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人類ガバガバ保護記   作者: にっしー
ハワイ編
75/207

沖縄を統治したら

MD215年 7/20日 12:16


 神とは、一体何だろうか。

 人は皆一様に何かに縋る時に神の名を口にする。

 救い、恐れ、あるいは願望を叶える為の呪文のように。


「キシャアアアアアアアアア!」


 神とは、一体何だろうか。

 霊力マナが溢れる時代、人々の生活は豊かさを極め、およそ神をも恐れぬ行為にすら手を付けた。

 神とは、一体何だろうか。


「g5¥」


 私が思うに、神とは無意識的な恐れや異質さを表す言葉である様に思える。

 人が想像する神とは、自らの想像を超えた力を持ち、あらゆる事を可能にする存在だろう。

 だが時に、人は称賛する時にも神と言う言葉を用いる事がある。

 それは卓越した技術や技法、自らを越えた異質さを目にした時に口から突いて出るものだ。

 ならば、今私が映し、そして見ているものは人間が言う『神』に他ならないのではないだろうか。


「───────ッ!」


 私が空中に投射しているホログラフィックウィンドウには、エクィローが所有する三大装置三神、その一つであるマンジェニが映し出されていた。

 場所はアフリカ大陸、マンジェニは自らの眷属を無数に従えながら、この地に生息するワームと争っていた。

 だがこの神としては、ワームと争っているという気持ちは微塵も無いだろう。

 それほど戦力の差は歴然としていた。

 ワームはその長い胴体を用い、マンジェニの無数にある触手の一本を締め付けるがそれは何の効果も齎さず、神は漫然とした移動を続けた。


「驚いた、マンジェニの全高は2000メートルを優に超える……その巨体に挑んでいくなんて」


 永村様は団子屋に備え付けられていたベンチに座りながら、戦いの様子をじっと眺めていた。

 私は永村様へ向けていた意識を、再びウィンドウへ戻した。

 ウィンドウには未だマンジェニの触手へ巻きつくワームが見えていたが、そのワームの体が徐々に白色化していく。

 この現象を私は知っている、これは白化と呼称されている。

 白化は、魔族──人間からの変異種、並びに霊力の影響を受けた生命を指す──の体内から霊力を吸い取り、塵へと返すという現象である。


「とはいえもう長くは無いな、白化が始まった。 持って数秒だろうよ」


 山坂様がそう言うように、ウィンドウに映っていたワームは白化が始まった3秒後に塵へと帰結した。

 マンジェニはそんなワームの存在などまるで無かったかのように、緩慢な足取りを続けていた。


──────────────────────────────


「ブラボーブラボー、やっぱり力こそパワー! でかくて強いのは良いよなぁ!」


 田崎は団子屋の軒先、そこに備え付けられたベンチに山坂、永村と共に座りながら、一人手を叩いていた。

 ペスが今まで映し出していたマンジェニのムービーを見て、思わず楽しくなったようだ。

 そんな田崎を見て、二人は『またか……』と言った様な呆れ顔をしていた。


「マンジェニの現状報告は以上となります、進軍速度を1%から上昇させますか?」


 そんな田崎へと、ペスはいつものように無機質な声で語りかけると進軍速度の上昇について尋ねた。

 現在マンジェニの進軍速度は1%に設定されており、これはアフリカ大陸を一月に10%白化させる速度である。

 本来の速度はこの100倍だが、アフリカへと転送されてしまったマンジェニを本来の速度に戻すのは管理者達の本意ではなかった。

 そもそもマンジェニをアフリカへ送るつもりすら彼らには無かったのだ、全ては山坂の不手際である。


「いや、そんな事はしなくて良い。 現状維持だ」


 田崎はペスの言葉に首を横に振り、現状維持を伝えた。

 ペスはそれに頷くと、空中に浮かぶウィンドウに次の項目を映し出した。

 沖縄についてである。


「では、先日支配下へと置いた沖縄についてのご報告です」


「待ってました!」


 田崎は再び手を打ち鳴らし、はしゃぐ。


「まず沖縄の人口ですが、およそ5000名です。 構成する人員は大多数が魔族であり、日本固有の魔族……妖怪の鬼と呼ばれる種族が大半を占めています」


「鬼ぃ? 鬼ってあの角が生えてて肌の赤い?」


「伝承での鬼の姿はそうですが、現在鬼と呼ばれる種族は伝承と多少の一致がある程度の姿です。 主に1本か2本角を有する、と言った程度の一致ですが」


 山坂は御伽噺に出てくる様な鬼を思い出し、ペスへと問う。

