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第三章 何がための戦い−1−

移転暦一八年九月


 この日、中部インデリア海を哨戒航行中の第一〇臨時艦隊(第一〇航空戦隊水上機母艦『千代田』『千歳』『日進』第三水雷戦隊軽巡『川内』(151あさぎり)駆逐艦『舞風』『浦風』『初風』『浜風』『谷風』『萩風』による編成)はマレーリア南西一一〇〇km沖の海上で、事前にレーダーで確認していた不審船と接触した。不審船はこちらを認めると逃亡のそぶりを見せたが、しばらくこちらを観測して旭日旗を確認したのか、こちらに救助を要請してきたのであった。


 不審船は銃撃を受けているのか、ところどころ穴が開き、その回りは黒く燻っているようであった。艦隊司令の木村進少将は直ちに『舞風』を救助に向かわせ、他の駆逐艦には対潜警戒を厳にさせる。次いで『千代田』『千歳』には六機ずつ合わせて一二機を発艦させ周囲を警戒させた。レーダーには何も写っておらず、ソナーにも異常はなかった。同時に衛星通信で秋津島統合防衛軍司令部に連絡を取る。むろん、この時点で本国にも情報は伝達される。


 救助された中で一番上位の者が、自分はエリプト連合共和国外務次官であると告げ、秋津島への渡航を求める。木村少将は船はどうするかと尋ね、放棄しても良いとの返事を得る。が、何を思ったか沈没させても良いかと再び尋ねる。不審な表情をみせる相手に、あなたの話からすれば沈んだと思わせるほうが良いのではないか、と説明する。納得してうなずく相手から了承を得ると上空の航空隊に撃沈を命ずる。六番(六十kg)爆弾五発の命中後、船は沈没した。


 航海中も木村少将による事情聴取は続き、逐一秋津島統合防衛軍司令部に打電される。その中の一報、ナリサダム次官は日本の援助を求めているが、見返りに可能な限りの費用および同国で採取されるレアメタルの提供を申し出ている、との報に日本本国外務省が動くこととなる。ちなみになぜ秋津島なのかと問うたときの答えは、秋津島ラジオの放送で知ったと言うことであった。特に、オーロラリア帝国との事件後、決断したとのことだった。


 南秋津市でのナリサダム次官の驚きようは理解できよう。大和をはじめとする巨大な戦艦群、その他の大型艦艇、巨大なビルの群れ、巨大なプロペラのない旅客機などなどである。また感動させたのが、外務省東南アジア局長鈴木憲次との会談であり、六〇〇〇kmも離れた本国から来島したと聞き感銘していたようであった。


 会談は何度か休日を取り、一〇日間にわたって行われた。その席上で確認されたことは次の通りであった。

・エリプト連合共和国は日本の軍事援助を求める。

・エリプト連合共和国は見返りに可能な限りの費用を支払う。

・エリプト連合共和国は終戦後に同国で産出するレアメタルを供給する。

・エリプト連合共和国は終戦後に日本の援助により再建後は残余金を支払う。

・日本国はエリプト連合共和国の役災を振り払うために軍を派遣する。

・日本国は終戦後のエリプト連合共和国に技術援助を行う。

・日本国はエリプト連合共和国に領土を請求はしない。

・日本国はエリプト連合共和国に属国になる事を要求しない。

といったものであった。


 会談中にも軍高官が出席しないの訝ったナリサダムが尋ねた。なぜ軍の高官が会談に参加しないのかと。オブザーバーとして出席していた大井保少佐の答えはこうであった。軍人は外交会談には顔を出すべきではなく、政府の命令があれば動くべきである。次官との会談はそれからであろう、との山本五十六司令官の言葉を告げた。それはナリサダム次官に統合防衛軍を、日本を改めて信頼させることになった。


 最後の会談から三日後、鈴木憲次東亞局長がナリサダム次官に、東京はエリプト連合共和国へ軍の派遣(PKF部隊)を承認しました。今後は軍との協議になります。落ち着いたら日本本国へ来られ、再会できることを楽しみにしております。そう言い残して彼は本国に帰っていった。


 この決定は南秋津市において秋津島統合防衛軍報道官井村あかり海軍大尉によって発表され、翌日には友好国すべてで報道された。友好国からのめだった反対は無く(日本お得意の根回しが済んでいたため)、本格的に稼動することとなる。この戦いにおいて他の友好国は軍を参加させない、否、参加させる海軍を持たないからであった。


 秋津島統合防衛軍司令部ビル五階会議室。陸海軍の主だった面々の前で大井は話していた。

「現地はこれから春を迎えます。気候的には日本の東北地方と同様です。さて、今回の作戦は主に三つに分けられます。

1、インデリア海上での敵海軍力殲滅。

2、東エリプト国内から敵軍を駆逐すること。

3、敵本土の軍事拠点の殲滅。

以上三点です。当然のことながら、まず事前に敵に宣戦布告します。その後、エリプト周辺海域の制海権と制空権およびエリプト国内の制空権の確保。その時点でエリプト国内の敵駆逐作戦に入ります。その後、進出してくる敵海軍をエリプト周辺海域で殲滅します。制海権および制空権確保後に敵本土の軍事拠点殲滅に入ります。なお、作戦完了までに要する日数は二ヶ月を予定しています」

「二ヶ月だって。短すぎないか」

「いいえ、今回は何処に何があるかすべて判っています。また、敵が動けばすべて判ります。あとはいかに被害を少なく敵に打撃を与えるか、これだけです」

「たしかにそうだ。何処に何があるか判っていればあとは実行のみだな」

「それに複雑な作戦は必要ありません。仮に敵に先手を取られたとしても逆転するだけの戦力はあります」


この章ではちょびっと戦闘がありますが、全体的なものになるでしょう。いずれ外伝なり別小説として書きたいと考えています。地図画像がアップできないのでわかりにくいと思っておりますが、ほぼ地球に準じたものとお考えください。違いといえば、ヨーロッパがないこと、アフリカ大陸やアメリカ大陸など今の地図に比べて小さいことで、中央アジアに巨大な内海があると考えていただければよいかと思います。

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