表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/48

第六章 再生のための苦難−5−

移転暦二二年三月


 秋津島統合防衛軍は原子力空母『長門』『陸奥』を除けば、艦艇および装備の再編は終了していた。『長門』『陸奥』も予定通り竣工し、公試運転を繰り返していた。機関が機関だけに調整や乗組員の習熟が大変なのである。原子力空母の運用についてはそれ程実績がないためであった。本国では、本国海軍の装備艦艇の一/五が建造中であるという。この一年間の軍艦の建造ラッシュはかって無いものであったらしい。つまり、軍艦の売却はそれほどの利益を上げたともいえる。もっとも、インペル国の要望にこたえたのは軍の利益からだけではない。移転前の1980年代の日本の工業レベルから、日本の主要輸出産業である車、電化製品、精密機器等の需要が見込めたからこそ、経済面からの後押しもあったのである。


 じつはこの艦艇の売却先にはパリエル国、マレーリア国、ロリアル共和国、ロザリア共和国、オーロラリア国なども関係していた。良きにつけ悪しきにつけ友好国内で情報を公開していたため、日本の軽快艦艇(軽巡洋艦や駆逐艦など)の優秀性が知られ、購入が相次いだのである。特に、戦艦の購入を打診してきていたロリアル、ロザリア両国は大型艦の少数配備よりも軽快艦艇をある程度まとめて配備するほうが有効ではないか、そう判断したのかもしれない。新造艦一隻の値段で三隻買えるとなれば、購入依頼が殺到するのは当然と言えたかもしれない。


 オーロラリア国に関しては日本政府主導で駆逐艦の多量配備を要求し、押し付けていた。むろん、国家財政が窮乏していたかの国との支払いは資源であった。大陸といっても過言ではないその国内には資源が豊富であったからだった。ボーキサイト、鉄鉱石、レアメタルなどである。そして、それはかの国の未来のためでもあった。


 インペルに売却された『千歳』『千代田』はどうなっていたかというと、それぞれ『ナイアラ』『バッケニア』と名づけられ、インペル海哨戒任務についていた。すでに四度の不時遭遇戦を経験し、効果を挙げていた。巡洋戦艦改装の大型空母は『インペルアーク』『インペルヨーク』と名を変え、就役していた。当初、レシプロ機である一九式戦闘機および一九式攻撃機合わせて六○機を装備していたが、現在はジェット化が終了、戦闘攻撃機三二機、E2D早期警戒機一機を搭載し、海峡警備および監視任務についていた。二度の戦闘を経験し、有用であるとインペル軍は判断、所有する巡洋戦艦四隻の空母への改装を始めていた。


 日本は軍備拡大に一定の歯止めかけるべく会議を提案、各国と協議した後、調印することになった。後に「秋津会議」といわれ、条約の有効期限は一○年と定められ、一○年ごとに検討し、何もなければ自動延長するものとされた。これにより、秋津島統合防衛軍は現状以上の軍備増強は行わないとされた。山本大将など海軍高官たちは、軍備で水準を決めるのはどこの世界でも同じか、と安心したようでもあった。


 現在、秋津島統合防衛軍には四種の空母がある。「扶桑」型、「長門」型、「赤城」型、「飛龍」型である。ここで要目を挙げてみよう。


「扶桑」型『扶桑』『山城』

排水量 四万四○○○トン

全長 二五二m

全幅 三六m

飛行甲板長 二五二m

飛行甲板幅 四八m

吃水 九、五m

機関 加圧水型原子炉J4

出力 一五万馬力

最大速力 三二kt

艦載機 五二機(FG−4戦闘機二四機、FG−5攻撃機二四機、E−3A早期警戒管制機二機、SH−62多機能ヘリ二機)


「長門」型『長門』『陸奥』

排水量 四万七五○○トン

全長 二六五m 

全幅 三八m

飛行甲板長 二六五m

飛行甲板幅 五○m

吃水 九、八m

機関 加圧水型原子炉J4

出力 一五万馬力

最大速力 三○kt

艦載機 五五機(FG−4戦闘機二四機、FG−5攻撃機二四機、E−3A早期警戒管制機三機、SH−62多機能ヘリ二機、AM3哨戒機二機)


「赤城」型『赤城』『加賀』

排水量 四万三○○○トン

全長 二五○m 

全幅 三三m

飛行甲板長 二五○m

飛行甲板幅 四五m

吃水 九、五m

機関 AJPオールギヤードタービン

出力 一五万馬力

最大速力 三二kt

艦載機 五二機(FG−4戦闘機二四機、FG−5攻撃機二四機、E−3A早期警戒管制機二機、SH−62多機能ヘリ二機)


「飛龍」型『飛龍』『蒼龍』

排水量 三万三五○○トン

全長 二五○m 

全幅 三三m

飛行甲板長 二五○m

飛行甲板幅 四五m

吃水 八、五m

機関 AJPオールギヤードタービン

出力 一五万馬力

最大速力 三二kt

艦載機 五二機(FG−4戦闘機二四機、FG−5攻撃機二四機、E−3A早期警戒管制機二機、SH−62多機能ヘリ二機)


 本来なら『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』は別クラス扱いになるのであるが、改装を担当した秋津島重工の技師たちは強引に合わせて改装していたのであった。機関も自社製の部品を使い改造していた。そんなわけで、これらの改装には予定外の改装も含まれてはいたが、昭和の軍人たちは誰もが満足していたようであった。ちなみに、インペル国の巡洋戦艦改装空母は「飛龍」級に準じて改装が行われていた。

「インペルアーク」型

排水量 三万トン

全長 二一○m 

全幅 二八、五m

飛行甲板長 二一○m

飛行甲板幅 三八m

吃水 九m

最大速度 二八ノット

と、艦形が二回りほど小さいものになっていた。機関はそのままのため、速度は若干の低下をみた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