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第九章 亜細亜の曙−4−

移転暦二三年一二月


 インペル海における緊張は高まっていた。特に製油施設のあるサザンバーレント周辺海域がそうであった。北のバーレントは今やインペル最大の空軍および陸軍拠点と化していた。軍港も整備され、常時一個航空艦隊(インペルでは空母を含む艦隊のことをこう呼んでいた)が常駐し、西のスクバフロー(海軍最大の拠点)にも多数の艦隊が終結していた。五個航空艦隊に三個戦艦艦隊である。


 インペルの場合、一個航空艦隊につき空母一隻と護衛艦として重巡洋艦四隻、駆逐艦一二隻で編成されていた。一個戦艦艦隊は戦艦四隻、軽巡洋艦四隻、駆逐艦一二隻で編成されていた。つまり、六隻の空母と一二隻の戦艦があったのだ。これはインペル海軍戦力の四/五であった。残りは東部インデル海に面した軍港に分散配備されているのみである。


 もともとインペルは東部が発達し、首都ロンデンも東部にある。西部はどちらかといえば未開発であったが、この地に移転して環境が変わり、今や北西部は急速に開発が進んでいた。であるが、エンリア帝国との緊張が続き、一時も息の抜けない地域でもあった。以前は水上艦同志の小競り合いが幾度かあったようであるが、今では水面下の戦いが主流となっていた。両国とも潜水艦を繰り出し、監視任務についていたが、時には潜水艦同士の戦いが行われていた。


 これらの情報は秋津島統合防衛軍司令部にも入っていた。秋津島統合防衛軍第六艦隊隷下の二個潜水戦隊が交代で常時インペル海に進出し、情報収集を行っていたからである。当初、エンリア帝国は潜水艦を配備してないと考えられていたが、現在では装備していると考えられていた。本国海軍では機関音やスクリューの音紋がプロイデンのものと似ていることから、プロイデン製の潜水艦ではないか、というのが一般的な見方である。


 さらに、これまで続いていた黒海内での両国間の戦闘が起こっていないことから不可侵条約あるいは何らかの条約が結ばれたのではないか、という見方もある。ともあれ、エンリア帝国が再びインペルに目を向けだしたのは確実視されており、本国統合幕僚本部でもそう判断していた。だからこその艦艇配備計画の承認が出たのであろう、と秋津島統合防衛軍司令部では判断していた。


 同時にプロイデンは黒海東部から西中海北岸を経て東部の自国へとその版図を広げているのが確認されていた。未だ自国より東へとは進出していないが、東進を始める可能性が非常に高い、と秋津島統合防衛軍司令部では考えられており、本国統合幕僚本部も同様の意見を持っていた。ために、細かな情報収集が始められていたのである。


 とはいえ、亜細亜地域(黒海南東から太平洋、インデル海沿岸)の政情は安定状況にあった。懸念されていたフレンスやオーロラリアにおいても一応の安定は取り戻していた。未だ国交が樹立されていないインデルなどいくつかの国も現状では特に不安は無く、国内状況も安定しているようである。日本にとって必要な資源はほぼ貿易によって入手できる状況であり、輸出が順調であり、経済的にも安定していた。今後、フレンス共和国やオーロラリア国の政情安定、経済再建が済めば更なる好調が期待できそうであった。


 インペル海およびインデル海の安定が確立されば、沿岸諸国との交易もさらに増える見込みであり、また、西中海南岸の開発と国交樹立が確立すれば、今後長期間にわたって日本の経済は安定してゆくだろうと考えられていた。しかし、いずれの場合においても立ちふさがるのはエンリア帝国であり、プロイデンであることには変わりはなかった。ましてや、プロイデンは過去において日本を攻撃しているのである。国内にもその問題を解決すべし、との声もある。


 ともあれ、秋津島統合防衛軍としては、太平洋の安定(対岸のアメリカ大陸は未だ不明ではある)がもたらされ、残るインペル海の哨戒警備に集中することが可能となり、ほっとしている面もあった。ただ、秋津島統合防衛軍海軍の戦力は現時点で本国海軍を凌駕しており、西中海への部隊派遣もありえる、とは秋津島統合防衛軍司令部主席参謀の大井保中佐の意見であった。


 現状、秋津島統合棒防衛軍海軍は艦艇の整備を行い、インペル海への戦力配備の準備をを進めていた。特に、配備後初めて実戦運用された四隻の原子力空母『扶桑』『山城』『長門』『陸奥』についての整備点検は慎重に行われた。日本にとって原子力空母など初めて運用するわけであり、それ以前の経験もなく、これらのデータが完成が近い『きい』型原子力空母運用の礎となるからである。むろん、空母だけではない。特に最重要とされたのは「くまの」型重巡洋艦(イージス護衛艦)のデータであった。


 本国海軍護衛艦隊五個護衛群すべてに二隻ずつ配備されてはいるが、実戦経験ともなるとやはり秋津島統合防衛軍の方が勝る、というよりも本国海軍の実戦経験はないのである。最後の実戦は当時のゴリアス帝国との戦争であり、すでに二○年も前のことになる。現艦艇乗組員の中ではほぼいないといえるほど、時間が過ぎていた。あの戦争の経験者は今ではほぼ陸に上がり、残っている数少ない現場の人間もそれなりの地位にいるが、軍あるいは固艦の経験値は下がる一方である。それがためのデータ収集ともいえる。


 エンリア、プロイデン、オーロラリア、インペル、フレンスとここ最近になって新たに移転してきた国は技術レベルが高く、現在日本の技術レベルが少し勝り、軍備も元聯合艦隊の一部が合流したことで多く配備できたことが勝利の原因とも言えた。幸いにしてオーロラリア、インペル、フレンスとは友好的な関係を築くことができたが、今後もそうであるという保障はないのである。対等な技術力を持つ侵略国家が現れたら日本の運命も判らないというのが、秋津島統合防衛軍軍司令部および統合幕僚本部の意見であった。


この話と次の話で一応終わる予定です。少し時間を置いて続編を続けて書きたいと思います。タイトルはこのまま続けるか新たな小説としてアップするかは未定です。正直、中途半端なのでなんとか完結させたいと思います。元々はもっとはしょって書いていたので、終わっていたのですが、人物を追加してからおかしくなりました。終わり方は決まっているのですが・・・・ 筆力のなさを痛感しています。

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