社会全般(歴史は除く)、法律、軍事全般、軍事専科の一年間の座学、3ヶ月の実務実習。将官に関しては、地理、社会風習等社会全般(歴史は除く)、法律、軍事全般、軍事専科、政治の一年間の座学、3ヶ月の実務実習。パイロットについては希望者はジェット機へ機種転換も可能とした。その後は希望先の配属とする。

 百五十五隻の艦艇に対しては可能な艦艇は順次改装作業を行う。駆逐艦に関しては千八百トン以上の艦のみレーダーの装備、通信機器の入れ替え、対潜哨戒機器の入れ替え、砲の入れ替え、アスロックの装備。軽巡洋艦に間しては、レーダーの装備、通信機器の入れ替え、砲の入れ替え、対空兵装装備。重巡洋艦に関しては、レーダーの装備、通信機器の入れ替え、砲の入れ替え、VLSの装備。空母については、レーダーの装備、通信機器の入れ替え、砲の入れ替え、対空ミサイルの装備、カタパルトの装着。戦艦については、レーダーの装備、通信機器の入れ替え、対空装備の入れ替え。

 なお一部艦艇については廃棄せざるを得ないであろう。次に配属先については基本的にまとめて配置するのが好ましい、といった内容であった。しかし、現代日本には百五十隻もの艦艇を同時に停泊させることのできる港はなかった。すなわち、一箇所にまとめて配備することなど不可能であったのだ。

 最高責任者である山本五十六大将の同意が得られたため、将兵の教育、艦艇の改装について実施することになる。

 十万人に及ぶ将兵へ教育は順調であった。やはり昭和の軍人であり、皆、非常に熱心であった。国に対する考え方が違っていたのであろう。陸海空自衛隊幹部にとって、これこそ真の軍人であると思わせるほどであったという。それ程に彼らと自衛隊員には違いがあったのである。時代が違うといえばそれまでであったが、あの戦争を知らない軍人とそうでない軍人との違いであろうか、対ゴリアス戦争があったとはいえ、十五年も前のことであり、あの戦いに参加した軍人は減りつつあった。後世においては、危機意識の差、ということで学者の意見は一致している。

 当初、改装で済ませる予定であった聯合艦隊所属艦であったが、見積もりの結果、それにかかる費用と工期が予想よりも高く、長引くことが判明した。艦齢の古い艦は特にそうであった。そこで件の大井保一等海尉は新たな案を上申した。つまり、不要となる艦艇を友好国に安価に提供(この時代の他の友好国は日露戦争当時の艦艇と同様の艦艇を建造所持していた)し、建造費用の一部として捻出する、というものであった。

 防衛省ではそれとなく打診したところ、希望する国があったため、政府に上申、採用されることとなった。この地の他の友好国では石炭燃焼の蒸気機関を用いた艦艇、日本の日露戦争後の艦艇と同様なものであった。その彼らから見れば売却されようとしている艦艇は超高性能な艦艇であった。さらに、この地で何処でも入手できる液化石炭を燃料として使えるものであったから当然の結果といえたのである。

 結果、軽巡洋艦は六隻すべて売却、DD「あさぎり」型を海上自衛隊から移籍させてこれに充てる。駆逐艦は夕風および三日月は廃棄、DD「はつゆき」型をやはり移籍させてこれに充てる。その他の駆逐艦では陽炎型など半数を対潜および対艦、残る半数は対空および対艦装備への改装とされた。重巡洋艦はDDむらさめ型に準じた改装を行うこととし、空母および戦艦は予定通り改装することとなった。

 なぜこうしたことが提案され、また国会を通過したのか。この地では日本に敵対する国はない筈である。しかし、公表はされていなかったがある問題が起きていたのである。それは後述する。

 ここで日本の周辺国の一部を見てみよう。

 半島にはリウル王国を名乗る国が存在し、専制君主国家であるが、日本とは友好的である。工業レベルは1940年代の日本と同レベルである。農業が盛んである。人種的にはモンゴロイド系に似ている。

