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その5

 よーこと門番二人、その隣で緑オークのカチョウと相手の石オークとが双方対峙する。


 デイビッドボールからワーッと歓声が漏れる。


『お~っと始まったデース! 草オーク対石オーク! 好戦的な石オークと緑オークが争うのはこの地域ではそんなに珍しくもない光景デース! しかしッ、今は状況が違うッ! 野良ではない、共にこの日のために鍛え上げられたオーク同士が闘うのデース!』


 ――石オーク。背丈は大柄な人間男性程度であろうか。


 しかし、顔面、身体、その所々に埋め込まれたように見える様々な種類の石。


 それらが黒黒とした皮膚と同化している。


 そしてその凶悪なオーク相。


 なるほど確かに人外のもの、といった風情である。


「グルウウウ」


 バキバキと半分石で出来た口を噛みしめている。


「カチョウ! オーク相手なら良いでしょ! 『こんぼう』よ! 石オークの頭蓋骨を打ち砕きなさい!」


「ショウガナイデスネ。ワカリマシタ……ワアアアアアアッ! コンボウガナイ! サッキノタタカイデクダケタママデス!?」


『し、しまったデース! オークボールに入ったボールの回復はオークセンターで回復させないと治らないんデース! ちょっとやりすぎましたデース!』


 対峙している門番たちが戸惑いながら話し合っている。


「何なんだこいつらは? オークド博士の娘だと言っていたが、オークの常識をそこまで知らないとは……脳みそが頭に詰まっているのか?」


「ああ、やはりメタオークだろう。街に被害を出す訳にはいかん! 石オーク、『いしをぶつける』だ! あの偽トレーナーを狙え! 次に『ざんてつけん』! それもあの偽トレーナーを狙え!」


 石オークが近くの北海道で作ったかまくらくらいの石をボコリと軽々と持ち上げた。

 それを松坂大輔のようなフォームで全力でよーこに投げつけてきた。


 よーこは大きくスウェーして岩石を何とか交わす。

 後ろでは草むらに激突したらしい轟音。

 よーこの頬には一筋に血の筋が走る。

 それを指ぬきグローブの指先で拭くと、よーこは血をなめとる。


「なるほど……確かにオーク同士を戦わせるよりオークでトレーナーを狙った方が手っ取り早い、か……アンタ達、合理的だわ。やってやろうじゃない」


「黙れメタオーク! さっさと正体を現すが良い!」

 門番二人が自分たちの優勢を感じたのか、強気で叫ぶ。


『大丈夫ですかよーこ!』

「大丈夫。見える速度よ。次は何? 私に『ざんてつけん』だっけ?」


 石オークは近くの長い石をズルリと抜くと、居合の構えになる。

「フシュルルル」

 器用に高速すり足で近づいてくる石オーク。


「ふん、て、うわっ、ヤバっ!」

 よーこは猫脚ステップで躱そうとしたが、石で歩き慣れない地面に後ろ足を引っ掛けてしまう。

 よーこの面前にまで放たれる石オークの『ざんてつけん』。


 あちゃー、死ぬわ私――。

 反射神経には自信あったんだけど、コマンド入力間違えたわ。


 ……? よーこが恐る恐る目を開けると、


 よーこが目を開けると、目の前には緑。カチョウの身体であった。

 その手には『ざんてつけん』が握られていた。


「ニンゲンヲ――ジブンヨリヨワイモノヲ、イッポウテキニホンキデコロソウト――」


 カチョウは青白い血管をこめかみに浮かべる。

 カチョウは激怒している。

 カチョウは『おたけび』をあげた!

 低い声色が轟音となって地震のように地面を揺らす。

 夜のコウモリオーク達が飛んで逃げていく。


 門番二人はその揺れで青ざめる。


 一瞬戸惑い動きの止まった石オークを受け止めた逆側、片方の丸太のような腕で捕まえて持ち上げると、そのグローブのような指先からからばきり……ばきり……と嫌な音がしてくる。


『ぜんしんのほねをくだく』。


 石オークが声にならない悲鳴を上げてもがこうとするが、逃げられない。


「アナタタチノオークデショウ。ウケトリナサイ」


 カチョウは叩きつけるように石オークを投げる。

 門番二人の方に全身の骨が砕かれて気絶した石オークが打ち捨てられる。


『石オーク。オーク言葉は変わらぬ意思。しかし意志はあっても、人間をためらいなく襲う下衆。オーク言葉にもとる輩デース』

 デイビッドボールが吐き捨てるように呟く。


「「ひっ」」


 門番二人は一緒に悲鳴を上げる。


 ――草むらにひそむ緑オークは、温厚で先に手を出しては来ないが、絶対に怒らせてはいけない。

 緑オークはその戦闘力は戦車でも対抗出来ない、という。


 振り向いてよーこに話しかけるカチョウ。

「ニンゲンヲコロスシュミハアリマセン。ウチノマスタートハチガウノデネ」

「は? あたしだって人間を殺す趣味とかないんだけど。何そのサイコパスみたいな言い方」


 カチョウがよーこに自分の身にまとっていた腰巻きからものをいかつい手をから開く。


「マスター。バンソウコウデス。ショクドクシテカラツケテクダサイ」

「わっ、何これ! クッセ! オーク用じゃないのこれ!」

「……ジミニショックデスヨ」


 悲しそうな顔をする。


「分かった分かったって! ありがとねカチョウ」


 よーこが門番たちに話しかける。

「アンタ達の負けっていう事でいいでしょ。中に入れてよ」


「ただの娘が緑オークを使いこなせるはずがない! メタオークめ!」

「あっそ。あんたらもういいから。『でんこうせっか』!」


 よーこが目に見えない速度で門番二人の首筋に的確に手刀を決める。

「か、は……や、はりオーク――」

 そう言って泡を吹いて倒れる。


「だから人間だっつ―の。先に襲ってきたのアンタたちだし、これ正当防衛だから街行くかんね」

『よーこ、オークボールを!』


「忘れたわ。よっと」


 石オークに空のオークボールをポコンと当てると、鈍い光とともにボールの中にすっぽりと収まる。


「マスター。アイテノトレーナーノモッテイルオークハウバッテハイケナイルールデス……」

 よーこがちょっとびっくりしたようにカチョウに顔を向ける。

「何言ってんのカチョウ。あたしさっき殺されかけたんだよ。そんなスポーツみたいなルール知らないわよ」

「ソ、ソレハソウカモ……」


「まあ、この石オークっていうのはザコっぽいけど、図鑑も埋めなきゃならないし。ついでに貰っておくに越した事はないでしょ」


 よーこたちは門番との戦いに勝った!


 よーこは腰からペットボトルを取り出すと、炭酸抜きのコーラを飲み干す。

「よし、と……」


つづく!

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