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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
96/207

悪役の血

https://www.youtube.com/watch?v=tCS_RzpNIMU

Blood of Villain

MD215年 8/5 12:42


「メハメハが二百歳……!?」


 その言葉に、田崎は改めて驚いた。

 田崎から見たメハメハの外見はどう見ても十代前半の少女のものであり、とてもそんな風には見えなかったからだ。

 またメハメハと過ごした期間は一ヶ月にも満たないが、その触れ合いの中でも彼女にはそんな年齢を生きているような雰囲気はまるで感じ取れなかった。

 正しく歳相応の、明るく元気な女性であった。


「信じられるか! どう見たってあいつは──」


「えぇ、見た目は年端も行かぬ少女と言った感じでしょう? 我々も彼女の見た目の維持には気を使っていましてね」


「気を使う? おい、それは一体どういう……」


 田崎は未だ紫色のフードを被った三人の歌によって、田中と踊り続けながらもその顔は険しさを増し三人と同じ外套を着たマルフォスへ問いかける。


「やめて! あたしを連れ戻しに来たんなら、さっさと連れ戻せばいいじゃない! その二人に、タザキに……そんな話しないで!!」


 だが口を開きかけたマルフォスにメハメハは大声で叫び、次の言葉を告げさせない。

 先ほどまで壁際に背中を貼り付けるようにしていた彼女が、今度は少しずつマルフォスへ近づいていく。

 その顔には確かに確固とした意志を感じさせるものだった。


「確かに私達がオリジナルから受けた指令は貴女を連れ戻せと言う事です」


「それなら……!」


「えぇ、貴女がどういう存在なのか彼らに告げる理由は私達にはありません。 ですので今は貴女を連れ戻すのみとしましょう」


 そうマルフォスの言葉を聞き、メハメハは安堵の表情を浮かべる。

 少なくとも満面の笑みなどではないが、それでも話されたくない秘密を田崎と田中にバラされるよりはマシなのだろう。


「では帰りましょうメハメハ様、貴女のお力で世界を救う時です」


 マルフォスはそう言うと、メハメハへゆっくりと近づいてゆき右手を差し伸べる。

 手を差し伸べられたメハメハは少し怯えた表情を浮かべ、田崎をちらりと見る。

 当の田崎は踊りながら、それでも彼女の両目をしっかりと見据える。


「ごめんね、タザキ。 お告げの通りにすれば上手く行くと思ってたんだけど……駄目みたい」


「諦めるのか?」


「……!」


「そうです、メハメハ様! 我には話の展開が急すぎてよく分かりませんが、少なくともそんな連中について行く必要はありません! お逃げください!」


 田崎は短く、だが強い気持ちを込めてメハメハへ告げる。

 メハメハはハッと顔をさせると、次に田中の言葉が耳に入る。

 そして再び差し伸べられているマルフォスの手へ視線が移る。


「お戻りいただけないと言うのであれば、その二人の体を捻じ切ります」


「ぬおおおお!?」


「く、首と腕と足の関節が何か変な角度に……!!」


 そんな二人の言葉が気に入らなかったのか、マルフォスは左指を打ち鳴らすと背後の三人の歌声が変わる。

 すると田中と田崎の二人から同時に悲鳴が上がる。

 今までゆるやかなワルツを踊っていた二人が突如肉体の限界を無視したようなポーズを取り始めたのだ。

 田崎は背中を限界まで反らし始め、右腕は一回転しそうな程に捻り上げられ、足も垂直に上げられ更に百八十度以上の角度をつけようとしていた。

 田中もまた同様に異常な姿勢を取り、二人はこれ以上体を曲げると肉体がへし折れてしまうであろうことは容易に見て取れた。


「や、やめて!! 分かった、戻る、戻るから!! 二人に酷い事しないで!」


 二人の様子を見たメハメハは、咄嗟にマルフォスに差し伸べられた手を取り嘆願する。

 止めてくれと、あの凶行を止めろと。

 その言葉にマルフォスはにこやかな笑みを見せた後、もう一度強く左指を打ち鳴らした。

 ……直後、肉体が壊れる音がオケアノスの中に響いた。

 そしてその直ぐ後に、二つの肉体が地面に崩れ落ちる音が響く。


「え───?」


 その音に、メハメハは二人が立っていた地点に目を移す。

 倒れている。

 一人は頭と踵がぴったりとくっつくような姿勢で、もう一人は首が捻じ切られ、あらぬ角度を濁った瞳で見つめていた。


「うそ──うそ────なんで、あたし、戻るって……」


「申し訳ありません、貴女を連れ戻す指令だけを受けていると言いましたがあれは嘘です。 あの二人の処理も我々の仕事でした」


「いやあああああああああああああ!! タナカ!! タザキィ!!」


 二人の元へ走り出そうとするメハメハの左手を、マルフォスはしっかりと掴む。


「元より余所者はこのオケアノスの中には居れない掟です、本当は動力炉への投入が望ましかったですが──」


「馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿バカばか!!!! あたし帰るって、帰るって言ったのに!! どうして…………!!」