 ペスは山坂への返答をしながらウィンドウへ鬼を映す、映し出された画像には額や頭から角を生やし、口を閉じていても見える犬歯を備えた人間が映っていた。

 男も女も角と犬歯以外は殆どが人間とそっくりであり、昔話で伝えられるような赤や青の肌ではなかった。


「殆ど人間と見かけは同じなんだな……おぉ、ナイスでか乳!」


「童貞はこれだから……」


「よーし、殺す!」 


 山坂は白衣の内側に両手を突っ込むと、愛用の二挺拳銃を取り出し田崎へ向ける。

 それに応じる様に田崎も銀色の液体が入った試験管を左手に取り出し、両者の間には緊迫した空気が流れる。


「君ら元気だねえ……やるなら迷惑掛からない場所で仲良く喧嘩しなよー」


「「はーい!!」」


「こっち来いオラァン! 今日という今日は貴様を殺してやる…!」


「馬鹿が! 戦闘用に調整された俺を嘗めるなよ!」


 二人は互いの武器を構えたまま、団子屋から離れていく。

 その様子を達観した目で見る永村に、ペスが心配そうな声色で問いかける。


「大丈夫でしょうか」


「大丈夫でしょ、別に素体が壊れたってあっちの本体が死ぬわけじゃないし」


「いえ、関係性の話です。 管理者同士の関係にもし亀裂が生じれば……」


「今日は驚かされることが多いね、君が人間の関係性について言及するなんて。 そんな機能はつけていないはずだけど?」


 ペスの言葉に、永村は心底意外そうな顔を彼女へ向ける。

 彼女を見る永村は、いつものにこやかさは無くただ鋭い雰囲気が漂っていた。


「確かにその様な機能は備え付けられていません、先ほどの発言は計画遂行という観点からの言葉です」


「ならそんな言葉は不要だ、君は計画遂行に必要な情報の収集と計算だけしていればいい。 機械の分際で人間に口出しするなと前にも言った気がするんだけどね」


「申し訳ありませんでした、それではご報告を続けます」


 その言葉に、永村は再び笑みを作りペスの報告へと耳を傾けた。


「次に政治形態についてですが、沖縄は現在拝金主義国家になっており、金銭を大量に保有する者が文字通り『全て』を買う事が出来るといった形になっております」


「拝金主義国家とはまた……悪くないとは思うけど、あんまり美しくないね」


「大変機能的で分かり易い価値観だと思いますが、個々の性能に左右されず持ちえる資金が全てを決めるというのは」


「確かに分かり易い、要するに金持ちが正義ってことだからね。 だがその社会は恐らく弱者は這い上がれないだろうし、強者の独占が永遠に続くだろう」


 それは私の望む世界ではない、と付け加え永村は話を打ち切る。


「話を戻そう、それで二週間前に田崎君が紆余曲折あって沖縄の統治権を買収と」


「はい、その後は沖縄の統治は是非自分にと提案してきた商人にそのまま統治を任せ、東京、札幌の統治者二名との会談や調整等を行いました」


「それで……私達は今回その3名と改めて会談、並びに日本全土の掌握を記念してのパーティーを船上で行う為にここに来たと」


 ペスは頷き、ウィンドウに現在の時刻を表示する。

 時刻は12時半を迎えており、船上パーティーが行われる時間まであと少しとなっていた。

 永村は時間を見ると立ち上がり、体を伸ばす。


「んじゃ、そろそろ行こうか。 あの二人の戦いを止めてから向かえば10分前には着くでしょ」


「はい、現在両者の戦闘は山坂様が優勢のようで──訂正します、山坂様の反応、消失しました」


「また油断したかぁ彼は……」


 呆れた表情を永村は浮かべると、ペスが衛星で二人を監視していた場所へと歩き始めるのだった。

 

「しかし困ったなぁ、ああいう戦いで負けると山坂君ヘソ曲げるからなー……こりゃ会談は私等二人でやるしかないか」


「ですから先ほど進言したのですが……」


「たまには機械の言う事も信用するかぁ」


 その後、永村は田崎と合流し結局二人で船上パーティーに参加する事になるのだった。



明日面接なので初投稿です。

す、すまねぇ皆…FGOの最終章やってたりヴィーナスブラッドシリーズの最新作をやっていたら微妙な短さになっちまった…

だがオラはあやまらねえ!


次はいつもどおりの長さなので許してクレメンス


沖縄の統治者、マン=モン  青黒


青黒:クリーチャー一体を対象とする、そのクリーチャーに賄賂カウンターを置き、相手はカードを一枚引く。

賄賂カウンターが乗ったクリーチャーは攻撃したりブロックしたり、能力を起動する事が出来ない。


2/3


「銭や銭やー! ウチがオギナワで一番偉いんやー!」

──沖縄の統治者、マン=モン

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