日輪の輝きを受け、今必殺の技を放ったら
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Fate/Grand Order -OST - 臨戦
MD215年 8/4 9:00
「掛かった!!」
アデルの言葉と同時に、ハワイに設置された巨大な釣竿が猛烈に引っ張られる。
リールが猛烈な勢いで宇宙紐を放出していく。
このまま行けば一分もせずにリールは空になるであろうという勢いである。
「ちっ……予想よりも引きが強いな」
そう愚痴をこぼすと、山坂は空中に浮かんだウィンドウを触りながら釣竿にリールを巻く様に指示を出す。
指示を受けた釣竿は即座にリールを巻き始め、引きずり出されるだけだった宇宙紐が徐々に巻き取られていく。
そして次第にリールを巻き戻す力とオケアノスの力は拮抗し、宇宙紐がピンと釣り合った状態となる。
「魚風情が、人間様の科学力を嘗めるなよ! 矛盾エンジンに火を入れる、一気に釣り上げるぞ!」
「いよいよお出ましってか……! トウキョウ湾では俺を街中まで打ち上げやがって、目に物見せてやらぁ!」
「パラドクスワード解凍! 本日の燃料はこれだ!!! 『命を大事にしない奴等は大っ嫌いだ! 死ね!!』」
「もやもやするなぁその台詞!」
山坂の矛盾した言葉を引き金に、釣竿に搭載された矛盾エンジンが唸りを上げる。
考えるという機能を搭載されたこのエンジンは、矛盾した言葉を言われるとそれに対して考え始め、その内に知恵熱を出し無限のパワーを引き出すのである。
今、山坂によってその矛盾ワードを与えられたエンジンは知恵熱を出し始め……それに合わせて均衡していた糸が一気に山坂達側へと引っ張られ始める。
「ふはは! 通常なら釣り糸に緩急を付けて魚との勝負を楽しむんだろうが生憎この僕は無粋でな! 一気に釣り上げてやるわ!」
宇宙紐が高速で巻き上げられ、徐々に海底からその巨体が水を切り水面から現れ始める。
「……来たか!」
「相変わらず、でけぇな……!」
この日、山坂達が用意した釣竿の全長は2キロ。
これはおよそ富士山、日本最高峰の高さを有する山の半分の高さに匹敵する。
地上から見上げた場合、頂上は雲の上を突きぬけ見えることはほぼ無いだろう。
それくらいの高さである。
だが、この日その釣竿が釣り上げた獲物は自身よりも更に巨大な獲物であった。
「──────!」
水を切り、海面から空中へと跳ね上がった巨体に二人の言葉は途絶えた。
正しく圧巻という他の無い巨体が、空を覆っていた。
二人を照らしていた陽光は瞬く間に闇へと変わり、巨大な水しぶきが降り注ぐ。
「────やばい!! 施愚上威を動かせ!」
「──へ?」
「想像よりもサイズがでかすぎる! このままだと着水した時の津波に巻き込まれるぞ! にげるんだよぉー!」
山坂はそう叫ぶと、自身が乗っていたセグウェイのハンドルを前に倒す。
するとセグウェイは即座にエンジンが唸りを上げ、山坂が乗る薄い鉄板の下に付けられたジェットが爆炎を放つ。
「エンジン全開! パラドクスワード解凍! 『前にバックする』!」
ジェットは爆炎と共に爆音を轟かせると、即座に走り始める。
走るというよりはほぼジェット飛行ではあるが。
そんな風に山坂が走り去るのを唖然とした表情でアデルは見ていた。
「逃げ足はほんと速いなあいつ……ってやべぇ、俺も逃げ──」
逃げ足の速さと屑さには定評がある山坂が一目散に逃げ出す様に見惚れていたアデルだったが、そろそろ自分も逃げようと思ったその時。
「あ、これ無理な奴だわ」
と、自らの眼前を覆いつくす圧倒的な質量の水を目撃し諦めの境地へと至るのであった。
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「くっ……!」
マルフォスは体勢を整えると、周囲に居た紫色の外套を着た人魚達へと叫んだ。
「状況報告!」
「ほ、報告します! オケアノス内部に、敵が侵入しました!!」
「敵? どういうことです、オケアノスに衝撃を与えここまで揺れを響かせるような相手ということですか?」
「わ、分かりません! 現状オケアノス口内で暴れる女が居るということ以外、状況は不明です!」
人魚の一人がそうマルフォスへ伝えると、更にもう一人の人魚が血相を変えて部屋へと走りこんできた。
「ご報告します! お、オケアノス海面に浮上! 覚醒状態で暴走中です!!」
「メハメハはどうしました」
「それが……先日から行方が知れず、その──」
「ならば今すぐ捜索しなさい、そして見つけ次第即座に儀礼を開始しオケアノスの沈静化、いいですね?」
「りょ、了解!」
「並びに現在暴れている女に対してはオケアノスの抗体を差し向けなさい、歌も許可します」
