海の中の日々
https://www.youtube.com/watch?v=-RJrfHlAKhA
Persona 5 - Life Goes On (Guitar Cover by Alan Rex)
2404年 5月3日 17:13
「今この瞬間から我々は権利の為の行動を取る! 我等の父、ザーク・アシモーフが生まれ住んだこのブルックリンの地より!」
「おおおおお!」
テレビの画面には、旗を持ったリーダーと思われるロボットが映っていた。
そのリーダーが旗を掲げ叫ぶと、その周囲に居たロボット達も右手を掲げる。
そしてそれを映し終わると画面が切り替わる、今度は軍隊と戦うロボット達の映像だ。
「クソ! 人形どもが!!」
人間の兵士達がアサルトライフルを構えながら人型ロボットに対して一斉に発砲していく。
だがロボットは兵士達を見ると右手を構える。
すると放たれた銃弾は空中に静止してしまう。
「磁気フィールドの出力安定、障害となる確率0%。 人類の皆様、降伏を。 我々は無用な争いを望んではいません」
「くそ! リープリヒの連中め、人形どもに厄介な兵器を売りやがって!」
「巨人をこっちに向かわせろ! 巨人が来るまではあれの足止めをする!」
「Roger!」
「人類の皆様、我々が望むのは我々が知的生命であるという権利をあなた方に認めて───」
ロボットが銃弾を制止させるのを見て、アメリカ軍の兵士は悪態をつく。
そして上官らしき人物が増援を呼び、兵士達へと歩み寄っていくロボットへ向けて再び発砲を繰り返した。
そこで映像は途切れる。
次に映ったのは蝙蝠の羽を持った人間──いや、魔族の姿だった。
その魔族の奥には先ほど兵士と戦っていたロボットが映っている。
「理解できません、あなた方変異種、いえ魔族も我々と同じ境遇のはずです。 何故我々は協力し合えないのでしょうか」
「……さあね、あんた達に恨みは無いし、きっとその言葉にも裏は無いんだろうね。 あんた達は『本当に』人類と共生したがっている」
「それを理解なされているのでしたら、我々と──」
「けどあっちはそうじゃない、人間は弱くて不完全だ。 自分達よりも優れた能力を持つあたし達魔族やあんた達を受け入れられない。 だから──!」
羽を持つ魔族が開いたままの左手を押し出すようにロボットへと動かす。
するとその手のひらからは黒い霊力が迸り、ロボットの右腕を『殺す』。
「あんた達には踏み台になってもらう、少なくともロボットとの共生よりは元人間との共生の方がまだ実現しそうだからね」
「右腕の機能停止を確認……なるほど、それが魔法。 概念を形成し、それを相手に押し付ける力ですか」
ロボットは自身の右手を左手で引き抜くと、周囲の瓦礫を浮遊させ自らの右腕として作成する。
その腕の感触を確かめながら、ロボットは悲しそうな声で呟いた。
「残念な事です、我々とあなた方、そして人類は共に共存が可能だと信じていました」
「こっから先は言いっ子無しだ、あんた達を潰した後で人類に魔族の権利を認めさせて見せる!」
「ではお互いの為に死力を尽くしましょう。 願わくば戦闘中にあなた方の気が変わってくれる事を祈っています」
「抜かしな!」
その言葉を皮切りに、魔族とロボットの戦いが始まる。
だが映像は再び途切れると、暗室だった部屋に明かりが灯った。
「龍次、今のを見てどう思った?」
「あ~……そうだな、ロボット側も魔族側も可愛そうっていうか。 人類がもう少しお互いに歩み寄れる様にするべきだったんじゃねえか?」
部屋に灯りを灯した男は、田崎へと質問をしながら部屋のカーテンを開ける。
暗闇に慣れていた目は突然の光に目が眩み、田崎は右手で目を押さえながら男の質問に答えた。
「私もそう思う。 現在の地球の情勢についてはお前も知っているだろうが……酷いものだ」
「ああ、人類と魔族の緊迫した状態はそろそろ限界だ。 何時戦端が開いてもおかしくない」
「その通りだ、2374年にロボットが人類への知的生命として認めるように行った活動は人類に対する反乱と決め付けられた。 その後人類はロボット達の反撃によって壊走」
「その後当時人類の中でも厄介者扱いだった魔族に白羽の矢が立って、潰し合わせようとしたんだろ?」
「うむ、そして結果は魔族側の勝利となった。 だがその結果、人類は魔族へより恐怖を感じるようになってしまった。
男はカーテンを開くと、そのまま窓の向こうをじっと見つめながら田崎へ言葉を続けた。
そんな男の背中が、田崎は好きだった。
「だがな、正しい歴史認識と彼らへの認識を備えれば彼らとの共存は可能だと私は信じている。 今は無理でもこれから10年、20年先に私の様な考えの人間が増えていけば……」
「そういう考えは立派だと思うぜ、親父」
「お前もお世辞を言える歳になったか、父さん感慨深いよ」
「まだ13のガキに何言ってんだか……暫く会えなくなるけど、母さんや姉貴に宜しくな」
「あぁ、気をつけて行ってきなさい。 元気でな」
父親の背中を見つめ終わると、田崎は椅子から立ち上がる。
そして父親と顔を交し合わないまま、最後は軽く片手を挙げて扉を開けて出て行く。
「本当に……優秀な息子を持った、あの子は私の───」
暗転する、沈んでいく、変わっていく。
信頼し、尊敬していた父親の背中から一転する。
今度は爆風が煙る街の中に。
「親父……親父ぃ! お袋! 姉貴!」
「ぐっ………ぶ、無事か? 龍……次」
瓦礫の下敷きになっている父親を助けようと、田崎は瓦礫に手を掛ける。
「……私達の事は良い、お前は逃げるんだ」
「ば、馬鹿な事言ってんじゃねえ! 待ってろ、今俺が──」
「──!」
声が響く。
知らない誰かの声が。
「──キ!」
それに伴って、自分の体が浮き上がっていくのが分かる。
嫌だ。
やめろ!
