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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
97/207

天才が二人揃ったら

https://www.youtube.com/watch?v=BAipBlNEzG8

大きなひとみ

MD215年 8/5 13:38


「なんと言うことでしょう……ダストシュートを抜けると、其処は胃の中でした」


「何言ってんだお前」


 地面にちょこんと置かれた山坂の頭部に、田崎は呆れた表情で言った。


「いや自分自身に状況説明をだな……つーかてめぇはてめぇで何やってんだ、僕を壁の中に叩き込むとかよぉ!」


「あれはお前が降ってくるのが悪い」


「ったく、機嫌が悪いからって人に八つ当たりすんなよ……そんなにそこの魔族が死んだのが気に障──!?」


 山坂はそんな田崎に悪態を吐き、田崎の奥で白い布を掛けられた物体に目をやった。

 恐らく田崎の機嫌が悪いのは先ほど見たあの首が百八十度回転した死体のせいなのだろうと山坂は思っていた。

 その推測は正解だった。

 そして、今は口に出すべきではなかった。

 田崎はその発言を山坂が言い終わる前に、山坂の頭部を右手で掴みあげていた。


「うおおおおおお!!」


「てめぇは相変わらず他人に対する配慮ってもんが足りねぇな、殺されたいのか?」


「わ、悪かった! 悪かったから暴力に訴えるのはやめろ! 頭部が歪む!」

 

 山坂の頭部を掴む田崎の右手に力が入る。

 それに付随して山坂の頭部が軋む音が響き、山坂は思わず悲鳴をあげながら謝罪する。

 