「了解!」
マルフォスは二人の人魚にそう告げると、モノクルを左手で触りながら思案する。
突然の衝撃、揺れ……そして敵の襲来。
一体何故、どのようにして深海にて休眠状態だったオケアノスを覚醒させ内部に侵入してきたのか。
そして数日前から行方を眩ませているメハメハに田崎という男。
考える事は山のようにあったが、少なくともやるべきことは一つである。
「私は司令室へ行きます、貴方達も各自戦闘準備、その女や他に敵が侵攻してくる様なら命を掛けて防ぎなさい」
モノクルを触る手を止め、マルフォスは部屋に残っていた複数の人魚達へ指示を告げる。
その彼の目は、物を見るような冷酷さを窺わせた。
だがそんな彼の指示にも人魚達は盲目的に頷き、部屋から退出していく。
それはまるで意思の無い人形を感じさせた。
「しかし敵ですか、オケアノスを覚醒させここに兵を送り込める程の……」
そう呟くマルフォスは、少しだけ口角を釣り上げていた。
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「ぐにょぐにょぐにょ」
「ぐにょ」
「ぐにょぐにょ」
オケアノス口内、見渡す限りに見えるのは金属的な壁面と最奥に見える食道へと通じるであろう穴。
そしてそれを塞ぐように食道から湧き出てきたオレンジ色をしたヒトデの様な機械。
体の中央に大きな口があり、器用に二本の触手で歩きながら彼女……天照へと迫っていた。
「きもいーー!!」
天照は叫び、自らの背後に太陽を思わせるほどの眩い光球を呼び起こした。
その光球の眩さにヒトデもどきは一瞬身をたじろがせたが、直ぐにそれ程の脅威ではないと判断したのか扇形に陣形を広げる。
そして体の中央に空いた大きな口から、黒いヘドロの様な体液を一斉に天照へ向け発射する。
「To be or not to be that is the question(生かすべきか殺すべきか、それが問題だ)」
体液が発射された瞬間、天照は右足で力強く金属の大地を踏みしめる。
そして左手へ白の霊力を集め、掲げる。
掲げた左手を右下へ、そして左へ動かしながら言葉を紡ぐ。
紡がれた言葉、動作が彼女の背後にある太陽へと送られた。
「Not to be. That is the answer (在るべきではなく、消えるべきだ。 それが答えだ)」
ヒトデもどきが飛ばした体液が天照へ触れる瞬間、太陽はより一層眩く輝く。
それはこの世界における第7の太陽が誕生した瞬間だった。
「神の怒り/Wrath of God」
オケアノスの口内は一瞬にして3000度を超え、天照以外の存在──床と天井以外はだが──は即座に蒸発した。
太陽の輝きが収まった後、口内には無数の焼け焦げた後とヒトデもどき達の影だけが床に残っていた。
「全く……監禁されて頭の中身弄られてやっと外に出られたと思ったらやらされることが釣り餌とかアマちゃんマジ憤怒なんですけど!」
天照はそう言うと、自らの腰に括りつけられている透明な紐に触れた。
宇宙紐、宇宙を支えるという一説を元に作られた人類が生み出した最高の素材の一つ。
それは決して切れず、磨耗せず、無限に伸びる。
そんな素材を首輪代わりにされ天照は怒りの形相を作ろうとするが、直ぐにそれも極上のアへ顔に変わる。
「あへへへ……でもそんな物扱いが嬉しい~、きゃっきゃ~」
と、頬に両手を添えながら悶えていると食道へ繋がる通路から再びオレンジ色のヒトデもどきが現れる。
だが再び太陽が発光し、それらも即座に塵すら残らぬ影へと変わる。
「……ったく、ご主人ちゃまの命令に喜んでる所だったってのに」
第二陣が蒸発したのを確認すると、天照はうんざりした顔をしながら左足を前へと進める。
「五輪剣顕現、戦争と平和、飢餓と饗宴、火と氷、肉体と精神、光と闇を束ね我が威光を示せ」
ゆっくりと、歩を進めながら天照は両手を合わせ合掌する。
その後ゆっくりと両手は個別に小さな円を描く。
するとその動作にあわせ、背中にある小型太陽の前面に五本の両刃の剣が現れた。
それぞれが赤と白、黒と緑、赤と青、緑と青、白と黒の面を片刃ずつもつ剣である。
「さぁ~て、リヴァイアサンの開きを作っちゃうゾ♪」
剣が完全に展開しきると、天照は右頬に右人差し指を当て大地を思いっきり蹴った。
それは先ほどまでのゆっくりとした速度ではなく、目にも止まらぬと言っても過言ではない速さである。
その速度を維持したまま、天照は食道へと降下していく。
移動したまま、剣や太陽で周囲を切り刻み、焼き尽くしながら。
それは正しく日本神話に伝わる太陽の化身そのものであった。
「ギュービー、三分クッキング~」