「先ほども言いました、彼らを元から始末するように指令を受けていたのです。 それにあの田崎という男、あれはオリジナルと同じ──」


「戻して! 速く二人を助けてよ!!」


「出来ません」


 マルフォスに掴まれ、振りほどこうとしたがそれでも腕を振り解けないメハメハは今度はマルフォスの胸倉に右手を叩き付ける。

 それは少女特有のか弱い腕力でのものであり、マルフォスはびくともしないが彼女はそれでも何度も胸を叩いた。


「助けてよ、助けてあげてよ! だって、だってあの二人は何も悪い事してない! なのに、こんな……酷すぎるよ…………」


「仕方ありません、彼らはこの地の法においては生きていてはいけなかったのです、生者は一人だけでよいのです」


「そんな……」


「では行きましょう、世界平和が貴女を待っています」


「……ごめんね、タナカ、タザキ」


 徐々に胸を叩く手が弱くなり、メハメハは次第にマルフォスの胸に顔を埋めながら涙を流す。

 そんな彼女をマルフォスは抱きかかえると、田崎達が本来進むべきだった道へと彼女を抱いて消えていく。

 その後に続いて、紫色の外套を着た3人もまた消えていった。

 そして通路に残ったのは、虚空を見つめる二つの死体だけだった。


────────────────────────────────────────


 ごろんごろん、と金属質な、それも不均一な物体が転がる音が通路の中に響く。

 周囲では人魚達がばたばたと騒がしくやっているが、今転がっている物体には関係のないことだ。

 その転がる物体の名前は、山坂。

 先ほど海上で味方であるはずの天照の加護を得られず、無残に頭部だけとなりミサイルへと投げつけられた男だ。


「あー、くそ、とんだ貧乏くじだ」


 自身の頭部を小人に転がされながら、山坂は愚痴る。

 そして目線をその小人へと移す。

 筋肉質、上半身が全裸の小人達。

 その小人達は何故か、海中に没した自分の頭部を拾い上げ山坂を修理したのだ。

 だがその行為に山坂は感謝などせず、むしろ悪態を吐くばかりだった。


「大体何なんだお前らは、何で僕の言語能力とかを直せる? もう失われた技術の筈だぞ? あん?」


 と、先ほどから問いかけてはいるのだが当の小人達はそれを無視し只管に山坂の首を転がしていく。

 無論周囲で作業や怒号飛び交う人魚達に隠れるようにしてだが。


「ちっ、言葉は通じてる筈なのに何でこいつら返事しねぇんだ」


 一向に反応を示さない小人達に、山坂は呆れて目を閉じる。

 すると目を閉じた数秒後に顔色が悪くなり、顔面蒼白となる。


「しまった、酔った……気持ち悪い……でも吐き出す胃袋とかはねぇからなぁ……あぁでもエクィローに居る僕がゲロ吐くのかこれ?」


 そんな風にゲロ吐く一秒前と言った顔で悩んでいると、ふいに自分が持ち上がるような感覚を覚える。

 それに違和感を感じ、ふと目を開けると山坂の視線は確かに先程よりも一段高くなっていた。


「そう、まるで小人達に持ち上げられているような……」


 持ち上げられていた。


「おい! 何で僕を持ち上げてる!」


 山坂の怒鳴り声も意に介さず、小人達はせっせと山坂を運んでいく。

 

「何とか言えよ何とかよぉ!」


「ナントカ」


「よーし、その喧嘩買ったぞ! ぶっ殺してやる!」


「メハメハ ノコト タノム」


「あぁ!?」


 小人達の返事を聞き、山坂の顔に青筋が立つ。

 山坂は頭部だけだというのに、口汚く小人達を罵る。

 だが小人達から帰ってきた言葉は、山坂にとっては想定外の言葉であり。

 そして想定外の行動であった。


「サラバ」


「あ、ちょっ!? おい、またか────!!」


 山坂の頭部よりも一回り大きいパイプの前に小人達は立ち止まると、別れの言葉を告げ、山坂の頭部をその中へ放り投げる。

 盛大に金属と金属がぶつかる音を立てながら、山坂は悲鳴をあげ落下していった。



────────────────────────────────────────


「おい」


「…………」


「今の許せるか?」


「…………」


「許せねぇよな」


「…………」


「少なくとも、俺は許せねぇ」


「……」


「なら、やるべき事があるよなぁ!!」


 通路に、男の冷めた、だが内に大いなる怒りを秘めた声が響く。

 男が語りかけるのは自身の隣に横たわる女。

 首があらぬ方向へ曲がり、腕も足もひしゃげている。

 だが、男は構わず言葉を続けた。


「……復讐だ!!」


 男は自身の体に残る激痛を無理やり意志の力で押さえ込み、上体を起こす。

 折りたたまれたような形をしていた男の体は、ゆっくりと状態を上げると地面に手を付き、立ち上がる。

 そして顔を女に向けると、一瞬悲痛な顔をするが直ぐに顔を元に戻し、拳を握り締める。


「あーーーーーーーーーーっ!」


 そんな立ち上がった男の元に、悲鳴を上げながら生首が頭上から落ちてくる。

 その生首は、地面に落下する前に苛ついていた田崎の拳により壁に叩きつけられた。



来週からまた千葉に行くので一週間くらい投稿が止まるので初投稿です

すまぬすまぬ…許しておくれ


復讐に燃えた再誕  赤緑④


ソーサリー


あなたの墓地にあるカード一枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。

その後プレイヤー一人を対象とし、手札に戻したカードのマナコストと同じだけの点数のダメージを与える。

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