その3
「グオオオオオ!」
「な、なんて大きさなの……」
よーこは戦慄する。
――緑オークは巨大そのものであった。
自分が暮らしていたかという家を超えるかという巨躯。
よだれを垂れ流しながら口から収まらない牙を持ち、申し訳程度の布をまとっている。
そしていかつい腕には巨大なこん棒。
こんなもので殴られたら、一撃で人間の頭蓋骨など簡単に粉砕されてしまうだろう。
その口から低い獣のような声が響き出される。
「ニンゲン、サリナサイ」
シッシッと手を振られる。
『緑オーク。その外見と違って心優しく、争いを好まない。オーク言葉は『永遠の幸せ』デース』
「分かったわ。じゃあ行きましょう」
よーこは無視しててくてくと先に歩いていこうとする。
『待つでーす。ボクがこいつの顔面をクロスカウンターでブチのめすデース。弱らせた後に、よーこ、アンタがオークド博士から貰った空のオークボールで捕まえれば手下になりマース』
「え? 何か酷くない?」
よーこも少し悩む。オークボールがピョンピョン跳ねて不満を言う。
『酷くねえデース! オークにも序列がありマース! ボクは今ヨーコの中で一番格下のオークになってマース。先輩風吹かせる為にも緑オークぐらいは捕まえておきたいデース』
「勝手な話ね。でも気に入ったわ。いけ、デイビッド!」
よーこはオークボールを繰り出した!
ボワンと煙が出てきた後に、筋骨隆々のモヒカンが現れる。
だが、緑オークと比べると小さい。しかも大分弱そうである。
「ドウシテモ戦ウトイウノカ」
緑オークは深く目を閉じ、思案している。
出来れば戦いたくはない。
無益な血を流す戦いはしたくない――。
「ボクはお前をブチのめしてオークマスターに良いもん食わせてもらう為に先に進むデース。お前にはその道の屍になってもらうデース」
デイビッドはデンプシーロールの構えを取った!
それを見てよーこが止める。
「待ちなさいデイビッド。戦意のないものを叩きのめすのは趣味じゃないわ。緑オーク。どうやらこいつ悪いオークじゃないみたいね。アンタ私に付いてくる気はない? 私に付いてくれば世界中のきれいな花を見る事が出来るわよ。アンタこの狭い草むらの中で一生を終えるつもり?」
よーこは『かんゆう』を繰り出した!
「グググ……マサカソンナテイアンサレルトハ……コノ10ネンカンイチドモナカッタ……」
緑オークは困惑していた。
オークという生き物は案外臆病であり、その生息地帯も広くはない。
今の草むらの中だけで花を愛でる生活も悪くはないが、世界中を巡って旅をするというのも緑オークにとっては魅力的な提案であった。
「ワカッタ……」
「今よ! デイビッド! 『殴り倒す』!」
「オラァッ!」
助走をつけてデイビッドの強力なパンチが繰り出される! こん棒で防ごうとする、その棒でさえ砕き緑オークの顔面をグシャグシャに叩きつける。
「グアアアアアア! アアアア!」
緑オークが転がっている。
「今デース! オークボールを!」
「分かったわ!」
ずうんと大きな音を立てて倒れ込む緑オークによーこはポコンとオークボールをぶつける。
緑オークの姿は消えて、ボールの中にポトンと捕まった。
「ボクは歩くの面倒だからオークボールの中に戻ってるデース。緑オークはもう図鑑に埋まったからそれ以上相手にしなくていいデース」
「分かったわ。お疲れ様」
よーこはリュックの脇に入れた炭酸抜きのコーラを飲みほした。
「よし、と」
緑オークを捕まえた!




