知るべきだった真実を知らなかったら
https://www.youtube.com/watch?v=8WEeVrR4IVA
Persona 5 OST 55 - Life Goes On
MD215年 8/5 11:38
「久しぶり、タザキ!」
頭に被っていた紫色の外套を降ろすと、その人魚の少女──メハメハは右手を高く掲げた。
「ハーイ!」
「お、おう……たーっち」
メハメハが右手を上げると掛け声を出す。
その掛け声に合わせ、慌てて田崎も彼女の右手へと右手を伸ばし、手を叩く。
両手は小気味良い音を周囲に響かせると、メハメハは手を下ろしじっと掌を見つめる。
「……どうした?」
そんな様子に、田崎は心配そうにメハメハを見る。
「嬉しくって」
「嬉しい?」
「うん、あのね……あたしタザキに話したい事が一杯あるの! とっても一杯、とってもよ!」
田崎の心配そうな問いかけに、メハメハは首を横に振ると田崎へ抱きつく。
田崎の胸に丁度顔を埋めながら彼女は震える声で、だがどこか幸せそうにそう言った。
「話したい事? つってもお前、昨日色々話しただろ? 次の公演の話とか……」
「ううん、違うの! それはあたしじゃなくて……でもあたしでもあって……」
「あん?」
昨日、という言葉にメハメハが反応する。
彼女にとっては四日ぶりの再会だが田崎にとってはまだ昨日の出来事なのだ。
例え昨日出会った彼女が今目の前に居る本人ではないとしてもだ。
メハメハの答えに首を傾げる田崎、そんな彼にメハメハの後ろで存在感を殺していた男が近づく。
「それに関しては我が説明しよう」
「げぇっ、ホモ!」
「だからホモではないわ! 我だ我! 田中!」
男が近づくと、街でのやり取りが頭を過り田崎は悲鳴を上げる。
そんな悲鳴を聞き、男は自身の顔へ左手を掛けるとその皮を引き剥がした。
皮はベリベリと小気味良い音を立てながら外れていき、その皮が外れた後には東京の忍、田中の顔があった。
「全く……分かり易く角まで少し出していたというのに、どうして気づかんのか」
田中はそう言って、額に生えた二本の大きな角を触る。
「一体どうやって隠してたんだその角」
「業務上の秘密! いや我もう抜けシノビなので隠す必要も薄いのだが」
「抜けシノビ……? いや、深く聞くのはよそう、話がややこしくなる」
「感謝する、では事情を説明しよう。 後いい加減メハメハ様から離れような? な?」
あからさまに隠し切れなさそうな角を見て、田崎が疑問の声を上げるが田中はそれについての追求を避ける。
そしてメハメハに抱きつかれたままの田崎に苦言を呈すると、名残惜しそうな顔をするメハメハを引き剥がす。
「と言っても我も説明できるほど事情を把握はしていないのだが……数日前にお前と口論してから我はあの紫色の外套を着た者達に拉致されたのだ」
「あぁ、あの時やっぱり攫われてたのか。 いや追おうとしたんだがあっという間というか、あの目に驚いてたというか」
「……良く分からんが、ともあれ拉致された後に我、手ぬるい拷問を受けていてな」
「えぇ……」
メハメハを引き剥がすと、田中は両手で何かを握っているような形を作ると右手を右耳に、そしてもう一方の手も反対の耳へと持っていく。
「それでなにやらこんな……へっどほん? とかいうのを付けられて歌を聴かされただけなのだ」
「歌?」
「うむ、恐らくメハメハ様の歌だとは思うのだが……よくはわからん。 その後歌を聴き終わった我の様子を見た奴等は何かしか話し合った後で我を部屋に監禁したのだ」
ヘッドホンを耳に当てる動作を取っていた田中は、それを外す仕草をすると次に両手を縛られた様な動作をする。
「その後我の華麗な技で脱出──」
「しようとしたけど出来なくて、結局あたしが助けたの」
「お前が?」
「そう、あたし」
「言わない約束だったじゃないですかー! やだー!」
田中の言葉を遮って、メハメハが真実を告げる。
彼女の言葉に田中は目を点にし、地面に転がりながら叫ぶ。
「ま、あれは置いておくとしてお前は何でその監禁場所に居たんだ?」
「うん、あのね? 四日前にお告げがあったの!」
「……頭は大丈夫か?」
「ほ、本当なんだってば! 田中が信者の皆に捕まるのも、オケアノスの中に神様が入ってくるのも全部お告げで聞いてるのあたし!」
お告げという言葉に田崎は自分の頭を指差し、冷めた眼差しと口調で語りかける。
だがそんな風に言われたメハメハは引かず、両腕をぶんぶんと勢い良く振りながら言う。
「だってお告げって……なぁ?」
「いやぁ我もそう思うのだが、実際助けられた身としては否定しづらく。 何せ我の居場所や見張りの位置、誰が何をしているかまでぴたりと当てるし」
「これマジ?」
「だから本当だって言ってるでしょ!」
田中と田崎は顔を合わせ、お互いに何とも言えない顔をするが当の本人は本気の様で必死に腕を振っている。
