現実を侵す夢を見たら
明日と言ったな、あれは嘘だ
https://www.youtube.com/watch?v=iYAaN9EMpE0
Requiem for a dream
私は、夢を見ていた。
どこまでも白が続く、色の無い世界の夢を。
その世界の陸地、孤島に私は一人で立ちながらあの巨人とオケアノスの戦いを眺めていた。
「─────!」
轟音が響く。
それに続いて、オケアノスもまた悲鳴を上げた。
オケアノスの背中に備えられた攻撃用の巨大な筒が、巨人の拳によって崩れていく。
巨人の腕に無数にある目は、そんな様子を観察するように眺めていた。
「……凄い」
不意に、私の口からそんな言葉が零れ落ちる。
だがそれは私の偽らざる本当の言葉なのかもしれない。
私の目に映る巨人。
球体の顔の無い頭部を持ち、上半身は人間に似て……だが下半身は昆虫の様な形をしている。
頭部には天使が持つと言われる輪を浮かべ、腕には無数の目が備わっている。
「凄い……凄い、凄い!!」
私は昂揚感に包まれ、両手を空中へ掲げた。
するとそれに呼応する様に巨人の輪が輝き、オケアノスの肉体へ張り付いていた小型巨人とでも言うべきか。
そんな小さな巨人の眷属達が一斉に暴れ始める。
ある眷属はオケアノスに備え付けられた筒の中へと入り込み、またある眷属はオケアノスの鱗を引き剥がしに掛かる。
「────ぃゃぁぁあああ!」
眷属が鱗を引き剥がす度に、中に住んでいる人魚達が外の海へと放り出されていく。
放り出された人魚達は数秒後には海に叩きつけられ、血糊となってしまう。
だがそんな末路を迎えられたのはまだ幸せなのだろう。
その眷属達は引き剥がした鱗の中に居る人魚達を見つけると、頭上に浮かべる輪を輝かせる。
すると、中に居た人魚達の肉体が徐々に崩壊を始める。
「うそ、嘘……! いや、やだ、誰か、たすけ──」
自らの手や足がぼろぼろと塵になってゆくのを見た人魚が狂乱し、逃げ出そうとするが……。
それは叶わず、最後には逃げ出した姿勢のまま白亜の塵となり、崩れ落ちる。
「ひ、怯むな! 押し返せ!!」
そんな声に、私は直ぐに今見ていた光景から別の光景に興味を惹かれる。
私が視線を移した先では、眷属に対してガトリングヤドカリやそれを操る兵士達が攻撃を行っていた。
ヤドカリが放った攻撃に眷族は身をたじろがせ、紫色の血を流しながら海面へと落下していく。
……なんて酷い事を。
「よし、やったぞ! このままあの巨人も退けるんだ!」
眷属の一体を退けた兵士達は勢いづいたのか、オケアノスに空いた穴から見える巨人へ狙いを定めた。
それと同時に、巨人の攻撃で身をたじろがせていたオケアノスもまた攻撃に加わろうとしていた。
体の各所の筒が巨人へと狙いを定められる。
「撃てぇーーーっ!」
兵士の叫び声と同時に、オケアノスもまた炎を放つ。
背に備わった巨大な筒からむ数の炎が巨人の眼前から放たれる。
「危ない!!」
私は、何故かそう叫んでいた、巨人の身を案じていた
だが私の心配は不要だった
オケアノスから放たれた炎は、巨人の体をすり抜けたのだ。
いや、すり抜けたという言い方は間違っているのかもしれない。
この巨人は、元から虚ろなのだ。
目には見えているし、相手から触れはするが……こちらからは干渉する事が出来ない虚空。
「現実の王」
それが巨人の名なのだろう。
再び私の口から知らない単語が飛び出した。
だがそんな事が起きても私は一切不思議に思わなかった、その名を私は知っている気がしたからだ。
いや、そんな事すらどうでもいいのだろう。
そう言うかの様に、現実の王は反撃とばかりに左拳を海面に擦らせる様にしながらオケアノスの顔面へ掬い上げるように拳を叩きつけた。
「キュォォォォォォン───」
拳を叩きつけられたオケアノスは顔を、体を仰け反らせながら海面に叩きつけられる。
その衝撃で海水が跳ね上げられ、私の立つ孤島に水しぶきが降り注ぐ。
