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猫を踏んだ後に

作者: 星宮みつき

俺は高校に通っている秀樹。

最近家の近くに猫が多い。

近所の人が餌をあげているのか、捨て猫なのかはわからない。

その事件は秋の水曜日に起きた。

その日はいい天気で、猫たちも外でゴロゴロと日向ぼっこをしていた。

俺もゴロゴロしたかったんだが、遅刻しそうで走っていた。

そうしたら、道で寝ている三毛猫をふんでしまった。

ちょうどぴったりお腹を。

猫は


うぎゃ!


って言って逃げた。

俺はそんなことより学校に行きたかったから

あまり気にしなかった。

学校でそんな話をしたら、

「猫かわいそう」

「猫に謝りな」

と、批判された。

あの時は学校に行く途中だったから気にしなかったけど

その時は心の中で謝った。


『ごめんね。猫ちゃん』


この事件は何もなかったように忘れ去られ、

数日が経った日のこと。

その日は休みの日で、

友達とゲームセンターに行く予定だった。

その日も待合に遅れそうになったから

急いで走っていた。

ちょうど、信号待ちになった時にある貼り紙が目についた。

内容は


"この子を探しています!

可愛い三毛猫のそらです!

見つけたらxxx-xxx-xxxまでお願いします"


ということだった。

普通だったらきずかないはずだが、

俺は写真に気づいた。

俺が数日前に踏んづけた猫だったんだ。

俺は小声で


「ごめん」


と言って走って言った。

帰りにそこを通りかかった時、

やはり罪悪感が湧き出てきたもんだから、

俺はポスターの電話番号に電話した。

けど、繋がらなかった。

俺があの時遅刻しなければ…

もっと注意していれば…


……………


俺はもう一度その電話にかけた。

すると、なぜか繋がった。


「もしもし、先ほど猫のポスター見たんですけど……


その時、いう言葉をなくした。

だから、なんとなく


「その猫知ってるんです。」


「僕が…踏んづけてしまった猫です!すいません!!!!!!!!!!!」


と言った、

すると、


「どこでですか!」


というびっくりするような声。


「す、数日前です。xx交差点で…」


答えると、


「猫がいなくなったのは2ヶ月前なんです…

そして、その交差点とは何県ですかね……??」


俺自身もびっくりした。


「大阪です」


素直に答えた。


「な、なら良かったです…まだ府内ですね…

あの猫は…大切な猫なので

近畿地方全域に貼ったんです……」


自分は再びびっくりした。

それとともに

その猫をすごく大事にしていることがわかった。


「踏んでしまって…すいません。」


罪悪感がみるみると出てくる。

その後、猫探しの会話が続き、

電話は終わった。




その日から、俺の周りに猫がいなくなった。

いなくなったというか、逃げるのだ。

俺は猫の世界では

何がネットワークのようにつながりあっていて、

ニュースのように流れているのかな、と思った。

俺は考えて見た。

人間、猫を踏む のようなニュースが猫の世界で流れていたら…

危険人物になってしまっていたら…



だがもうそう考えている暇もない。

もう俺は高校生だ。

こんなことで悩みを抱える必要はない。


そう思った。


何も感じないごく普通の毎日が流れた。

ある土曜日、休日だ。

手紙が来ていたから取りに行ったんだ。


ポストには5枚の手紙が入っていた。

電気代、水道代。

その日は月末だったからな。


最後の手紙は見慣れないものだった。


真っ白い封筒だが、そこに赤い猫の肉球型のハンコが押してある。



"俺はこの時あの事件を思い出した。"


恐る恐る封筒を開けるとそこはすごく汚い字で、


"ひできさま

あなたはねこをふんだとききました

ほんとうでしたらのワープゾーンまでいらしてください

NNNじむきょく ほんぶ "


「つっ……」


俺は字の汚さよりも全部ひらがなだったよりも


"あのねこの件だったことにびっくりした"


NNN事務局本部ってなんだろう…


俺はネットで調べた。

調べると、NNNはねこねこネットワーク、ヌコヌコネットワークの

略らしい。


"NNNとは、猫好きの人間に猫(おもに野良猫)を派遣し、

飼い猫として幸せに暮らさせるため暗躍している謎の組織である"