「本当に反省したのか? お前はいつも口だけだからな」


「今回はマジマジ本気! 多分」


 頭部から、何かに罅が入ったような乾いた音が響く。


「だあああ! 悪かった本気で謝るから許せ!! これ以上素体をぶち壊すと永村が切れるんだよ!」


 音と同時に、更なる悲鳴が山坂から上がる。

 唾を飛ばし、目に涙を浮かべながら喚き散らす山坂を見て田崎は馬鹿らしくなったのか頭部を放り投げる。


「おい! もうちょっと丁重に扱え!」


「相変わらず負けてるときは弱気でそれ以外のときは強気になるなお前は」


「へへっ……ありがたくって涙がでらぁ」


「褒めてねーし涙も出てねーよ」


 周囲に散らばる残骸の中に放り投げられた山坂はすぐさま文句を言い、田崎はそれに呆れながらも多少の感心をする。


「まあ茶番はここまでで良いだろう、帰るぞ田崎」


「あ?」


「あ? じゃねーよ! 元々このリヴァイアサンに飲み込まれたお前を回収するのがこっちの仕事だったんだっつーの!」


「嘘だな」


「嘘じゃねーし、どういう根拠だボケ!」


 田崎はゆっくりと放り投げた山坂へと近づき、瓦礫の中からそれを拾うと近くの地面に置き自分もまた腰を降ろした。


「あの女が言ってたぞ、俺よりも優先するものがあると」


「あぁ? あの女……? あー……あの長老エルダー級のか?」


「名前くらい覚えてやれよ、いや俺も忘れたが」


「蝿の個別の名前なんて一々覚えるわけ無いだろうが、しかしお前よりも優先する事? 僕は知らんぞ、本当にそんな事言ったのか?」


 山坂の問いに、田崎はゆっくりと首を縦に動かす。

 それを見て山坂は頭の上に?マークを浮かべたような顔になる。


「言ったから言ってるんだよ、つーかあの女をこの中で暴れさせたのはお前じゃないのか?」


「え? いやぁ僕ぁ単にリヴァイアサンを釣る為の餌として使ったのであって暴れろなんて指示は……」


「本当だろうな」


「疑いすぎやろ……嘘吐くメリットあらへんやん!」


 田崎の言葉に山坂は頭を動かしながら否定する。

 山坂の否定に田崎は顎に手を添え、一つの考えに思い至る。


「となると、永村か?」


「だろうな、大方洗脳した時に何かしらの専用情報伝達ツールを埋め込んでたんだろ」


「相変わらず悪趣味だなあいつも……どうにかならんのか」


「本人的には趣味じゃなくて道具に更に有用な道具をくっつけただけだと思うぞ、あれはそういう奴だ」


 山坂はそう言い切ると、目で自らの周囲を確認する。

 少しの間目まぐるしく目が動いたかと思うと、ある一点で動きが止まる。


「……何やってんだ気持ち悪い」


「お前と一緒に行動する為に体が欲しいと思ってな、頭部だけだと何時放り投げられるかわからんし何処行くかもわからんからな」


「別に放り投げねえしどっか行ったりは──」


「しないとか言ったら殺すぞてめぇ、いいからそこの棚からその玩具持ってこい」


「へいへい……しょうがねえなってお前、これ……」


 生首がぐるぐるとしきりに目を動かす様に田崎はドン引きするが、山坂は一切それを意に介さず田崎の横にある崩れかかったスチールラックを見つめる。

 田崎は山坂の視線にしょうがなくスチールラックの横まで移動すると、そこに置かれていた物を見て思わず苦笑するのであった。


────────────────────────────────────────


「よし、三回回ってワンと言ってみろ」


「わんわんわーん、って誰が犬だ誰が!」


「すまんすまん、でもよぉお前の体……」


 数分後、田崎がスチールラックから持ってきた玩具と山坂の生首の合体手術は完了し……。

 今ここに、人面機械犬が誕生した。


「全く……何が悲しくてこんな玩具の機械と合体しなきゃならんのだ、容量が圧倒的にたりねえ!」


「むしろしっかり適合させた俺の技術と動かすお前の技術に脱帽だよ俺は……」


 自分の体を確認するように、鉄で出来た犬の体で器用に二本足で立つ山坂を見て田崎は引き攣った顔をしていた。

 そして体を確認し終わったのか、少し経つと山坂は笑みを浮かべ田崎の足を軽く叩く。


「んじゃ帰るぞ」


「それは断る」


「はぁ!?」


 田崎の足を叩き、一人奥へと歩き始めた山坂だったが田崎の予想外の言葉に思わず山坂は壮絶な表情で振り返る。


「一発殴らないと気がすまない奴が居る」


「おい、まさか本当に魔族に対して情が沸いたとか言うんじゃねえだろうな?」


「わからん」


「わからんってお前……」


「正直あいつが死んだのはあいつが弱いせいだ、それは仕方ないと思っている」


 振り替えった山坂に対して、田崎は腰を地面に下ろし金属片を右手で掴み上げる。


「弱い奴は死ぬのは世の中の流れだ、それはわかってる」


「だったらお前別に……」


「分かってるが、今の俺がそれに納得するかどうかはまた別の話だ。 それに……歌が上手い女が居てな、またあいつの歌を聞きたい」


 田崎は思い返していた。

 先ほどのメハメハのあの悲痛な叫びと、顔を。

 田崎の考え、信念では弱い奴が強い奴に殺されるのはしょうがないことだ。

 だが……利用されてその力の強さを示さずに死ぬのは、許せない事なのだ。


「だからお前には悪いが──」


「俺は行くってか? そっから先の言葉を口に出したらまじで管理者の人数を減らす事になるってわかってんだろうな」


「ああ」


 田崎は力強く頷き、握っていた金属片を握り潰していく。

 その鉛色の金属はゆっくりと、飴がひしゃげていくようにゆっくりと田崎の掌に納まるサイズへと形を変えていく。


「管理者として、お前のそんな決定を通すわけにはいかん」


「だが今のお前には俺は止められないだろ?」


「当然その通りだ、故に……優先順位を変えよう、一刻も早くここから脱出するのではなくお前と俺が気持ちよくなった後に脱出する、どうだ?」


「お前何時からそんなに柔軟な発想できる様になった?」


「元からだ馬鹿め、それにさっきの話で出たお前よりも優先する物ってのも気になるしな、単純に興味が沸いただけでお前が管理者から除外されるのを嫌ったわけじゃないんだからね!」


 山坂は器用に犬の体で腕組をしながら言うと、最後の言葉を言い切る前に後ろに振り返る。

 だがその尻尾は大きく振られており、その尻尾には山坂の気持ちが大きく現れていた。

 そんな山坂を可愛く思ったのか、田崎は山坂に飛びつくと頭を撫で始める。


「お前って奴はーー! 普段は屑な癖にこういう時は良い奴ぶりやがって! この!」


「おわっ、な、何しやがる! 離せ! きしょい! 後何か金属がぶつかっていてぇ! はげる!!」


「照れるな照れるな!」


「やめろーーー!」


 結局、田崎が山坂を離すまでに3分の時間を要し……メハメハが連れ戻されてから30分以上が経過するのだった。



何だかんだ仕事が忙しいので初投稿です

未来がどうなるのかは分からないがとりあえず一生懸命働くか……七月に無職になってるかどうか皆で賭けよう!


人面機械犬    ①


アーティファクト・クリーチャー


人面機械犬が戦場に出た時、クリーチャー一体を対象としその上に+1/+1カウンターを一つ置く。


0/1


「ところでさっさと人間の体に戻してくれねえか?」


「なんで」


「何か……思考がボディに引っ張られて……このままだと完璧に犬になりそう」

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