その1
じゃんがりあん・よーこは女の子である。幼い頃に母親をなくして、父親の手一つで育てられた。
そして14歳になった。父親が部屋の中でよーこに話しかける。
「よーこ。お前は特別な子だ」
「知ってるわ!」
ぐっと手を握って答えるよーこ。
「14歳になったから旅に行ってくるという事ね!」
外に飛び出そうとするようこの手を父は掴む。
「よーこ! 前から思っていたがお前は全く人の話を聞かない。そもそもお前は家の中でゲームだけ育ってきた。得意なゲームはボンバーマン。いわばもやしだ」
「ほう。もやしですか。それにしても冒険に出る前にあれほどの栄養素の高い野菜に例えられるとは、流石としか言いようがない」
眼鏡をくいと上げるポーズを取る。
「もやしだから弱いんだよ! 意味の分からない反論でドヤ顔をするな! お前眼鏡かけてないだろ!」
「分かったわ。それで、冒険に出る準備って事は、何かくれるって事よね」
手をわきわきとさせる。
「親はお前の金づるじゃないんだヨ。でも、やる。こうしないと話が進まないからな」
「何これ」
「『オークボール』だよ。正確には『オークを捕まえて手下にするボール』じゃ。お前には今まで黙っていたが、この世界の外には様々な『オーク』がいる。オークは凶暴で凶悪で醜悪で劣悪で強いモンスターだが、弱らせてこのボールをぶつければ捕まえる事が出来る。お前にはこのオーク図鑑を埋めて欲しいんじゃ。そしてオークマスターになって欲しいんじゃ」
「オークボール? オーク図鑑? 全然要らないんだけど。あと使命とかいうクソみたいなものを娘に背負わせないで」
「そうじゃ。それこそがわしが果たせなかった使命……って要らないのかよ! クソ呼ばわりはないだろう! 持ってけよ!」
リュックサックに詰め込む。
「何でこんなにパンパンにリュックが膨らんでいる……」
「家にある食べ物と有り金全部入れた」
「お前なあ!」
「勝手にリュックサックに色々突っ込まないで。そのオークとか言うの全然興味ないし。外に出たらそもそもゲーセンに行くつもりだったし」
「だからお前が興味なくたってオークは道端でひょっこり出てくるんだよ。お前の中に入っているボールはわしが捕まえたオークが入っている。伝説のオーク『デイビッド・ゴハンシュトラウス3世』がな……そいつがお前の助けになってくれるだろう。エロ漫画界の鳴子ハナハルみたいにな」
父親が懐かしそうな顔をする。
「分かったわ。アンタの形見として持っていくわ」
「わしは死んでないんじゃ! でも、どうしても行くのかよーこ。外の世界には危険がいっぱいじゃぞ。わしだって危険だから引きこもっとる。引きこもってするゲームは楽しくないか?」
「ゲームは強いやつが居ないと楽しくないのよ! おとーさん弱いんだもん」
「お前が強すぎるんじゃ!」
「とにかく行くわ」
よーこの冒険は始まったのだ。