俺はこの時気がついた。

俺はねこが好きだったことを。


俺はまず手紙に書かれていたワープゾーンを探すことにした。





俺の頭の中のワープゾーンは

ポータルのようなものだった。

だがそんなもの近所にはない。


家の玄関を開けるとそこには数十匹の猫がいた。

その猫は俺が靴を履いたことを確認し、一斉に出発した。


俺はこれもNNNの仕業だな、と思いながらもついて行った。

通行人からの目線が痛い。


そりゃ、ねこ数十匹を前に、

歩いている高校生がいたらな。

猫が案内してくれたのは巨大なビルの建設場所だった。


「デケェ…」

俺も都会に住んでいるが、こんな大きなビルは見たことない。

猫はまだまだ入っていく。


ちょうど休日だったから工事はしていなく、誰もいなかったから

俺も入って行った。

「おーい、秀樹!」

びくっ。振り向くと、そこには俺の父が立っていた。

袋を持っていたから、スーパーの帰りだろう。


猫も気がついた。


父はだんだん近づいてくる。怒っているようだ。

すると、何があったか、父は振り向いて帰って行った。

俺はびっくりして猫の方を見た。

猫は少しうなずいて、進んで行った。


「何をしたんだ?」


そうして猫について行った。

歩いている間にここがもう猫の世界だということに気がついた。

猫の家がたくさん立ち並んでいる。

道の一番奥には大きなビル。


あれがNNN本部なのだろう。

猫もそちらへ向かっている。


住人の猫たちもびっくりしているようだ。

ここにはあまり人間は来ないのだろうか?


俺は不思議に感じた。


不思議に思ったのは、全て人間の大きさだからだ。

なぜ猫の世界なのに人間用??


そう考えているうちにNNN本部についた。

大統領のような市長のような人が待ち構えていた。

立派な猫だ。


その横には……


あの時の猫だ。

こちらを見ている。


「あなたがひできさ?」


汚らしい日本語で聞いて来た。


「はい。」


「あらたがふんたろ?」


俺はなんて言ってるか分からなくなった。

多分 あなたが踏んだんですか?と言いたいのだろう。


「はい」


正直に答えた。嘘をついたらひどい目になりそうだから。


「あなたにいいたいことがありはす。」


そうするとあの三毛猫が出て来た。


「ありがとお」


?????

俺は何もしていないはずだ。

逆に俺が謝らないといけないのに。


「わたしをさがしてくれてありがとう」


やっとわかった。飼い主のことだ。


「帰らないのかい?」


「もうかえらなう」


「なぜだい?」


「ここにすむの」


俺はどんどん理解して来た。

よく猫は死ぬ前にどこかへ行ってしまうというが、

本当はここに来て天国のような暮らしを送っていることを。


俺はその三毛猫をなでた。

温かみを感じる。


「踏んでしまって、ごめんね」


小声で言う。

そのうちに、その猫の世界は消えていて、ただのビルの建設場所になっていた。

俺はホッとして振り向いた。


「これで大丈夫だ。」


謝ったし、やり残したことはない。

長い戦いだったな、と思い、

あの飼い主の元へ電話した。


「あの子は元気ですよ。

他の猫たちと一緒に楽しく暮らしています。」


「ありがとう」


少し泣いているようだった。




ピー


笛の音が聞こえた。すっと目を向けると

警察だった。


「そこに入ったらいけないぞ!不法侵入だ!」


俺はもう気力を失った。

猫に連れられて来た。とも言えない。


「早く!出るんだ!」


俺は一歩一歩足を進めた。


「すいません。」


もう最悪だ。


「お前ももうこんな歳なんだから!

少しくらい考えろ!!!!!!!!!!!!!!」


「すいません。」

「すいません。」

「すいません。」


俺は狂ってしまった。

「すいません。すいません。すいませんんっづつつつ!

すいませんすいませんすいませんすいませんん!!!!!!!!!!!!!!」


「な、なんだよお前…」


「すいませんっ!!!!!!!すいません!!!!」


俺は家へ帰り、ベッドへ入った。

明日は良い1日になりますように。



次の日、俺の家に子猫が二匹来た。

すごく可愛い猫だった。


もう俺はねこを踏んだりしない。


攻撃側ではなく、守る側なんだ。


俺はこのことがきっかけで

ねこをより理解することができた。

猫は人間を思い、人間は猫を思い、

人間がたとえ猫を傷つけたとしても、

猫は人間を恨まない。


猫が人間を傷つけたとしても、

恨まないようにしないとな。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >県内 大阪だと府では? ただ県に住んでる人だと間違えることはあるから、おかしくはないのかな。 >猫の手形 肉球型とかほかに言い方ないだろうか? >ベット ベッド [一言] いい感…
[良い点] 最後まで楽しく読ませて頂きました!
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