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第九章 亜細亜の曙−5−

移転暦二三年一二月


 インペル海に新たな勢力が確認されたのは三ヶ月前のことであった。インペル海の対岸、アフリカ大陸に相当する大陸のちょうどインペル国の対岸にあたる地域、そこにコルセカという都市が存在していたのである。


 元はエンリア帝国が出現する前に黒海西岸域にあったコルセカ王国の人々であることが確認されている。エンリア帝国の迫害を逃れ、南へと向かった集団の集結地域であるとされる。勢力とはいっても人口は一〇万人ほどであり、祖国奪還という目的の元に集まっている集団に過ぎない。ただ、エンリア帝国から二隻の潜水艦と一〇隻程度の魚雷艇を奪取し、エンリア帝国に対する海賊行為を続けていたようであった。


 ではあったが、インペル国出現以降は活動を停止していたといわれる。その理由はインペル祖国奪還戦争終結後、エンリア帝国海軍艦艇が黒海に封じられていたため、エンリア帝国海軍艦艇に対する攻撃機会が激減していたからに他ならない。


 彼らの存在は二二年六月に判明していたのであるが、すぐにフレンス皇国との戦争やオーロラリア内戦があったため、秋津島統合防衛軍や本国軍でもほぼ忘れ去られていたといえる。彼らに初めて接触したのが秋津島統合防衛軍海軍第六艦隊第三潜水戦隊所属の伊100潜であった。


 伊100潜はインペル海での哨戒任務中にコルセカ沖約五〇〇kmの海上を浮上航行している際に同勢力の潜水艦から雷撃を受けたのである。幸いにして雷撃は回避することに成功、その後、海中での戦闘となったが、電池切れで浮上した潜水艦を拿捕することに成功している。この情報は第六艦隊司令部を通じて統合防衛軍司令部および本国統合幕僚本部にもたらされていた。同時に統合幕僚本部から政府に情報は上がっていた。


 協議の結果、コルセカ西部で産出するモリブデンやクロムなどの希少金属との交易が始まったとされる。インペルでは原油と、日本では武器弾薬など軍需物資との交易が中心であったとされる。むろん両国ともエンリア帝国に対する反勢力になることを期待してのものであっただろう。


 その結果として、後に発生するインペルエンリア戦争中期にはコルセカ反エンリア帝国軍が参戦することとなり、戦後には黒海西岸南部にコルセカ王国が再建されることとなるがそれはまた別の話である。ともあれ、こうしてまたひとつの国が復興することとなる。


 この時点では西太平洋や南太平洋、インデル海は平穏であった。オーロラリア国やフレンス皇国、インペル国の出現による戦乱はあったが、何年ぶりかの平穏であったといえるだろう。しかし、本国においては原子力潜水艦による東太平洋や大西洋、北極海、南氷洋の調査は続けられており、西中海北岸の監視や黒海の監視に就く艦もあった。秋津島統合防衛軍では来るべきプロイデンやエンリア帝国に対する作戦計画の立案、訓練などが行われていたのも事実であった。


 軍関係ではそうではあったが、民間においてはそれほど戦争が話題になることもなかったといわれる。オーロラリアやフレンス、インペルなどへの航空航路が開かれたことの方が話題となっていた。もっともこのとき、国際線を運行していたのはJALとANA、JAS、AALの四社だけであり、主に東亜細亜や東南亜細亜に進出していたが、インペルやオーロラリア、フレンス皇国への直行便が運行され始めていた。もっとも、主要機種が国産のMRJシリーズであったため、無着陸というわけではなかった。


 現在の主流であるMRJ−100は一〇〇人乗りで五〇〇〇kmの航続距離でしかないが、秋津島重工ではB767に準じたAJ767の開発がほぼ終了し、現在認可試験を受けており、試験に合格すれば無着陸での運行も可能であるとされていた。この機体は航続距離として一万三〇〇〇kmが申告されていたからであろう。


 移転前に国内航空会社各社が所有していた海外社製の機体は移転暦一五年を最後に廃棄されており、現在は運行していない。これは移転後数年間の混乱の折、運用されなかったことによる機体劣化と部品の入手が不可能であったこと、経営的な観点から見てのことからであろう。余談ではあるが、航空会社が国際航路で収益を上げうるようになったのは移転暦二〇年になってからだといわれている。


 AAL(秋津島航空株式会社)は南秋津市に本社を置く新興の航空会社であるが、日本本国への便よりも東南亜細亜各地域への便が多く、航続距離の短い航空機でも収益を上げらた航空会社であったといわれる。この時点で自国内で航空会社を有していた国は日本を除けば、インペル、フレンス、マレーリア、パリエル、イエツ、ロリアル、ゴリアスの七国であった。このうち、インペルとフレンスではジェット機が運用されており、その他の国はレシプロ機が運用されていた。これらの国以外にも航空輸送に向かっている国は存在する。それがエリプト、サウロギニア、オーロラリア、タイブルであった。


 インペル、フレンスを除けば国際線ばかりで国内線は運行されていない。そこまで国内が整備されているわけではないということである。マレーリア、パリエル、イエツ、ロリアル、ゴリアスで使用されているレシプロ旅客機は四発のもので最大九九名を運ぶことができた。外見的にはロッキードL−188エレクトラに似たものであった。


 この時点において日本国と接触していない国も存在する。それらの国では未だ旧態然とした中世レベルの国であるとされている。逆に日本と接触した国もまた存在する。カンベジア、パンザ王国、イエーク王国がそれであった。カンベジアはゴリアス海への海路が開けたことから、パンザ王国はパリエルの発展振りを目の当たりにしたことから、イエーク王国はイエツの発展振りを目の当たりにしたことからそれぞれ急速に日本と接近することになった。もっとも、これら三国には既に日本と交流のある周辺国から技術導入が図られることになり、日本から直接技術導入することはなかったといわれる。


短い間でしたがお読みいただき感謝いたします。前回の後書きに書いたように書き直している間に話しが広がりすぎてしまいました。原案はかなり古く、荒巻義雄氏の要塞シリーズを読んでその中の「電脳ワールド」という言葉に触発されて書き貯めていたものです。今回、連載に当たって登場艦船の修正と兵器の技術的な部分の修正および加筆しながらのものでした。さらに、連載を始めてリアリティを出そうと登場人物を再度調べたところ、主な将官のリストが見つかったため、さらに修正していきながらのものでした。が、これが悪かったようでとんでもない広がりをもってしまいました。原案では移転暦二十年で終わっていたのですが・・・・・・・もっとも戦闘シーンはなく、単なる出来事の羅列に過ぎなかったので少し戦闘シーンを加えてみたらこの有様でした。加えて文体を超有名なスペースオペラ風(未来から過去を振り返るというあれです)にという考えも取り入れてしまったがために収拾が付かなくなりそうでした。とにかく近いうちに第二部を連載したいと考えています。ありがとうございました。

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