場所が場所でなら、彼女は間違いなく今世紀最高の笑顔として表彰されただろう。
ゆっくりと食道を降下しながら、空中で無軌道にあらゆる物を切り刻む剣を動かし天照は笑っていた。
数ヶ月前であるならば彼女はこの様な笑みを浮かべはしなかっただろう。
だが今の彼女にとっては与えられた命令をこなす事だけが、至上の喜びなのだ。
その至上の喜びが、彼女に最高の笑顔を作らせていた。
「え、ちょっ!?」
だがその落下中、切り刻まれた痛みからかオケアノス内部に振動が発生し、今まで垂直の状態を維持していたオケアノスが、今度は体を水平にしたのだ。
その為に天照は後頭部をしたたかに打つ事になる。
「いったぁ~い! んもう、突然重力方向を変えるのは反──」
頭を左手で抑えながら、ゆっくりと上体を起こす天照は愚痴の台詞を完全に言う事が出来なかった。
言い切る前に彼女の頭部目掛け、榴弾が叩き込まれ爆発する。
その爆発の勢いは凄まじく彼女を元来た口へと押し戻すように天照を吹き飛ばしていく。
「は?」
だがそのまま天照は口へと吹き飛ばされず地面に着地する、そして爆煙が晴れた後全身に光を纏いながら怒りの形相を見せる。
目は血走り、眉間には青筋が立ち、犬歯をむき出しにし、地獄の鬼すら逃げ出す様な。
先ほど浮かべた極上の笑顔とは正反対の表情を浮かべていた。
更に彼女が吹き飛ぶのと一緒に移動していた太陽も大きさと発光の強さを増し、今にも周囲を焼き尽くさんと轟く。
「え、何? 生意気に下級の虫け──」
煙が晴れ、天照は前方を視認した。
前方、長い食道の中には無数の砲台と背にガトリングを背負ったヤドカリもどき、そして珊瑚で出来た鎧を着た人魚達が立っていた。
砲台は食道のあらゆる箇所から生え、人魚とヤドカリもどきは食道に転がる船や機械の残骸、時には生物の死骸に隠れながら天照へ無数の砲弾と魔術を打ち込んだ。
天照がそれらを視認し、口を開き言葉を紡ごうとする前に再び顔、もしくは全身へ向け攻撃が殺到していた。
「ら──が────!」
砲弾が、魔術が彼女の体に直撃する度、彼女の体を覆う黄金色の粒子が宙を舞う。
そして一度飛んだ粒子を覆い隠すかのように、天照が居る付近一帯は鉛玉と青の魔術が殺到する。
「────舐め──んなぁ!」
だが、その攻撃も長くは続かない。
降り注ぐ攻撃を一蹴するかのように、太陽が発光しかき消す。
その一瞬、攻撃が止んだ瞬間に五本の剣が太陽から射出され、砲台やヤドカリもどき、そして人魚達を刺し貫いていく。
「全く……服が汚れちゃったらどうすんのよ、アマちゃん特注のしか着ないんだからもう少し気を使ってよね!」
攻撃から抜け出した天照はそう言うと、傷一つ無い自身の服を手で軽く払い周囲を見渡す。
彼女が当初攻撃を受けたとき、周囲には50を超える砲台があったがその全てが剣によって切り刻まれ、その機能を果たす事は出来なくなっていた。
またヤドカリもどきや人魚達も同様に切り刻まれ、息のある者は一人も居なかった。
彼女が生かしておいた一人を残しては。
「あ、やっだ~ほつれちゃってる~」
彼女は服の様子を見ながら、ゆっくりとその人魚の元へと歩いていった。
鯨の死骸を太陽が蒸発させ道を作ると、その先にそれは居た。
剣によって四肢を一本ずつ地面に磔にされ、最後の一本が腹部へと深々と突き刺さっている。
「やっほー、元気してる?」
「ば、化け物……め……」
その言葉に、天照の目に暗い光が灯る。
「がはぁっ!!」
天照は腹部に刺さった剣の柄を足で踏みつけ、剣を揺らす。
「褒めてくれてあ・り・が・と、んで死ぬ前にさ~……ちょ~っと情報吐いてくれない?」
「ぐあああっ! あぁっ!」
「舌噛み切って死のうとしたりしても無駄だから、もうあんたアマちゃんの許可が無いと死ねない体にしちゃった♪」
そう笑顔で言うと、天照は背中の太陽を発光させ人魚の左腕を蒸発させる。
「───────!!」
人魚は言葉にならない悲鳴をあげる。
「は~い、それじゃあ次は腕を復元しまちょうね~、焼かれる痛みも味わいながら元に戻して、そしてまた焼きましょうね~」
腕を蒸発させた天照は、次に左腕があった部分に目をやる。
するとゆっくりとゆっくりと地面の影となった左腕が再生されていく、影から炭へ、炭から骨へ、骨から肉へ。
「ひっ、ひっ……ヒッ!!」
「さ、楽しい尋問の始まりでちゅよ~? 速く死にたかったら速めに答えまちょうね~?」
人魚が情報を吐くのに、一分は掛からなかった。
とりあえず描いてもらう絵について物凄い長い詳細な説明を送ったので初投稿です。
何時頃届くんですかね?
神の怒り/Wrath of God ②白白
ソーサリー
Bury all creature
全てのクリーチャーを埋葬する