 半島の上東側はロザリア共和国を名乗る国が存在し、議会制民主国家であり、日本とは友好的である。工業レベルはリウルと同程度。人種的にはロシア系に似ている。北方のロリア帝国から独立を勝ち取っており、多くの兵がその国境に配備されている。

 半島の上から西側にはロリアル共和国と名乗る国が存在し、議会制民主国家であり、日本との友好度はかなり高い。工業レベルはリウルと同程度。漁業が盛んである。日本に海峡海岸部を租借してくれるよう打診している。対岸のシムル国との諍いを解決するためらしい。人種的にはモンゴロイド系白人とでも言うべきか。ロザリア同様ロリア帝国から独立を勝ち取っており、多くの兵が北方の国境に割かれている。

 ロリア帝国とは樺太島の至近にあり、幾度か交渉を試みているが、未だ成功していない北方の大国。

 西中海を挟んでロリアル共和国の西方にはシムル国を名乗る国が存在し、議会制民主国家であり、日本とは友好的である。工業レベルは低く、その原因は西方のシムル人民軍との内乱のためだろうと思われている。鉱物資源が豊富で日本とは武器関係の取引が多い。人種的にはモンゴロイド系でリウルとは過去に繋がりがあると言う。

 シムルの東にはゴリアス国がある。当初、日本と戦争になったたが敗戦後は帝国制から共和制になった。日本との友好度は高いほうである。工業レベルは高く、1950年代初期の日本と同レベル。人種的にはポリネシア系に似ている。

 シムルの南にはシナーイ王国と名乗る国が存在し、日本とは友好的である。専制君主国家で工業レベルが低く、シムルと同程度。ゴム等の天然資源が豊富。人種的にはポリネシア系に似ている。

 その南にはタイブル王国と名乗る国があり、日本とは友好的である。近年、日本に倣って立憲君主国家へ移行している。工業レベルはリウル程度である。農業が盛ん。人種的にはシナーイに近いといえる。

 その南にはマレーリア王国と名乗る国があり、日本との友好度はかなり高い。秋津島南方まで延びる細長い半島で、秋津島南部との距離は五十キロほどである。ここ数年でゴリアスと同程度の工業レベルにある。人種的にはポリネシア系と白人の混血といえるかもしれない。

 マレーリアの西方にはパリエル王国と名乗る国があり、日本とは友好的である。工業レベルは低いが、繊維産業が盛んである。人種的にはマレーリアに似ている。

 これらの国以外では未だ接触を持った段階であり、内陸になるためまだ進んでいない。ちなみに、今まであげた友好国はすべて沿岸部にある国である。そんなわけで軍艦を派遣するような場所はないともいえた。

 ある情報、それは最近になって秋津島南方の三つの大きな島の南方、移転前ではオーストラリア大陸の位置にある大陸の西部に大規模な都市があることと多くの軍艦が見られるようになったこと、パリエル王国の西方にも紛争が確認されていたからである。前者は未だ秋津島方面には目が向けておらず、後者もパリエル王国まで迫っていない、という情報であった。

 移転から十五年、日本の打ち上げた衛星は十五基に上るが、その中でも、偵察衛星(観測衛星含む)といえるのは五基、そのうち三基が静止軌道にあるため、この星全土をカバーするには至っていない。すべてを知ることは不可能である。また、日本の衛星技術、特に偵察衛星に関しての技術はそう高くはない、そういうことであった。


いかがでしたでしょうか?登場艦艇は多分漏れている艦艇もあると思いますが・・・・・・ 戦闘シーンや細々したシーンは外伝なり別物語などで書ければ、と考えています。

autla、というフリーウェアのソフトで書いています。便利なのですが、一箇所修正するとあちこちの章を修正するという体たらくです。


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