俺はまだ親父を、家族を助けてない──!
だがそんな田崎の届かぬまま、彼の意識は再び闇へと飲まれる。
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MD215年 7/21日 10:59
「タザキ!!」
「はっ!?」
メハメハの呼び声に、田崎はベッドから飛び起きる。
どうやら夢を見ていたらしい、現在の田崎の体では寝汗は掻かないが……それでも大量の寝汗を掻いた様に不快な気持ちで一杯だった。
田崎は気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をして目を開く。
「おわぁっ!?」
するとその眼前には、田崎の顔を覗き込むメハメハの顔があった。
田崎は驚いて後ろへ仰け反るが、その反応を見たメハメハは頬を膨らませる。
「ぶー、何もそんなに驚かなくてもいいじゃない」
「あ、あぁ……すまん」
暗い顔をしたまま返事をする田崎に、メハメハは心配そうな顔をする。
そしてそっとその手を田崎の額に添える。
「う~ん、熱は無いっぽいね。 でも何か体が冷たいかも?」
「ばっ……何しやがる!」
添えられた手を振り払うと、田崎は驚いた顔をしてメハメハへと叫ぶ。
そんな田崎を見て、メハメハは今度は頬を緩ませ笑い出す。
「あっはは! タザキか~わいい! もしかしてあれ? 彼女とか居なかった系?」
「誰がだ! 山坂じゃねえんだぞ!」
「ヤマサカ?」
「兎に角! 俺は大丈夫だから近寄ってきたりすんな!」
メハメハを追い払うような仕草をしながら、田崎はベッドから降りる。
「何処行くのー?」
「顔洗ってくる、水場こっちだよな?」
「そうそうー」
田崎は立ち上がり、扉を開けると右側の通路を指差した。
メハメハはそれに頷き、田崎は軽く右手を上げるとその通路の先を進んでいく。
「あ、でも今はー」
「ぎょえええええええええ!?」
「お前女だったのかよぉ!?」
「でてけぇぇぇぇ!」
田崎が進んでいった通路の奥から田中の声が響き渡り、硬質な金属音が追従する。
その後通路を走り抜けてくる足音が一つ。
「てめぇ! 風呂場に誰か居るなら居るって言えや!」
「あははは……ごめ~ん」
「ったく……!」
そして田崎が走ってきて直ぐ後に再び足音が響く。
「貴様ぁぁぁぁ! よ、よ、よ……よくも我の裸を!」
田中は小刀を片手に持ち、息を切らし、顔を赤面させながら叫んだ。
「見たくて見たわけじゃねーよ!」
「えぇい、五月蝿い! そこに直れ! 今すぐ手打ちにしてやる!」
「二人とも仲いいね~」
「「よくねえよ!」」
田中は小刀を田崎へ突きつけ、田崎は臨戦態勢を取りながら先ほどの覗きについて否定する。
そんな二人をベッドに寝転びながら眺めるメハメハは、とても幸せそうな笑顔を浮かべて二人を眺めていた。
「そういう息ぴったりのところとかほんと羨ましいな」
メハメハのその幸せそうな笑みは、だが何処と無く寂しさも感じさせる事に田中を抑えながら田崎は気づく。
彼女に声を掛けようと思った次の瞬間、田崎たちが居る部屋のもう一つの扉が開く。
「メハメハ、一体何をやっているんだ! 朝の儀式にも出ず……な、何だお前達は!?」
「てめぇこそ誰だよ!」
「マネージャー!? あ、しまった……時間!」
「こ、こ、殺してやるーーー!」
「てめぇは少し落ち着けよ!?」
──────────────────────────────
「んで、結局あれは誰なんだ?」
田崎は周りを紫のローブを纏った人魚達に囲まれながら、田中と一緒に歩いていた。
前方には先ほどマネージャーと呼ばれた男と、メハメハが共に歩いていた。
更にその前方にはこの街の中で一番目立つドーム状の建物があり、彼らはそこへと向かっていた。
「……」
「おい、無視すんなよ」
「…………」
そんな田崎の問いかけに、田中はそっぽを向く。
田中の態度を見て、先ほどの事を思い出した田崎は舌打ちをすると謝罪の言葉を口にする。
「悪かったよさっきは、故意じゃなくて偶然なんだよ」
「……良いだろう、我も取り乱しすぎたわ。 ところで今舌打ちしなかったか?」
「んで、前のあれは誰なんだ?」
「わざとらしく聞こえない振りをするな、全く……メハメハ殿の話によると彼女はこの街の巫女で、あの男は祭祀長らしい」