そんなメハメハに耐え切れなくなったのか、田崎は首を横に振るとメハメハの肩に手を置く。
「分かった分かった、よくはわからんがそのお告げとやらでお前が動いてたっぽいのは分かった。 んで俺に話したい事ってのは?」
「うん、あのね? タザキを外に出せってそうお告げがあったの、だからあたしについてきて!」
「外に出す? いやそろそろ帰ろうかと思ってたから別にいいが……どうやって外に出るんだ?」
田崎の問いかけに、メハメハは今自分達が居る場所の更に奥を指で示す。
「あのね、今あたし達が居る場所は貯蔵庫って呼ばれていてここからもっと奥に行くと動力炉って言うのがあるの、その手前にいつも交易をする皆が使うオオダコが居るの」
「成る程、そいつに乗って出るってわけか」
「そうなの!」
メハメハが脱出方法を指定し、田崎がやる気を見せるようにガッツポーズを取る。
そんな二人に水を差すように田中が小さく右手を上げ、呟く。
「でも我、水中で呼吸とか出来ないのですがそれは……」
「え、そうなの!?」
「いやむしろ呼吸できる方が稀だと思うのですが」
「知らなかったー……あ、でもタザキは大丈夫なんだよね!? 外に出ても!」
「大丈夫、だとは思うが……水圧も俺は問題ないだろうし」
田中の呟きに、大げさに驚くメハメハ。
オケアノス内部が彼女にとって世界の全てであり、知識を得るのもまた内部からのみである。
その為彼女は人魚以外の生物の体の仕組みについて知らなかったのだ。
そんな風に驚きながら、彼女は田崎は大丈夫なのかと問いかける。
すると田崎は曖昧な返事をしながら頷く。
「なら大丈夫ね! 田中は……何とか頑張って!」
「え、我の扱い軽くない? え? メハメハ様?」
「ファイト!」
「水死体は拾ってやる……」
「溺れ死ぬの前提?」
田崎の大丈夫という言葉を聴き、メハメハは右手を握り頭上に掲げる。
田中についての心配は最早彼女の頭から消えうせ、田崎が外に出ることのみを優先していた。
そんなメハメハの対応に心なしか目尻に涙を浮かべる田中を田崎は哀れな目で見ていた。
「それじゃあオオダコの居る場所まで隠れて進みましょう! レッツゴー!」
「いい加減エクィローに帰るかー」
「え、マジで我は努力で何とかする流れ!? あ、ちょっ! 我を置いていかないで! 待ってーー!」
そして田崎の手を掴むと、メハメハと田崎は奥へと進んでいき。
田中は呆然としながら、ぐいぐい奥へ進んでいく二人を追いかけていくのだった。
「……そういや、メハメハが何で二人いるか聞いてねえな」
ふと、彼女に手を引かれながら歩いていると田崎はそんな事に気づく。
だが……。
「まぁいいか」
と、軽い気持ちでその気づきを流す。
後に知ることになる真実を、彼はまだ知らない。
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「んじゃ、その手順でいいんだな?」
「うん、問題ないよ。 何か他に質問はある? 山坂君」
「いいや、正面からぶつかって殴り倒すって言う案は正直面白みの欠片も無くて好きじゃあないが……」
「だからって前みたいにあんな無駄な資源使って無意味な道具使った無駄な作戦しなくてもいいでしょ」
「これだから勝利至上主義者は……お前には遊びが足りん」
「ゲームである以上結果を目指すべきだと思うんだけどなぁ」
海上。
ハワイ廃墟にあるビルの屋上にて、白衣を纏った二人が会話をしていた。
一人は山坂憲章、最終戦争前、そして最終戦争が終わり人類が滅んだ今、管理者として兵器部門を司る男。
そしてもう一人、永村博太。
最終戦争前は金融、経済関係を支配し、今は資材の管理や世界の動向、その他田崎や山坂が行わない雑務の全てを引き受ける男。
「ふん、まあこんな平行線の話なんてしても無意味だしもう止めるぞ」
「君が売った喧嘩なんだよなぁ……」
「うるせぇ! いいから作戦開始の号令を出せ!」
「はいはい……それじゃあwhaling作戦、始めるよ~」
「おっしゃぁ! それじゃあ久しぶりに、暴れますかねぇ!! 巨大戦車、発進!!!!」
山坂はあからさまにいらついた態度を永村に取るが、永村はそれをスルーし作戦開始の号令を行う。
その号令に合わせ、山坂はビルの屋上から飛び降りながら、その名を叫んだ。
「カモオオオオオオオオオオオン! 魂刺し!」
遅れて申し訳ない…ので初投稿です
アモンケット発売を記念して、今回挿絵を描いていただいたMike Burns氏が初めてMTGアーティストとしてデビューしました
氏が描かれたカードはSoul Stinger/魂刺し というクリーチャーカードです
http://mtg-jp.com/cardlist/list/AKH.html
このリストから是非探してみてください!
皆でMTG、しよう!(販促