水しぶきは現実の王にも降り注ぐが、それを気にせず王は昆虫の足を動かしオケアノスへと近づいていく。
トドメを刺す為だ。
「オケアノスが、負ける」
その光景に、私は息を飲んだ。
数百年の間……私達を留めて来た海の王が、現実の王によって敗北する。
そして私の自由を。
「あたし……もう、自由になれるの? 歌う事を強制されないの? 姉妹の皆が死んでいくのを、もう見なくてもいいの……?」
自由になれると思ったとき、あたしは幸福感に包まれていた。
そして、それを与えてくれるであろうこの巨人に恩義すら感じていた。
……オケアノスの内部で死んだ人魚の仲間達について、全く可愛そうとすら感じていなかった。
魔族は、死んで当然なのだと。
そう……私は感じていた。
「そう、そうなの……あなたの言う事が正しいのね!」
巨人を見て、私は頷く。
それに呼応する様に、現実の王もまた頭上の輪を発光させる。
その輪はオケアノスの霊力を奪い、海水に溶けていた霊力を無に還し、私を塵へと還した。
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MD215年 8/5 06:06
「夢?」
夢の中で自らの体が塵になった瞬間、メハメハは目を覚ました。
メハメハは瓦礫で埋もれた食道の一角で寝ており、隣には田中が眠っていた。
そして彼女はじっと毛布代わりに掛かっていた布を見つめていたが、暫くして自身の右手。
その手のひらに文字が書かれていることに気がつく。
「何……?」
「メハメハ様?」
その字を読もうとした時、不意にメハメハの横から声が掛けられる。
「きゃっ!?」
彼女は驚き、飛び上がると咄嗟に右手を隠す。
「何もそんなに驚かなくても……我は大変悲しい」
「あ、あっははは、ごめんタナカ」
「……何か良い事がおありで?」
「え?」
「何も無いのならいいのですが……その、我には何か憑き物が取れたというか、何処と無く晴れやかな顔に見えまして」
驚いたメハメハに田中は悲しげな表情を見せる。
そんな田中に思わず苦笑を返すメハメハだが、その顔を見た田中にそんな事を問われる。
メハメハはその質問に少し時間を置いた後、こう答えた。
「……うん、いい夢を見たの」
「夢?」
「うん、あたしが自由になる夢」
「ふむ……いや我はそういう夢とかは見ない性質ゆえ良く分かりませんが、良い夢だったのなら良かったですな」
「うん、とっても……良い夢だった」
メハメハの答えに田中は不思議そうに顔を傾げるが、彼女が幸せそうならそれで良いと思ったのか深くは追求しなかった。
「そうですか……いや、あそこから助け出したとはいえ昨日の今日でそんな笑顔を向けられるとは、流石は歌姫様ですな! 我は感服しました!」
「あははは……そう?」
「そうですとも! ……と、声を大きくしすぎました。 ともあれ少し速いですが出発しましょう、何時追手が来るとも限りません」
田中はそう言って立ち上がると、紫色の布を外套代わりに纏う。
その格好は、以前メハメハの周囲をうろついていた紫色の外套を纏った信者達と全く同じであった。
田中が立ち上がると、メハメハもゆっくりと立ち上がり紫色の外套に身を包み、フードを深く被った。
「メハメハ様、行きましょう。 御身はこの我が命に代えてもお守りいたします」
「うん、頼りにしてる」
彼女の返事に、田中は軽く頷くとメハメハを先導するように歩いていく。
メハメハも田中に付き従う様に歩きながら、ふと右手の掌を眺める。
そこには、赤い字で『T』と書かれていた。
デッサン絵が届いたので急遽間に合わせました
絵に対して中身が無いって?知ってるわ! なので初投稿です
このデッサン絵を描いてくれたMIKE BURNS氏は今日から行われるアモンケットスポイラーにて初めてMTGのアーティストとして参加します
皆もMTG、しよう!!(販促
速く色がついた絵が見たいなぁ