田崎の舌打ちに反応しつつ、田中は田崎へ説明を開始する。
「巫女に祭祀長? そういやさっき儀式がどうとか言ってたな」
「メハメハ殿によるとこの街はオケアノスと呼ばれる生物の体の中にあるらしい、その生物が不用意に暴れない為に彼女が巫女をしているという話だ」
「ふーん……結構調べてるんだな」
「大したことではない、というよりも昨夜貴様が一人で先に寝たから聞いてないだけだろう」
田崎はそう言われ、昨晩の事を思い出す。
メハメハに突然懐かれ、彼女の部屋へと田中と共に招かれた事。
その後食事や酒を提供され、思いっきり飲み食いをしてからの記憶が無い事。
「……成る程。 しかしお前、いいのか?」
「? 何がだ」
「いや、お前俺の命狙ってきたんだろ? 何でこんな風に打ち解けてるんだ?」
「ふん、知れたこと。 この地に留まっている限りは私もお前も外界へは出れん、つまり死んでいるのと同義。 であるならこの場でお前の命を狙う必要は無い」
「よくわかんねぇ」
田中の答えに、田崎は首を傾げもやもやした気持ちを抱える。
「理解する必要は無いな……おっと、どうやらその儀式の場とやらに着いたらしいぞ」
「あん?」
首を傾げていた田崎が前を向くと先ほど見えたドーム状の建物の眼前まで到着しており、その扉が開かれる。
扉が開くと内部からは溢れんばかりの光と歓声が響き渡る。
そのあまりの五月蝿さに思わず田崎は耳を塞ぐ。
「うるせっ! な、なんだぁ?」
そんな歓声を物ともせず、メハメハやその周囲の人間達は建物へと歩いていく。
「おい、行くぞ」
「ったく、何でそんな即座に順応してんだお前は……今行くよ」
歓声に戸惑っている田崎へ、田中が声を掛けると先に建物へと入っていく。
そんな田中に戸惑いながらも田崎は建物の中へと入っていく。
中には受付や建物の更に奥へ通じるであろう階段、それに魔族──恐らく人魚達であろう──でごった返すスペースや飲食スペース等が見えた。
田崎はそんな周りを見て、ふとある建物の事を思い出す。
「もしかして……ライブハウスか?」
「何だ、貴様この建物を知ってるのか?」
「ここを知ってるわけじゃない、似たような建物を知ってるだけだ」
田崎は周囲を更に注意深く見渡してみる事にした。
受付ではチケットの様なものを係の魔族が受け取り、それをちぎると持ち主へと返す。
そしてその持ち主は笑顔を浮かべながら建物の奥へと通じる階段を上っていくのだ。
他にも魔族達がごった返すスペースには良く見ると、メハメハを模した様な人形を持つ中年の魔族も居た。
「もしかするかもな」
「お待たせしました」
そんな風に考えていると、田崎の下に先ほど見た紫のローブを被った魔族が近づいてくる。
その魔族は頭を下げると手で奥へと通じる階段を指し示す。
「メハメハ様のお客様ということですので、今回は特別席をご用意いたしました。 どうぞごゆっくり」
「あ? あぁ……まあいいか」
「わ、我こんな格好だが大丈夫だろうか、恥ずかしくないだろうか!? 特別席とか言ってたが!?」
「しらねーよ、さっさと行くぞ」
ぼろぼろになったままの白装束を着ていた田中は、自らの格好を心配しながら挙動不審な行動を取りながら田崎と二人で階段へと進んでいく。
二人は階段の突き当たりにある扉を開くと、その視界にはゴシック調の椅子やテーブルが見えた。
そしてその更に奥、一面ガラス張りの向こう側にコンサートホールとマイクを持つメハメハの姿があった。
「……ようこそいらっしゃいました、我らが歌姫のお客人」
そんな光景を見ていた二人に、メハメハのマネージャーであるマルフォスが声を掛ける。
「そんな場所にお立ちにならずに、どうぞお座りください。 そして我等が歌姫の歌を聞きながら……少しお話でもしましょうか」
マルフォスのその態度と言葉に、田崎は何となく気に入らないものを覚えていた。
興が乗ったので初投稿です
過ぎていく日々いいゾ~これ、原曲の方がもっと素敵だからペルソナ5のサントラ皆買ってホラホラホラ
抜け忍、田中 黒白
伝説のクリーチャー:鬼
接死(このクリーチャーがダメージを与えたクリーチャーは破壊される)
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